小児科 育児相談 乳幼児検診 山形 山辺こどもクリニック 小児科医の話題

小児科医の話題67 11.12.17

 年末になり嘔吐と軟便をきたすノロウイルス感染症が増加してきた。ご家族が飲食物を扱う会社に勤めておられると休むように指示されるという。しかも感染原因が何かを調べてきて診断書を提出するようにと指示されているという。
感染性胃腸炎の原因は細菌性であったりウイルス性であったり様々である。何を調べればよいの?便の細菌を培養して結果が届くのは5〜6日後。ウイルスの迅速診断で診断可能なのはロタウイルス・アデノウイルス・ノロウイルスの3種類である。
しかも保険請求できるのはロタとアデノウイルスだけである。勤務先で必要とされているのはノロウイルスだと想像できるが、そのコストを誰が負担するんだろう。医療機関だろうか?それとも患者さんだろうか?それとも事業所なんだろうか。患者さんに請求すれば混合診療とみなされ医療行為すべてが自費診療となり個人で全額医療費を支払わなければならない。事業所は診断書を要求しているのにすべて医療費から診断書料金まで個人に支払わせようとしている。一体どれほどの金額がかかるのか?乳幼児であれば恐らく1万円を超える支出となる。この現実を解かって指示を出しているのなら、事業所にある検査施設で検査を行なうのが早道である。
ウイルス性胃腸炎を起こす原因は多彩で診断は遺伝子学的診断法にならざるを得ない。1検体のコストは約3万円かかる。現在当院で認められている腸管ウイルスはアデノウイルス、パレコーウイルス、ノロウイルスの3種類確認されている。その他腸管親和性ウイルスとしてエコーウイルス、コクサッキーウイルスBなどもみられていた。これを個別に診断する意義はほとんどない。

さて迅速診断キットの問題点は下痢が確実に始まっていなければ検査をしても偽陰性となる。特にノロウイルス感染症は嘔吐が主体で診察時はほとんどが正常な便かやや柔らかい程度の便であることが多い。従ってその感度は低く検査を行なって陰性であってもノロウイルス感染症であることはよく経験することである。そのことも念頭においておく必要がある。
病原診断書の他に完治証明書を求める企業さえある。完治とは何を持って完治とするのか?一般にノロウイルスは1週間程度でウイルスの排泄は落ちつくとされている。しかし乳幼児では(特に乳児)ウイルスの排泄が長くなる傾向があることが報告されている。この点から考えてみても事業所の完治証明書の発行は困難である。常識的に下痢が落ち着き正常な生活が営めるのであれば職場復帰を認めるべきである。

感染性胃腸炎の病原体診断はコスト、期間、診断方法など非常に困難なことが多く証明書の発行などは無理であることを示した。

小児科医の話題66 11.8.23

    【休日・夜間救急診療が変わります】

     現在夜間救急は緑町の急病診療所、休日診療は山形市医師会館、休日歯科診療所と分かれて診療しておりました。しかし今年9月1日よりすべて旧山形市医師会館の裏側(山形市民会館隣)に新しい山形市医師会館が建設されその1階に併設され診療開始となります。現在まで3部門が異なっていたため不便でしたが今後解消されると思います。また診療機材も新しく血液検査・画像診断機材も備えられ、ある程度の診断も行えるようになります。

    診察時間は現在と同じです(夜間救急 17:30〜22:00,休日救急 9:00〜17:00)。なお電話相談は子どもばかりではなく成人の相談にものれる体制作りを行っています。#8000は今までどおりです。

    天童市・東村山郡医師会、寒河江・西村山郡医師会の在宅休日診療体制は今までのとおりです。休日には新聞に掲載されます。また各自治体のホームページに掲載されていますので参考にしてください。

小児科医の話題65 11.8.8

    【2011年度からのインフルエンザワクチン接種方法変更について】

     2009年度に流行した新型インフルエンザAH1pdm2009は季節型インフルエンザとして扱われます。また接種量が1歳以上0.25ml、3歳以上0.5mlと変更になりました。基本的接種回数は12歳以下今までどおり2回接種です。しかしアメリカでは前年度に接種している場合は1回接種となっています。このことから当院でもこれに準じて接種していくことにいたしました。

    接種曜日は毎週土曜日午後から1〜1.5時間に限って接種する予定です。

    現在小児科医療機関では三種混合ワクチン・ヒブワクチン・7価肺炎球菌ワクチン・麻疹風疹混合ワクチン・日本脳炎ワクチン・HPVワクチンと多種類、複数回接種が多くなり誤接種・事故を防ぐためにもインフルエンザワクチンを特定日に接種せざるをえません。ご協力お願いいたします。

小児科医の話題64 11.7.5

    【カゼと発熱】

     カゼの大部分はウイルス性疾患で抗菌薬を投与しても全く効果が期待できないのは医師でなくともご存知の方が多いと思います。しかし高熱がでて少し長くなると心配なのでしょうか?昨日はカゼですと診断されたお子さんに翌日は抗菌薬を処方なさる小児科医もまだ多いようです。なぜ待たないのか。私にはわからないのですが、再来されると何か処方を別にしないといけない感覚に陥るのでしょうか?むしろ高熱を出して心配で再来した患者さんには薬ではなく白血球とCRPなどの検査を行なうほうが患者さんにとっても良いと考えます。

     一般にウイルス性疾患は行き着くところまで行かないと治りません。抗菌薬を使用しても無駄であるばかりか難治性中耳炎の合併を起こすこともあります。色々なウイルスがありますがそれぞれのウイルスにはそれぞれの特徴があります。一般にウイルス数が減少してくる頃になっても解熱しない時に合併症を考えます。抗体量は年齢によって異なりますので有熱期間は異なりますが一般には3〜5日前後と考えてよいと思います。それ以上の有熱期間、あるいは咳が長く続いた時に咳の悪化と共に高熱が夜になるとでてくる、一度解熱したのに咳が悪化して高熱が再度出現してくる時に肺炎などの合併を考え、検査を行なってから抗菌薬を確実に投与します。そのため全身状況の把握が最も大切です。

     現在の細菌は耐性化が進み、抗菌薬の量を増やして治療しているのが現状です。小児科医、耳鼻科医がもう少し自問しながら抗菌薬治療を行なうべきだと考えています。薬ではなく日常生活での注意点をお話しすることが一番大切な治療です。

     治ればよしとする考えから合併症を予防すること。それが子育てをするのに一番有効な手立てであり、それを提供するのが小児科医の仕事なのだろうと思っています。

    【通園施設での内科健診】
    さてようやく山辺町内の幼稚園・保育所の内科健診が終了しました。数年前より各通園施設に臨床心理士が赴き、発達・行動に違和感のあるお子さんに対して施設での援助方法を指導していただいております。 昨年度の内科健診時に問題ありとしたお子さん方でも今年は問題が軽減しているとの通園施設側からの報告が多くあげられてきています。このようにチョットした対応で改善していくのは多くの場合生活環境なのかもしれません。心配な時には各通園施設の先生と相談して園での生活状況を把握してみてください。

     山辺町での取り組みが少しでもご家族やお子さんの為にメリットのあるようにしていきたいと思います。現在の行政側は理解してくれて早急に善処すべきことには予算化してくれています。その予算化されたものを執行していく人々(学校医、園医、臨床心理士など)がどの様にして子ども達を見守っていくのかが一番大切なことだと思います。

小児科医の話題63 11.5.23

    気温上昇と熱中症:
    昼間の気温が25度を超える日も多くなりました。車内閉じ込め事故やクラブ・スポ少活動での熱中症が増えることも予想されます。休む時には木陰など涼しいところで休み、水分の補給などにも注意しましょう。また乳幼児の乳母車は道路からの輻射熱によって温度が上昇しますので注意してください。

    O-157の集団感染について:
    山形市内の店から購入した団子や柏餅でのO-157集団感染が山辺町保育所で発生しました。また個人的に購入した方も発症しているようです。5月2日に山辺保育所でおやつとして子ども達が食べた柏餅による集団感染の発症は5月5日以降に多く発症しています。症状は水様性下痢と腹痛が特徴で血便が見られました。しかし発熱を伴う患者さんはそれ程多くありませんでした。現在終息に向かっておりますが家族内での2次感染者もみられており注視する必要があります。現在山辺町内での対策として通園・通学施設での下痢による欠席者の把握(2次・3次感染者のモニタリング)と時間ごとのトイレの消毒など山辺町教育委員会を通じて対策を講じております。
    保護者の方々より通知が遅いという苦情があるようですが、診断が確定していない時期の連絡は当然できません。また連休中の発生で、しかも団子が原因とされた報道(5月8日)もあり結局5月9日に保健所に食中毒発生を届け出いたしました。当院の便細菌検査(5月6日提出)でも5月9日時点でわかったことは食中毒の原因として多いサルモネラ、キャンピロバクター、ブドウ球菌は検出無しという情報しかなく腸管出血性胃腸炎の診断はできておりませんでした。病原性大腸菌には数多くのタイプがありベロ毒素を出すタイプを確定するまでにはある程度時間が必要です。保育所職員はそのような状況下でもできうるだけの対策を講じてきました。その点をご理解いただきたいと思います。

    任意接種ワクチン:
    山辺町から公的補助を受けられる任意接種ワクチンが4月1日からヒブワクチン、7価肺炎球菌ワクチンが追加されました。できるだけ接種を行なってください。対象は5歳未満児までのようです。詳細は山辺町保健福祉センター【きらり】まで。

    原発事故:
    福島原発事故では核燃料棒のメルトダウンが発生していることは周知の事実だと思います。山形県内では放射線量も少なくほぼ安全だと考えられています。まずは安心して通常の生活をすることです。

小児科医の話題62 11.2.18

     当医院では以前から山形県衛生研究所と小児呼吸器感染症について共同研究を行ってまいりました。おもな最近の研究内容は乳幼児期に肺炎などを起こすヒトメタニューモウィルス(hMPV)であり、また肺炎マイコプラズマの臨床診断法です。その他2009年に山形市近郊で大きな流行を示した、2007年に新しく報告されたSaffold cardiovirus(SAFV-2)の臨床症状や2010年夏に流行したアレルギー気道疾患の悪化を起こすEnterovirus 68などの臨床症状解析があげられます。
    これ等はすべて患者さんのご協力の賜物で、気道感染症について学会、医学雑誌に発表してまいりました(山形県衛生研究所 微生物部HP)。これからも皆様方の協力をお願いいたします。できるだけ新しい知識を学び取りながら診療を行ってまいりたいと考えています。
    今年の日本小児科学会でSAFV-2の話、日本外来小児科学会では肺炎マイコプラズマ感染症の臨床診断、日本小児感染症学会ではEnterovirus 68の臨床症状とアレルギー性気道疾患について報告したいと準備しているところです。学会出張で皆様にご迷惑をおかけすることになりますが、これも皆様方のご協力を無駄にしないこと。多くの小児科医に気道感染症について理解していただき、少しでも良い治療を提供していただけるようにとの願いをこめています。

     昨年度からヒブワクチン、7価肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、23価高齢者肺炎球菌ワクチンについてワクチンの広報活動を行ってまいりましたが、山辺町でも接種補助金について町議会に提案されそうです。他の自治体ではほぼ決定している自治体が多いようです。しかし補助が受けられるようになるまで待ちたいという思いもあるかもしれませんが、ヒブワクチンだけは待たないで接種してください。細菌性髄膜炎の多くは保育所など通園施設に通い始めてから半年以内に発症することが多いとされています。是非ご検討ください。

     少子化の影響で保育施設などを統合する動きが出てくるのはやむを得ないことだと考えています。しかしながら感染症が一気に拡大する原因の一つともなります。今年起きたA町の水痘の大流行はその一例だと思います。しかし今後数年は大きな流行を起こすことは無いと考えられます。ではオタフクカゼはどうでしょうか?山辺町内の通園施設での接種率は30~40%です。これでは流行を押さえ込むことは不可能です。確かにかかってしまえば医療費はただで、強い免疫を獲得できるかもしれません。しかし罹患した時には約10日近く登園停止となり、他の兄弟に罹患するのは発症後約16日後です。ようやく子ども達が登園したと思ったらすぐに他の兄弟が発症いたします。また通園施設でも感染させられるお子さんも多くでてきます。できるだけワクチンで防ぐことのできる感染症(VPD)はワクチンで防ぎたいものです。

小児科医の話題61 11.1.4

     あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

     カゼ情報にもアップしましたが、岡崎市(愛知県)周辺で麻疹の流行が起きているようです。年末年始の移動で拡散しないかどうか注意が必要です。ひとたび拡散が始まると大きな流行を起こすためにワクチン接種を前倒しで接種しないといけない場合が出てきます。大館市(秋田県北部)での流行時には2回接種予定者で接種していないお子さんの登校・登園を禁止してようやく収まったという話がよく知られた事実です。小さなお子さんの場合では1歳未満でも1度接種して、1歳過ぎて再接種も考慮に入れておく必要があります。とにかくワクチンでコントロールできる疾患はワクチンを接種することです。

     インフルエンザは山辺町でもかなり流行しているようです。山形市関連のFluAは昨年流行したAH1pdmのようです。感染しやすく肺で増殖しやすいようですので息苦しさ、喘鳴、体動時の息切れなど呼吸困難の症状が現れている時は精査が必要です。タミフル耐性は今のところ認められていませんが、もし耐性が流行してくるようならばリレンザなどの吸入薬を使用することになります。吸入のできない方については薬剤の再検討が必要です。鑑別には2峰性の発熱が多くなり、下気道炎が増加する時に遺伝子学的検索を行います。アレルギー性気道疾患を持っている方は本当に注意してください。できればステロイドの吸入は行っていた方がよさそうです。
    ワクチン接種については流行前に寒河江地区でAH3(香港型)が流行しましたので、これに対する対策も必要です。ワクチンはインフルエンザに罹患したとしても接種しておいた方がよいでしょう。

     天童市内、山形市内での子宮頸がんワクチン・肺炎球菌ワクチン・インフルエンザ桿菌bワクチンが公費で行われます。特に乳幼児ではできるだけ早期にプレベナーやアクトヒブは接種しておいてください。侵襲性細菌感染は通園施設に入るとまもなく増加する傾向がありますので入園前に必ず接種しておくことが原則です。ただ同じ日に2箇所〜3箇所とワクチンを接種することになりますが、その点はご理解していただくしかありません。

     迅速診断の精度はいかにウイルス量を多く採取できるかがポイントです。鈴江先生(徳島)は家族に多く感染者がいて咳が出て微熱のある場合には陰性でも抗インフルエンザ薬を投与しておいて翌日再検査でもよいと述べています。この方針はおそらく正しいと思われます。ただB型の場合はタミフルの有効性が確認されていませんので使用いたしません。
    問題は迅速診断を行っていずれも陰性の場合です。そのときには必要があればRSVや肺炎マイコプラズマ感染を疑って治療を行なうこともあります。

小児科医の話題60 10.12.20

    【ワクチンについて】
    1月より国1/2,県1/4,自治体1/4の補助でサーバリックス(子宮頸がんワクチン)・アクトヒブ(Hibワクチン)・プレベナー(7価肺炎球菌ワクチン)の接種が開始される自治体が多くなりました。自治体の広報などは必ず眼を通すようにしてください。任意接種ですので個人への葉書などでの連絡はしないと思われます。広報を読みましょう。

    【肺炎マイコプラズマの流行について】
    テレビで肺炎マイコプラズマ感染症が増加しているニュースが流れていますが、村山地区でも天童市南東部地区を中心に10月下旬くらいから大きな流行を示しています。最近では寒河江市西部地区の小学校、山形市内の公的高校での流行が確認されています。この流行している肺炎マイコプラズマは通常有効であるはずのマクロライド系抗菌薬に反応しにくいマクロライド耐性肺炎マイコプラズマであることが、臨床症状や培養するのに通常より時間がかかるという事柄から推定されています。村山地区の小児科の検討会でも議論され、治療方針などについてもある程度共有されていますので心配なさらないでください。

    【感染症の考え方】
    咳の出るカゼと咳の出ないカゼに分けて考えると病変が何処にあるかが推定しやすくなります。注意を要するのは咳が出ないカゼでこの中に細菌性髄膜炎、侵襲性菌血症など重篤な細菌感染症の多くが含まれます。症状の出方や元気の有無など一般的な子どもの状態把握が一番大切です。
    その他通園・通学施設・家族内での情報も非常に大切です。周囲の状況にも注意してください。
    抗菌薬をどの様に使用するかはかかりつけ医が考えることかもしれません。しかし細菌感染の可能性を考えるのは、やはり親の観察と臨床経過です。祖父母に頼んで受診するお子さんはできるだけお母さんの心配事や症状経過をメモでもよろしいので書いて預けてください。
    インフルエンザばかりが流行するのではないことを知っておいてください。インフルエンザ流行期には他の感染症が同時に流行することもまれではありません。特に肺炎マイコプラズマなどはその代表例です。

    【インフルエンザ迅速診断について】
    インフルエンザ迅速診断の感度はキット種類・検体採取日時・方法・ウイルスの種類・判定者の心理的因子などによって異なります。鼻咽頭吸引液は拭い液の数倍から10倍近い遺伝子量を採取しますので、診断可能境界域から診断域までアップさせることになります(偽陰性の減少)。正確な診断の為に皆様のご協力をお願いいたします。

    【抗体保有率調査】
    今年の8〜10月に流行したウイルスの抗体保有率を調査します。点滴や採血を行なう方に12月一杯の間、協力を求めています。よろしくお願いいたします

     

小児科医の話題59 10.12.07

     任意接種ワクチンの子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)、b型インフルエンザ菌ワクチン(アクトヒブ)、7価肺炎球菌ワクチン(プレべナー)の予算化が各地で議論されています。天童市・山形市でも来年度から予算計上して接種が行なわれる予定です。接種料金の半額が国、1/4ずつが山形県・各自治体が負担して接種予定です。
    これ等のワクチンは任意接種ワクチンであることから自治体では広報は行いますが、勧奨(できるだけ接種しなさい)は行なわないことになります。また接種対象期間から外れた場合には接種希望がないものとして扱われますので注意が必要です。
    接種について情報の説明不足であるというクレームが山辺町内の医療機関から出ておりますが、任意接種である限りそれ以上のことは自治体ではできかねるというのが実態で接種を行なう医療機関が家族への説明を行うことが大切なのです。

    現在今年の夏から秋にかけて流行したエンテロウイルス68の症状解析を行っています。点滴をするときに血液の一部をいただくようお願いする場合があると思います。その時はご協力いただければありがたいと思います。

    【風邪について】
    冬になっても夏カゼ?という診断が下されるとご家族はドキッとなさるでしょうね。夏カゼは一般に夏に流行するウイルス性疾患全体を意味しますが、冬に流行しないものを意味しているものではありません。実際今年は11月に入ってから咽頭結膜熱(所謂プール熱)が朝日保育所や山形市内の通園施設で流行し、手足口病を起こすコクサッキーAウイルスが山辺町内で流行しています。その他寒河江市や山辺町内でも無菌性髄膜炎を引き起こすこともあるエコーウイルスが検出されています。このように夏カゼをおこすウイルスは秋から冬にかけて流行することもしばしばみられます。このことについてはあらかじめ市っておいてください。
    カゼ情報には咳の出るカゼと出ないカゼの2種類に分けて病原体の情報を提示しておきますが、近隣の小児科医療機関にも配布しているためです。病原体について共通の情報をもつことは各小児科医療機関にとっても診療上大切な情報となります。
    皆様からいただいた検体をそのままにせずウイルスごとにデータをまとめて使用させていただいております。それはウイルス学(カゼ学)としてこれからの小児科医にも伝えていかねばならない仕事だと思っているからです。学会での発表、雑誌への投稿、小児感染症のテキストへの分担執筆などで皆様のご協力を小児医療に還元させていただいております。本当にありがとうございます。

小児科医の話題58 10.11.05

    乳幼児突然死症候群( Sudden Infant Death Syndrome)対策強化月間
    11月は小児科医が小さなお子さんをお持ちのご家族にSIDS発生の予防を啓発を重点的に行う月間です。

    SIDSってな〜に?

     【定義】 それまでの健康状態や既往歴から死亡が予測できず、死亡状況や解剖検査によっても原因が同定されない。原則として1歳未満児に突然の死をもたらした症候群。

    【どのくらいあるの?】 日本での発症頻度は出生4000人に1人と推定され、生後2ヶ月から6ヶ月に多い。従って山形県では年間2〜3人の突然死が起こりえます。

    【Riskは?】 うつ伏せ寝、人工栄養保育、保護者等の習慣的喫煙がSIDS発生のリスクを高めるとされています。しかし最近ウイルス感染や診断されていなかった代謝性疾患などが原因とする論文も出てきています。この時期に多い鼻閉、粘性の強い鼻汁が多くなるRSV感染やパラインフルエンザ2型(高サイトカイン)が関連した突然死の報告があります。

    【どうすればいいの?】 どうしようもないというのが現状です。うつ伏せ寝を避ける、小さいお子さんを一人にしない、風邪特に鼻閉の強いときには鼻汁を吸い上げ除去し、呼吸が楽になるようにしてあげることが予防となるかもしれません。

    【おかしいと気付いたら?】 お子さんを裸にして呼吸をしているかどうかを確認してください。呼吸の無い場合には大きな声を出して他人の協力を求めながら心臓マッサージを行ってください。小さなお子さんの場合手で心臓マッサージを行うことで、胸郭が上下してある程度の空気を肺に送ることができます。そのため先ず心臓マッサージを行いましょう。 

    保育所に預けていて発熱した、咳がひどいなど保育師からお話があるのはこの病気がどの施設内でも起こりうることを知っているからです。
    ご家族に知っていただきたいのは口呼吸ができない小さなお子さんでは鼻汁などによって起こる鼻閉でも呼吸障害が起こりうることです。

小児科医の話題57 10.10.22

    ワクチンの話題
    A)日本脳炎ワクチン
    日本脳炎ワクチンの接種年齢が徐々に拡大(接種勧奨年齢者)されてきています。自治体の広報を必ずお読みください。接種回数について各医療機関で確認してください。その時必ず母子手帳をご持参くださるようお願いいたします。

    B)山辺町のワクチン接種補助事業について
    山辺町では今年もインフルエンザワクチンの接種補助が小学生と中学生は受けられます。補助についてのお問い合わせについては山辺町保健福祉センター「きらりやまのべ」に・・。また高齢者23価肺炎球菌ワクチン接種補助(半額補助4000円)についても山辺町内各医療機関あるいは「きらりやまのべ」にお問い合わせください。子宮頸がんワクチンについては中学1年生から3年生までの女子に全額補助で接種可能になります。これについても山辺町保健センター「きらりやまのべ」にお問い合わせください。

    C)国による新しいワクチン接種補助事業について
    国によるHib、7価肺炎球菌、子宮頸がんワクチンの補助事業が、今回の国会に上程されることになっており、今年度中に開始される予定ですがまた廃案ということもありえます。国の半額補助と自治体側の補助で全額無料化される予定です。これら3種類のワクチンについては国会→県議会→各自治体議会で承認されてからの接種補助となりますので、接種開始時期が相当遅れることが予想されます。そのため小さいお子さんの場合には補助が決定してから接種することなく各個人でお子さんに接種していただけるようご高配ください。

     因みに山形県内のHibと肺炎球菌による細菌性髄膜炎の発生数は1月から8月までにそれぞれ2名と3名が報告されています。

     現在医師会ではインフルエンザワクチン補助ではなく、通園施設に通う前に水痘ワクチンあるいはオタフクワクチンについて補助事業が行われるよう自治体側に申し入れています。水痘の潜伏期は14日で約1週間の通園・登校停止、オタフクカゼは潜伏期が約16日で約11日間の通園・登校停止です。病児・病後児保育も大切ですが同じ疾患のお子さんだけを預かることは不可能であり膨大なコストがかかります。むしろワクチンで防ぐことが可能な感染症をコントロールすることでコストベネフィットが得られることを知ってください。「1日の仕事で得られる賃金×休む日数 >> ワクチン接種費用」です。

     また自分のお子さんが罹患することを防ぐことばかりでなく、他のお子さんに感染させない努力もまた通園・通学施設に預ける時のマナーです。

小児科医の話題56 10.10.01

     ようやく秋らしくなりました。猛暑のお陰で稲刈りも今年はやや遅くなりました。これからラ・フランスやピオーネなど果物の美味しい時期がやってきます。

    インフルエンザワクチンについて
    インフルエンザワクチンは山辺町では成人・小児1回目3000円、小児2回目2500円の接種料金となります。65歳以上の方はこれまでと同じですが、地方税無料世帯の方は保健センターのほうで手続きを行って接種券の交付を受けてから接種となります。後日交付券の対象と判明した場合には、接種料金の領収書と接種記録を持参すれば返金されると思います。
    当医院の接種料金は山辺町の接種料金と同じようになります。ワクチンは昨年度流行したインフルエンザAH1とAH3(香港),B型の3種類の混合ワクチンです。現在予約を受け付けています。接種時期は10月最後の週から開始します。接種時間は月曜日〜金曜日は17:30〜18:30、土曜日は12:30〜14:15くらいを考えています。

    ある町の任意接種補助金の回答書
    我々小児科医はHibワクチン、肺炎球菌ワクチンに対する補助あるいは定期接種化を呼びかけてきました。しかしある町の回答書では国が有効性を認めていないHib、肺炎球菌ワクチンは任意接種であることから補助はできないとの回答でした。しかし開発されてまだ数年しか経過していない子宮頸がんワクチンについては補助を出す方向で動いています。どちらが有効性が確実なのかは明らかに小児用Hib.肺炎球菌ワクチンです。子宮頸がんワクチンが開発されて数年しか経過していない時点で有効であるというデータは何処から来たんでしょう。全く不思議です。米沢市の○×○の代議士が国の予算について発表されていない時点で予算を獲得したと医師会の勉強会で報告していた。なぜ?不思議な世の中です。発表されてもいない情報が独り歩きすること。ワクチンを全く知らないとしか言いようのない、無知をさらけ出している代議士が国の医療系政策を要望している。子宮頸がんワクチンよりも癌対策であればB型肝炎ワクチンが先だろうと思います。日本のワクチン行政は最低レベルとしかいえないであろう。

    交通事故予防に
    秋の夜は【つるべ】落とし。今のお母さん方やお子さんに【つるべ】が理解できる人は少なくなってきたかもしれません。井戸から水をくみ上げる時に用いるものです。あっという間に太陽が沈み暗くなることを意味しています。これから紅葉などの行楽シーズンに入ります。自転車や車の早めの点灯を行なうようにしましょう。またチャイルドシートの装着率が悪いようです。冬になってスリップ自己なども多くなりますのでキチンとチャイルドシートの装着を行ってください。

    救急車の適正使用を
    山形地区救急医療協議会での話題として、救急車の適正使用についての意見が述べられていました。確かにそうです。家族の車で来院すべき方が多く見られることも事実です。しかし高齢者や寝たきりの方の搬送に家族の車で運べる方はどのくらいおられるのでしょうか?救急搬送の増加は明らかに高齢者の増加によるものです。時間内受診を進めていく上でも必要なことですが、一人暮らしの高齢者対策特に【医療ケアの必要な方に多くの人手を】が先であるような気がしてなりません。民間救急車の出番かもしれません。

小児科医の話題55 10.09.17

     ようやく秋めいてきました。寒河江・谷地のお祭りなども始まります。稲の穂も頭を垂れて刈られるのを待っています。秋の味覚であるブドウや梨、ラ・フランスもこれからです。

    ワクチン情報
    さてインフルエンザワクチンの概要が決まったようです。自治体の基本接種料金(山辺町、天童市)1回目3000円、2回目2500円。山形市3200円,2300円のようです。できるだけ地域内医療機関で接種をとのことですが、やはりかかりつけ医で接種を行なうようにしたほうがよいと思います。接種料金は国からの指導で同金額での接種を行なうこととなっていますので自治体での接種料金に準じます。申し込みを開始いたしております。本格的接種は11月よりとなりますが、場合によっては10月末くらいより行いたいと考えています。
    任意接種で行なわれるHibワクチンは11月より需要に応じて配給できるようになります。2歳までのお子さんはできるだけ接種を行なってください。これも申し込みが必要です。

    母乳育児のお母さん方にお願い
    VitK欠乏症の予防のため小児科学会より週1回VitKの投与勧告がなされておりますが、現在のところ1回投与用の薬剤がないため処方できません。その為納豆がVitKの代替得食品となりますので、時々食べていただきたいと思います。また最近乳児の貧血が多くなっているような印象があります。バランスのよい食事を取っていただきたいと思います。さらに紫外線が弱くなる秋から冬にかけて日光浴(縁側でもOK)を心がけましょう。クル病の発生を予防します。

    事故の予防
    先日浴槽での溺水事故がありました。何事もなく終わりましたが、浴室の戸をあけておかないように、浴槽の蓋をしておくこと、浴槽の水を抜くことなどで事故が減少します。

    お母さんをお前呼ばわりする子が増えていませんか?
    ある小児科医のMLでこのようなことが書かれていました。自分のことを認めてほしいのですが、なかなか認めていただけないお子さんが多いようです。学校では大人しく装いますが、自宅では?ご家族内であっても嬉しかったら「ありがとう」と感謝する言葉をお子さん達にかけてください。人間は誰でも自分の存在を認めてほしいものです。よろしくお願いいたします。

    変なかぜの流行
    今年の初夏に大阪や山口県で流行したライノウイルスに症状が類似したEnt.86が現在山辺町で流行しているようです。8月23日頃から中山町の幼稚園児、山辺保育所の園児で確認されています。症状は通常のカゼですが気管支炎を併発することがあります。また喘息発作を起こしていなかったお子さんが喘息様の喘鳴と呼吸苦を訴えて入院したケースもあったようです。

小児科医の話題54 10.09.03

     残暑厳しく寝苦しい日が続きます。博多で開かれた日本外来小児科学会に出かけてきました。山形県内からも数名の先生方学ばれていたようです。この学会は通常の学会と異なり、自分たちの経験などを話しながら色々な考え方を学ぶこと(ワークショップ)、薬剤師・看護師・保育師・臨床心理士・養護教諭・医療事務スタッフなど多くの人々が医師と対等に議論することで医師の学びの原点となります。また小児科医のアドボカシー運動(ご家族に小児科医としての思いを伝える運動)を学び実践する場としての役割を持った学会です。
    今回のWSについては食事アレルギーについて学びましたが、その早期診断は非常に困難な場合も多いことを理解してきました。その他当院で経験した患者さんの臨床経過などについても報告して来ました。また発達障害児の理解と地域の中で育てていくことの大切さを山口県の木谷先生や金原先生に教えていただきました。実践すること難しさもありますが、子どもの年齢とご家族の理解度に応じてアドバイスできるよう心がけてまいりたいと思います。

     インフルエンザワクチンについてですが、法令改正が行われてかなり昨年と異なっています。従って法令改正できていない現時点での広報活動は一時停止させていただきます。山形市内、天童市東村山郡、寒河江西村山郡の動向と接種条件の改正点がはっきりした時点で広報活動を再開いたします。

     9月18日(土)午後から9月20日(月)まで釧路市内で行われる、リーフレット委員会に出てパンフレットの作成がどの様にしてできるのかを学んでくる予定です。皆さんにご迷惑をおかけいたしますがご理解いただきたいと思います。

     日本小児科学会から新生児・乳児Vit.K欠乏症予防の新しい指針が出てきました。母乳育児を行っているお母さんには納豆を食べていただくよう指摘されているようです。その他個別用に分割されたK2シロップが発売後はK2シロップを毎週1回投与するようになるようです。

     時間外での薬局処方箋が発行しづらくなっています。できるだけ時間内診察にご協力ください。

     台風のシーズンを控え喘息の患者さんは喘息の治療としてフルタイドを使用している方はできるだけフルタイド吸入を再開しておいてください。

小児科医の話題53 10.08.05

     暑い。暑い。とにかく暑いですね。現在夏カゼ(ヘルパンギーナ、手足口病など)が流行していますが、幼稚園など通園施設の先生達はどうしても夏カゼという診断が気に入らないご様子です。ヘルパンギーナのほとんどはコクサッキーA群の感染症で口腔内(特に軟口蓋)に小さな水疱を形成する発熱性疾患です。手足口病はコクサッキーA16とエンテロ71で起きる手と足・膝、口腔内に小さな水疱を形成します。ヘルパンギーナに手と足に小さな水疱を起こしてきたものが手足口病と考えてもかまわないのです。ただエンテロ71による手足口病の一部(東南アジアで流行するタイプ)では脳症を起こすこともあり注意が必要です。
    暑い日にはよく花火をすると思いますが、注意点はヤケドと煙を吸わないことです。喘息などの患者さんが風下で煙を吸うと発作が起こることがあります。子供のやけどは花火の火がかかってしまうときばかりでなく、小さい子ほど手のひらで握り締めてヤケドをすることが多いのです。また火を扱うことでの注意点を子ども達に伝えるチャンスですので、火事の予防などについても教えてくださるようお願いいたします。

    【ワクチンの話】
    天童市ではHibワクチンの補助制度があります。今年の10月よりHibワクチンは登録制でなくなり希望すれば接種可能となりますので0~2歳までで未接種のお子さんはできるだけ接種を行ないましょう。県内では5月にHibによる髄膜炎が2例発生しています。最近肺炎球菌よりもHibによる髄膜炎が増加しています。

     山辺町では9月から高齢者(75歳以上)の23価肺炎球菌ワクチン接種に対して4000円の補助がつきます。高齢者の皆さんはできるだけ接種しましょう。高齢者の死亡原因の4番目が肺炎です。お子さんで肺炎球菌ワクチンの接種を受ける場合には7価ワクチンで、高齢者のワクチンとはことなりますので、小児科医で接種していただくようにしましょう。
    今後ワクチン接種で予防できるもの(HIb,肺炎球菌,水痘,オタフクカゼ,子宮頸がん)についてはできるだけ接種してください。

     任意で接種するワクチン料金が高いと考えるのは?です。オタフクでは10日休み、その6日後には兄弟がかかり再度10日お休みです。その間診断のためと登園可能かどうかの問題で2回受診が必要です。働いて得られる賃金と比較してみましょう。
    子ども達が30歳代で子宮頸がんになったとしたらどうでしょうか?先日子宮頸がんを患いながらお子さんを得たお母様がおられました。私達の時はなかったんですね。残念だと・・。

     暑いなかお子さん達の家庭学習にも眼を向けてください。規則正しい生活を遅らせてください。

小児科医の話題52 10.06.25

     梅雨に入りジメジメして蒸し暑い時期となりました。【汗疹】のお子さんが目立ってきたようです。お昼寝して目覚めたあとに入浴、シャワー、水遊びをすると汗疹は予防できます。
    クーラーを使用するときにはフィルター掃除が必要な機種は必ずフィルター掃除を行ってから使用してください(アレルギー性鼻炎による咳などを防ぎます)。喘息のお子さんでは掛け布団ではなくタオルケット・バスタオルなどを寝具として利用しましょう。10日に一度洗濯をしてください。布団を干したあとには必ず掃除機をかけて使用してください。

     現在お子さん方の血液をいただいて、インフルエンザ(季節型・新型)、麻疹、風疹、日本脳炎の抵抗力を調査しております(感染研究所からの依頼採血です)。この採血はワクチン接種をして抵抗力が増加するのか(ワクチンが効果的なのか)? 罹患者と感染感受性者の把握が目的で今後の感染症対策に使用されます。なにとぞご協力くださるようお願いいたします。

     就学児健診での発達障害の検討が重点化されるかもしれません。小児科専門医でもその診断が困難でどの様に対処していこうか迷うことが多い病態ですが、どの様にしたら子ども達がうまく適応して学校生活を送っていけるかを検討していきたい意向のようです。しかし個人の考えでレッテルを貼るようなことも起こりえます。なかなか困難な問題を含んでいます。現在山辺町の保育園と幼稚園では手のかかるお子さんや扱いにくいお子さんについてはWait & See たくさんのお子さんと接触し、色々な経験をするようにして、集団生活になれることを主眼としておりますが、発達障害を疑われるような場合にはどの様にご家族が子どもと接したらよいか心理学を学ばれた先生方に協力していただいていきたいと考えています。そのひとつとして3歳児健診時に再度チェックをお願いしたり心理士の教室に通園していただくこともあります。

     この発達障害は約6%のお子さんに見受けられるとされています。20人いれば必ず1人いることになります。30人学級編成はこのことから考えてみても教育の場面では必要なのです。お子さんが悪いのではなく周囲が理解して接することが大切なのです。先日も発達障害を疑われたお子さんのご家族とお話いたしましたが、診断がつくまで待って対応したいと考えられたようです。しかし大切なのはお子さんを理解して、子どもさんとの接触、人間関係の構築が先であると思うのですが・・・・・。その点を理解していただくことが最初のハードルのようです。

小児科医の話題51 10.04.20

     春休みも終わり新しい生活が始まりました。お子さん達も元気に遊びまわれるような天気も多くなりそうです。
    新1年生も元気に登校・下校していると思いますが、交通ルールを守るようご指導ください。5月の連休もまじかに控え高速道路の利用されるご家族も多いと思いますが、必ずチャイルドシートや後部座席でのシートベルト着用をお願いいたします。6月からは山形⇔仙台の山形道以外は無料化されることになりましたが、逆に後部座席シートベルト着用義務違反の取締りが強化されると考えられます。交通事故を減らす意味においてもご協力お願いいたします。
    ある小学校での天蓋からの落下事故が再び起きてしまいました。校長は以前起きていることさえ知らないと会見していたようですが・・・・。呆れた発言であると思います。実際私が校医をしているときに起きた事件で、私自身学校保健委員会で天蓋などがあればキチンと対応をするように発言した記憶があるからです。また今年もプールが6月より始まると思います。排水溝に関しては必ず教育庁への届け出が必要ですので事故は起きないと思っています。できれば学校保健委員会ではこどもの安全を守るために子ども達の情報を基に保護者側も危険な個所が学校内にあるのかを確認する必要がありそうです。先生方も忙しく、補修予算も限られているために修繕も思うようにはいきません。子ども達に危険を回避する方法を親が教えることも必要な時代であることを知っていただきたい。それにはPTA活動が大切なのです。
    4月17日に北里大学中山先生(ウイルス学・ワクチン学)の新型インフルエンザ講演会を聴講してきました。ウイルスの特徴、重症例について、ワクチンの製造方法(細胞培養法、有精鶏卵培養法、アジュバンドの問題点)など色々なお話が聞けました。その他宮崎看護大学の先生のMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)を防ぐ手洗い方法なども聴講できました。とかく地方にいると聴けない話題を専門家から直接聴ける楽しさを知りました。たまにはこのような機会をいただけると本当にありがたいと思います。
    4月15日の夜、新生児医療創成期に私達のような山形の新生児科医の面倒みてくださった仁志田先生との懇談会がありました。彼はボランティアについて話してくれました。お上や他人に頼る活動ではなく、自分の身を使って何気ないそぶり(やってあげるのではない)で行なう活動だと話してくださいました。そして今後の小児医療での健診業務や障害児対策など色々な場面で小児科医がご家族に寄り添えるかが問題だとあつく話されました。また医の倫理についても坂上正道先生や唄先生の薫陶を受けたこと。小児脳死移植の問題点(提供者側の意思が反映されなくてよいのか?)などもお話していただけました。今回は色々な先生と出会い本当に有意義な期間だったと思います。

小児科医の話題50 10.04.05

     日本小児科学会が4月に岩手県盛岡市で開催されます。その中の演題のいくつかを紹介いたします。

    ベビースリング使用での死亡事故

     現在広く使用されているベビースリングは胎内と類似した環境を作ることによって、感情の安定化が期待できるとされてきました。しかし股関節脱臼誘発の可能性、お子さんの落下事故、母親の転倒事故などが報告されており、その使用には注意喚起がなされていました。今回の学会である救急医療施設から死亡なされたお子さんの報告が行われます。その報告で考察されている死亡原因はスリング内での頭頚部屈曲姿勢による気道閉塞、体部の屈曲姿勢の固定化で胸郭拡張制限、体温調節異常などが推定されると・・・・。
    このスリングの問題は山形県消費生活センターのホームページにも載せられています。ヒヤリとさせられることから今回の事故を予想することは不可能かもしれませんが、やはり小児科での事故のひとつとして知っておく必要があるかもしれません。今後健診時にチャイルドシート着用などとともに指導してまいります。

    発熱恐怖症と救急受診

     この演題は小児科医の上から目線とも見えるかもしれませんが、日頃の診療で小児科医そのものが啓発運動を行っていないかという点で興味のある問題です。

      救急医療機関受診群 予防接種の受診群
      (n=467 ) ( n=323 )
    発熱とは? 37.6℃ 37.5℃
    高熱とは? 38.6℃ 38.5℃
    危険を感じる体温 39.5℃ 39.4℃
    不安・心配の原因は痙攣や死である>>
    対応として厚着をさせる     >>(特に3歳以上で多かった)
    対応の情報源が医師     <<  
    情報源が雑誌・本・TV・看護師   <<

     外来での保護者への対応をどの様に行うかが問題。これはけっして保護者を非難しているのではなく、小児科医の問題として捉えるべきだろうと考えています。

     薬を飲めば治るのではなく、どうして欲しいかを想像して対応する子ども達を育てる力を保護者の皆さんと考えていくべきなのかもしれません。

小児科医の話題49 10.03.17

     卒業式も3月16.18.20日に行なわれるようです。新しい学校や社会に進んでいきますが、是非お子さん達に伝えて欲しいことがあります。困ったことがあれば一人で悩まず、いつでもSOSを出して欲しい。親は子どもの存在を認め、ある程度遠くから見守ってあげているというサインは絶えず出しておいて欲しい。

    一般診療所での小児の急患診療が行えないようになってきています。例えば河北病院での小児救急はほとんどの場合、診察されないかあるいは夜間診療所を受診するように指導されているようです。また処方箋を出しても時間外に処方薬を出してくださる一般調剤薬局も減少し、あっても処方薬がおいていないことも非常に多いのが現実です。その為時間内受診をできるだけ心がけてください。

    新高校生に携帯電話を持たせる時には必ずフィルターをつけてください。成人サイト、交際サイトなどにつながらないようにしてください。また携帯電話のマナーについても教えてください。3月下旬くらいから不眠症・生活の乱れなどが増加してきます。

     携帯サイトに個人情報を載せることはしないこと。プロフ(プロフィール)、ブログなども基本的にはしないほうが安全です。

     新小学1年生になられるお子さんは必ず通学路の確認を行なってください。何気なく歩く通学路には危険な場所もありえます。学校からのお知らせには必ず記載されていますので注意して読むようにしましょう。またランドセルにはお守りをつけてみませんか?子どもを守る意味とお母さん方の子どもへのメッセージをお守りの中に入れておきましょう。何かのおりに子ども達はそれを見つけて読んでくれると思います。

     新中学1年生では色々な小学校から中学校に通うことになります。人間関係も複雑になります。できるだけ親は聞き役に回ってください。とにかく聞いてやることです。結論を出すのは急がないことだと思います。

小児科医の話題48 10.02.25

     小児に接種しておくべきワクチンは三種混合(百日咳・ジフテリア・破傷風)、BCG、ポリオ、麻疹・風疹混合ワクチン、日本脳炎ワクチンは定期接種として国が自治体に依頼して接種を行なっています。
    この他任意接種として個人で接種すべきワクチンとしてオタフクワクチン・水痘ワクチンは以前より発売されて幼稚園入園前に接種しておくよう呼びかけています。最近インフルエンザ桿菌b型ワクチン(Hibワクチン)、小児用肺炎球菌ワクチン(7価肺炎球菌ワクチン)、ヒトパピローマウイルスワクチン(子宮頚癌予防ワクチン)が発売され注目されています。しかしメーカー側が価格統制?行っているのか小児用肺炎球菌ワクチン(発売元 武田製薬)の納入価格がほとんどの医療機関で6800円とされており、不信を買っているようです。子ども達にできるだけ接種できるよう納入価格を下げるよう交渉しておりますが下がらないようです。こうなると接種価格は再診料を基準としても1回10000円以上となります。これでは乳児期の接種は困難であることは明白です。もうじき7価ワクチンではなく13価ワクチンも厚生省の認可を待っている状態ですので、その値段はもっと高価になると考えています。こうしているうちにも細菌性髄膜炎に罹患しているお子さんがおられるのです。先月も村山地区でHibによる細菌性髄膜炎が報告されています。
    国や自治体の補助がなければ接種ができないワクチン(所謂金持ちワクチン?)は、本当に必要なワクチンだけに小児科医は困っている状態です。ある小児科医は武田系列の卸から薬品購入はしないというボイコット運動も起きているようですが、副作用の問題などでリスクの小さいワクチン薬品を使用できなくなる恐れもあり一長一短なようです。

     必要なワクチンは必要なだけ子ども達に接種していくことを前提とするには、やはり国として子ども達の健康をどの様に守っていくかという基本的姿勢が大切なのだと考えます。「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」では色々な活動を通じて情報を提供しています。保護者の皆さんには子ども達に必要なワクチンについて声を出していただきたいと思います。

     確かに子ども手当ては魅力的です。子どもを餌に住居費(新築住宅)購入も夢ではありません。その子ども手当てでワクチンを接種してください。

小児科医の話題48 10.01.12

     あけましておめでとうございます。
    山辺町の新型インフルエンザワクチン中学3年生までと0歳児の保護者で接種希望者への集団接種は1月7日にすべて何事もなく終了いたしました。インフルエンザの蔓延期での接種でしたが、集団接種会場での感染もほとんどありませんでした。
    今回の緊急接種に対して色々なご意見があったことは承知しておりますが、住民の基礎免疫獲得が私達医療機関が望み、町に要望して補助金をつけていただき、さらに短時間で接種可能となる方法を目指しました。
    今回の接種にあたり町の行政職員(町長はじめ保健福祉課、保健福祉センター、会計課、教育委員会)町議会議員さんたちの協調とご好意によってスムーズに行われました。途中NHKでの報道などたくさんのマスコミからの取材、他の自治体からの問い合わせなどがありましたが行政側ですべて対処していただいたおかげで、各医療機関はワクチンなどの問い合わせ電話などから解放され季節型ワクチン接種と一般診療(特にインフルエンザ診療)を行えました。
    また町内医療機関と教育委員会が協力して町内のインフルエンザ感染者の登録を行い、すべての医療機関が同じ情報を基にして流行している学級・学校のお子さん達への診療を行いえたことは今までにない画期的なことだったと思っています。
    山辺こどもクリニックでは約700名のインフルエンザ患者さんを診療いたしましたが、そのうち7名が肺炎・気管支喘息の悪化などで入院治療していただきました。その方たちも無事に治癒しており安心しています。
    今後のパンデミックの時に対応するマニュアルとしてこの記録を残す作業(よかった点、悪かった点、改善が必要な点など)を行い、町の資料として保存する予定です。

     住民の方々には何故税金を使用してまでと思われる方もおられるかもしれません。しかしワクチン接種しか対応策のない現在最大限のことを試みたと考えてください。ワクチン接種を夜間に行なったことは、共稼ぎ世帯の多い所でできるだけ接種を受けさせたいという保護者の希望を取り上げるスタンスがあったからです。これによってワクチン接種を受けるために仕事を休み、あるはずの収入がなくなることに換算すると町全体で約430万円にものぼると試算しています。
    一部通園施設のお子さんの接種時に登園しないようにして接種した時に、あるご家族からクレームがつきましたが、連休ですのでご実家に預けられる方は預けて接種を行なうことが可能であったこと、インフルエンザに罹患したお子さんが接種会場に入場しないよう(二次感染予防)配慮した結果でした。

    各学校での学級閉鎖については山辺町だけは、できるだけ5日間の閉鎖で済むように日程調整したり、またワクチン接種時に閉鎖の解けるクラスからワクチン接種することで二次感染を減らす作業をしてきましたが、保護者の方のご協力でスムーズに接種できたことに感謝いたしております。

     今回の新型インフルエンザワクチン集団接種の陰には、できるだけ安全に接種する仕掛け、思い入れを持って施行してきました。天童東村山郡山辺町担当理事としてできるだけの事をさせていただいたつもりです。

    今回の接種終了宣言をするに当たって、時間外にもかかわらず協力していただいた町行政担当職員方々、接種ハードルをさげて希望者にはできるだけ接種を行ない町の子ども達の安全を確保していただいた町長、町議会議員さんたち、厚生省通達を何度も読み返して集団接種の道を探る作業とアドバイスをしてくださった県職員の皆さんに感謝申し上げます。

    山辺町新型インフルエンザ対策協議会 予防接種担当統括医
    山辺こどもクリニック        板垣 勉

小児科医の話題47 09.10.20

     またまた新型インフルエンザのお話です。かかりつけ医が行う基礎疾患を持つお子様への新型FluAワクチンについては、すでに郵送してありますのでその後の申し込みは受けできませんのでご了解をいただきたいと思っています。

     医療機関の役割は新型FluAの診療を先ず一番先に考えて行うことが大事だと考えています。そのため電話での問い合わせなどには応じませんのでご協力をお願いいたします。
    接種場所は山辺町保健福祉センター【きらり】での夜間接種を火曜日と木曜日に行う予定(臨時的に金曜日も接種する事があります)でいます(pm6:45〜pm8:15受付)。

    1. 基礎疾患特に小児科では気管支喘息があげられます。
    2. 1歳から小学3年生までのお子さん。
    3. 0歳児のご両親  

     などが優先接種の対象となります。接種順番も@→Bというふうに時間的差をつけて接種していくことになります。接種回数については15日に発表される予定です。指示に従って接種を行なってください(保護者と被接種者以外はご遠慮ください)。
    非課税世帯の接種費用は無料となるようですが、その場合住所のある自治体での手続きが必要となることがありますので自治体の広報は必ず目を通しておいてください。山辺町の方は町内接種を行なう場合には補助を行う予定でいますので、他の自治体の方とは接種料金が異なります。
    接種するときには保険証・医療証・母子手帳(お子さんでは必ず)あるいは本人確認を行なうために、成人では免許証などの提示を求められることがありますので接種会場にご持参くさい。

     接種回数は中学生以上1回、中学生未満2回で、料金は基本的に1回目3600円・2回目2550円となります(非課税世帯は無料但し自治体での手続きが必要なこともあります)。

     なおA以下の山辺町内の優先順位対象者は町がとりまとめを行って接種するために、当医院では新型Fluワクチンの受付は行いません。従って山辺町以外の優先接種対象A以降の方は各自、他の接種可能な医療機関で接種を行なってください。

     現在までのFluA感染者のほとんどは県外へ出かけられた方、部活内・スポ少内での感染が非常に多いようです。インフルエンザの罹患者(特に家族内)と接触して2日後に咳が出た場合にはFluAの発症を考えて外出は避けてください。咳が出ると同日に発熱を起こしてくるケースがほとんどです。幼稚園・学校などへの通園・登校はやめてください。

小児科医の話題46 09.10.05

     新型インフルエンザワクチンについて
    ようやく新型インフルエンザワクチン接種の情報が入ってきました。10月19日から医療従事者を対象に接種が始まります。
    その後順次 妊婦・基礎疾患を有する人→1歳以上〜小学3年生→0歳児の両親
    (11月から)          (11月下旬〜12月から)
    全員の希望者に接種するまでは順番が出てきます。

     また接種医が基礎疾患を有する人への接種はかかりつけ医が接種することになりますが、優先接種証明書をかかりつけ医で発行していただいて近くの医師に接種していただくことも可能です。しかしかかりつけ医でない医師が接種することはまずないだろうと考えておいてください。
    接種するには医療機関で予約を取って接種することになりますが、予約の電話あるいは来院をされると通常の診療ができなくなります。そのため山辺町の医療機関ではかかりつけ医が接種が望ましいというお子さんにはかかりつけ医から連絡をする予定になっています。1歳から小学3年生までの希望者については行政が主体となって連絡を行なうと思います。
    山辺町の医療機関では集団接種が望ましいと考えていますので、在宅者あるいは個別に接種を依頼した方以外は山辺町保健福祉センター「きらり」に新型インフルエンザワクチン接種センターを特定日に開設いたしますので、【きらり】での接種になります。現時点では夜間に接種するようになると思います。詳細は町で広報いたしますので必ずお読みください。
    原則2回接種になりますが年齢によっては1回となる場合があるかもしれません。これについては厚生省の通知によって異なります。海外からの情報では鶏卵培養法で作成したワクチンでも9歳以上では1回接種法で大丈夫だというデータが出てきています。しかい基礎疾患のある方は基本的には2回接種が原則だと考えています。

    接種料金について
    住民税非課税世帯は無料で接種可能です。しかし手続きは必要かもしれません。山辺町では乳幼児に対してインフルエンザワクチン接種補助を現在考慮中です。詳細はこれから決定します。
    1回目接種料金3,600円、2回目接種料金2,550円。

     季節型と新型と一緒に接種可能ですが、医療事故予防のこともあり原則今回のワクチンでは同時接種は行なわない方針でいます。ここ数年のインフルエンザの流行状況はFluAソ連型の流行で、今年の春になってA香港が流行しています。その為5歳以上の方は新型を優先してください。5歳未満の方のA香港型に対する抗体価は、インフルエンザワクチンを接種していない場合ほとんどない可能性もあります。その為両者(新型・季節型)の接種が望ましいことになります。

     基本的には両者の接種。5歳以上は新型を優先する。新型インフルエンザも数年経過すると通常の季節型インフルエンザに置き換わっていきます。そのため数年後のワクチンについては内容成分が異なってくる可能性があります。

     山辺町での新型インフルエンザワクチン接種については必ず町の広報をお読みください。

小児科医の話題45 09.09.29
  1. 新型インフルエンザの迅速診断の精度
  2. 山形県衛生研究所のご協力で8月1日から9月1日(一部陽性例は9月初旬まで)までのインフルエンザ迅速診断を行って、陽性例と陰性例のウィルス培養法による比較を行った結果発熱日を1として1日目6例、2日目10例、3日目3例、計19例の迅速診断陽性者がいましたが、すべて培養法でも確認されました。陰性例27例からは培養法でインフルエンザAは分離できませんでした(陽性一致率100%、陰性一致率100%)。
    リアルタイムRT-PCR法はウィルス遺伝子数を調べて診断を下します。迅速診断は一定以上のウィルス遺伝子数がなければ陽性化しません。必ず検出限界域・境界域・診断域の3区分されています。従ってリアルタイムRT-PCR法と比較すると必ず感度が悪く表現されてきます。ウィルス培養法でも一定のウィルス量が必要で、培養法とリアルタイムRT-PCR法と比較しても培養法の精度は必ず悪く表現されます。これからいえることは今回の新型インフルエンザの診断は季節型インフルエンザと同程度診断が可能です。
    しかし境界域・検出限界域には通常5~10%前後のケースが含まれているといわれ一致率100%としても実質90%前後の診断率と考えた方がよい。

  3. 新型インフルエンザの治療
  4. 日本小児科学会から治療指針がでています。ほとんどの方がタミフル投与という状況と考えています。

  5. 新型インフルエンザワクチン
  6. 医師会からの情報では医療従事者→基礎疾患を有する方・妊婦→1歳以上で就学前の児・0歳児の両親→小学生→中学・高校生など
    ワクチンの値段は6000~8000円位だと新聞では報じています。かかりつけ医での接種が基本となりますが、対象者の選定は各医療機関で行った上で登録を行います。問い合わせには応じませんので問い合わせをしないでください。各医療機関から連絡された方法で接種していきます。
    ワクチンは感染しないことを目的としたものでないことは充分理解して接種してください。抵抗力を高めておいて感染時に再度抵抗力があがる時間を短くして合併症を防ぐことに重点がおかれています。特に肺炎などの合併を防ぐために行われます。インフルエンザ脳症や感染を防ぐ目的はありません。

  7. 山辺町の全医療機関でFluA全例登録中
  8. 流行の把握が全くできていないと診療上問題が多くなります。また通園通学での流行状況が同じレベルでの知っておく必要があります。その為休日の診療は時間内に町内医療機関を利用した方がよいと考えます。

小児科医の話題44 09.09.02

 新型FluAの症状解析
―アンケート用紙配布による―


○ 対象年齢:0〜3才 1名 4〜6才 0名 7〜11才 8名 12才 5名  計14名

○ 発熱程度:37℃ 1名( 7.1% ) 38.0〜38.4℃ 2名(14.3%) 38.5〜38.9℃ 3名(21.4%)
39.0〜39.4℃ 4名(28.6%) 39.5℃〜 4名(28.6%)

○ 有熱期間(37℃以上):2日6名(42.9%) 3日6名(42.9%) 4日1名(7.1%) 5日1名(7.1%)

○ 二峰性発熱:なし

○ 咳と発熱(発熱日1):-2日1名(7.1%) -1日2名(14.3%) 1日11名(78.6%)

○ 咳が落ち着いた日(発熱日1):3日1名(7.1%) 4日2名(14.3%) 5日1名(7.1%)
6日3名(21.4%) 7日1名(7.1%) 8日〜 6名(42.9%)

○ 鼻汁が落ち着いた日:2日1名(7.1%) 3日2名(14.3%) 4日2名(14.3%)
7日3名(21.4%) 鼻汁なし6名(42.9%)

○ 嘔吐3名(21.4%): 1日1名(7.1%) 2日2名(14.3%)

○ 下痢(軟便) 7名(50.0%):2日1名(7.1%) 3日4名(28.6%) 4日1名(7.1%)
6日1名(7.1%)

上記のようです。

A) タミフルは有効で耐性はなし。→ 治療主体はタミフルで!
リレンザは特定の人に使用。あるいはAH1ソ連の流行に対して備蓄

B) 咳が出るとすぐに発熱する。鼻汁は出ないこともある。

C) 咳は落ち着くのが遅い症例も多い。8日以降42.9%。登校してもマスク着用は必要

D) 消化器症状は軽度。

E) 神経症状2名(14.3%) :7歳児1名と11歳児1名にみられた。熱せん妄と思われる
しかし経過観察はできるだけ低い階の茶の間or Livingに併設された和室など目の届きやすい所での観察が望ましい。

F) ウトウト1名(7.1%):脱水?補液にて軽快。

G) 入院観察依頼1名:14名以外で発熱後4日目で来院診断。咳がひどく高熱有、休日のために紹介。

H) タミフル服薬コンプライアンス悪い1名 :37℃台の発熱のみ。但し咳が続いている。

I) 同居家族への感染:早期に診断した場合感染が少ない印象。年齢層が高いので感染予防は何とかできた印象がある。

小児科医の話題43 09.08.18

 新型インフルエンザの流行

 新型インフルエンザは都会での発生から近隣都府県に徐々に拡大いたしましたが、高校生・中学生の全国大会や大学生の合宿などで急激に拡大してきています。現在のところ成人から高校生位までの感染がほとんどですが、他の地域では小児への感染も多くなってきました。
山辺町では町の保健予防課や教育委員会、地域医師会が共通の患者情報を持つことにしました。流行初期ではすべての医療機関で診断されたインフルエンザAについては登録制として毎日のデータを各医療機関と自治体に報告する。学校・幼稚園などの情報は教育委員会から医師会に定期的(週1回)報告を入れていただき、急患診療やインフルエンザ診断に役立たせる方向になっております。また一人暮らしの高齢者の方々についても行政側と地域福祉ネットの連絡を密にして、各医療機関と連携していきます。

 通常行っていない祝日の診療(特に9月と10月の連休)は地域医師会で午前中のみですが、急患診療を行う手はずを整えております。インフルエンザに罹患したと感じたら医療機関が診療している時間帯に受診してください。患者さんの移動よりも近くで情報の入っている地域の医療機関を受診するようにお願いいたします。救急診療では通常1日のみの薬を投与することになっておりますが、地域医師会の在宅当番診療では家庭内での安静などを中心に診療を行いますので長めに薬剤の投与を行う予定です。

今回の新型インフルエンザについて

 ほとんどの人が抵抗力を持っておりませんので通常のインフルエンザよりも症状が強いと考えてください。しかし現在のところ抗インフルエンザ薬が有効です。現在2名の方の治療を行ないましたが服薬後48時間以内に解熱しております。しかし咳が長引いて再度発熱するような場合には肺炎の合併を考える必要ありますのでその時は必ず受診してください。また小学生以下ではよくインフルエンザの咳や発熱よりもウトウト・元気がない・痙攣が起きるなど神経症状が前面に出てくる場合があります。そのときは待たないで医療機関を受診してください。

 通常抗インフルエンザ薬は10歳代のお子さんには注意して使用することになっておりますが、免疫のない状態ですので抗インフルエンザ薬の服薬をお勧めする場合が多くなります。服薬する場合には48時間は異常行動などに注意するようにしてください。また妊婦さんについては高熱による子宮収縮などが起こりやすいので解熱剤は使用してかまいません。産婦人科学会でも服薬を推奨しています。特に28週以降では胎児の器官形成が終了していることや、妊婦さんの呼吸床が減少することからできれば抗インフルエンザ薬の服薬は行った方がよいと考えています。乳児に対しての母乳は抗インフルエンザ薬を服薬していても続けてください。

臨床診断と治療について

  新型インフルエンザの迅速診断とウイルス検出の陽性一致率は70%前後といわれ診断が困難なようですが、周囲にインフルエンザの人がいる(潜伏期の多くは2~4日)、集団で罹患しているなど周囲の状況や咽喉のイクラ様変化から診断することがある程度可能です。従って医師の判断に任せて治療を受けてください。一応地域医師会の先生方には集団発生している場合には陰性でもインフルエンザの可能性が高いので注意して診療を行うように確認しております(陰性でも治療行なう場合がある)。
また濃厚感染者には予防投薬を行いません。咳と発熱が出てからでもかまいませんので医療機関を受診してください。実際にインフルエンザの発症した家族に抗インフルエンザ薬を投与すると、罹患したくない思いのためにすぐに服薬してその場は逃れても薬がなくなってからインフルエンザの患者さんから罹患するケースがよくみられます。

登園・通学禁止について

 インフルエンザでは発症後1週間しても迅速診断が約70%で陽性です。感染の可能性は7日経過してもありますのでマスクをきちんとして通学させてください。但し幼稚園や乳幼児ではマスクをすることで息苦しさを感じてしまうこともありますのでその場合にはさせなくともかまいません。しかししっかり休ませてください。
一応山形県の方針では解熱後2日経過してから登校・通園は可能とされていますが、できるだけ発熱した翌日から7日経過して通わせてください。特に医療職・教育職に疲れている方は7日間の休むことが求められております。

どんな時に再受診すればよいの?

 医療機関を受診する時に診断がついたら自宅療養を行うことになっています。医療機関では抗インフルエンザ薬を5日間、咳止め・去痰剤など7日間位投薬していただけると思います。しかし自宅療養で注意しなくてはならないことがあります。
小学校低学年ではインフルエンザ脳症と呼ばれるウトウト・元気がない・寝てばかりいる・痙攣を起こす・異常行動・異常な言動などのある場合には医療機関を受診してください。その他解熱しても咳がひどく再度発熱する場合には肺炎などの合併症を考えて検索を行う必要があります。

他の疾患はどうやって鑑別するの?

 8月現在山辺地区では肺炎クラミジア感染症(発熱・鼻汁なく、長引く夜間の咳)、肺炎マイコプラズマ(高熱と鼻汁のない咳)、パラインフルエンザ1(高熱と嗄声、吠えるような咳、鼻汁有)が散発しています。鑑別が難しいのも問題です。インフルエンザの迅速診断と流行状況と臨床経過から判断するしかないと思います。

小児科医の話題42 09.07.23

 7月19・20日に全国の小児科医が仙台に集まって「子どもの心」(日本小児科医会主催)後期研修会が仙台で行われました。研修は年2回毎年行われています。子どもの心・発達などに関する教育的な講習会です。その中で【子どもとメディア】特にゲーム、テレビ・ビデオ、携帯電話などが子ども達に与える影響を話題にしての講義です。先日福島県で行われた東北外来小児科学研究会でも、メディアについて学ぶ機会がありました。
確かにテレビができ、ゲームができ、パソコンや携帯電話が普及した現在、これらがなければ生活ができないというのも事実です。
小さな子ども達にとってこれらは本当に必要なものなのか?
お母さん方の情報集めに正確な情報が入っているのか(一方的な意見をキチンと選別して判断しているのか)?
私も4ヶ月健診時にテレビ・ビデオはこまめに消しましょう。少なくとも食事時にはつけないようにしましょうとお話ししています。この時点では母親はよく理解してくれますが、おじいちゃんがおばあちゃんがテレビが好きで何時でもつけているのでできないと訴えることも多いのです。祖父母の皆さんにお願いしたいのは、テレビ・ビデオを見せておくと静かにしているのでという理由だけでテレビを見せないでください。それよりも子ども達とできるだけ接触してコミュニケーションをはかってください。また小学校で夕食時にはテレビを消しましょうと話したら、「食事の時の話題づくりだから」、「食事時に何を話したらよいかわからない」といった意見が多く出ました。チョット変だな?と思ってもそれが実態なのかもしれません。子ども達はドンドンと成長して祖父母離れ・親離れをしていきます。その時には人とのコミュニケーションを上手にできるようにしたいものです。

今子ども達にとって何が必要なのでしょう。
ある先生の言葉ですが、
A) 今の日本の子ども達に必要なこと3つ。

  1. ワクチンでの感染症予防・・・外国で接種されているワクチンが日本で接種できないのは不自然です。ワクチンで防げる感染症はワクチンで!
  2. 事故防止・・・・・身の回りにはたくさんの事故を引き起こすものがあります。ちょっとした工夫で避けることができるのです。例えば窒息を起こす「こんにゃく畑」は避けるべきなのです。
  3. 虐待防止・・・・・何が虐待で何が虐待ではないのかの判断は非常に困難なケースがあります。しつけだと思っていても親が興奮している状態でしつけるのは明らかに虐待なのです。

B) 子どもにとって必要なこと4つ
1) 眠ること
2) 食べること
3) 遊ぶこと
4) 愛されていると感じていること

C) 子どもに身につけさせること3つ
1) 生活力
2) 人と関わる力
3) 学びたいと思う力

 小児科医をしているとなるほどと頷けることばかりです。
メディア漬けの状態ではこれ等が身につくはずがない。これからの子ども達は難しい生き方をしていかなくてはならないのかもしれません。

小児科医の話題42 09.07.09

水いぼ(伝染性軟属腫)について

 幼稚園・学校でプール授業が始まります。以前はプールで感染するといって水いぼのお子さんをプール授業に参加させないということがまかり通っておりました。しかしプールでうつるのではなく皮膚と皮膚の接触や、バスタオルなどの貸し借り使用で感染することが多いのです。とにかく水いぼがあるからプールには入れないということは方向的には間違っていると思います。

 チョット考えてみましょう。プールでは塩素管理が充分なされているので、通常のウィルスは失活することがわかっています。また通常のプール授業ではバスタオルの貸し借りは行っておりません。お昼寝のときは充分なスペースが確保されずにお友達とくっつきながらまたおなかを出してお昼寝をしています。どっちがリスクを持っているのでしょう。

 水いぼをとればいいんだからといいますが、取られるほうにしてみれば非常に痛いのです。子ども達に恐怖感を与えてまでとらなくてはいけないものでしょうか?通常は自然に治っていきます。とらなくてはいけない場合にはお母さん方にも取れますので、むしろお母さん方でとっていただけるのがベストなのかもしれません。自分達でできることはマズやってみても良いのです。

 お母さん方でやってみることの代表格は、腹痛時に子どものおなかを触ったり、叩いてみること。どの程度痛いのか。叩いたり触ったりするだけで充分その痛みが理解できます。また浣腸をして、排便させてみることも腹痛をとる大事な技術です。浣腸して下利便だったり、便秘のような硬い便だったり・・・。排便によって腹痛の多くは改善するのです。ただ排便でよくならない場合、嘔吐がひどい場合には医療機関を受診してください。このように昔良く行われていることが、最近は行われなくなってきました。試みて悪いことはありません。

肺炎クラミジア感染症の流行について

 最近咳がひどいという訴えで来院する小学生に肺炎クラミジア感染症が増えています。発熱や鼻汁もなく、ただ乾性咳だけが長く続いています。このような場合マクロライド系(クラリスロマイシン)、テトラサイクリン系(ミノマイシン)の薬剤を2週間投与すると落ち着いてきます。途中で服薬を中止しないでください。診断は適切な抗菌薬の投与を行いながらIgM抗体(発症後1週間して上昇),IgG抗体(少し時間が経って上昇)を測定してみることでわかります。現在山辺や村木沢地区でみられるIgM+且つIgG−or+というお子さんがそれに当たります。潜伏期が長く1~4週間とも言われており、うつったという印象がないのが特徴なようです。治療は同じですが肺炎マイコプラズマとの鑑別が必要になってきます。6月下旬から先週までに5名の方が診断・治療されています。夜間の咳が残る場合が多いようです。

 

小児科医の話題41 09.06.26

暑くなったね。


車内での熱中症
ちょっとの間でも子ども達を車内においておかないでください。6月21日にまた子どもの車内で熱中症を起こして死亡したと報道されています。毎年のように子ども達がちょっとしたことで死亡している現実を知ってください。

自転車での問題
都会ではチョットした買い物に子どもを荷台に乗せて歩くお母さん方が目立ちます。お年寄りの一人歩きも多く、自転車のマナーを守らない方も多くみられます。自転車の転倒事故は以前から多くの小児科医から危険であるということを指摘されてきました。警察庁では子どもにはヘルメット着用を指示しています。子どもが嫌がるからといってヘルメットをしない場合には充分注意をしてください。立ち話の時は必ずお子さんを降ろしてください。

水遊びについて


バンデムシ
荘内地区の海岸ではこの時期にバンデムシと呼ばれるクラゲが人を刺すようです。刺される人のほとんどが内陸地区からの家族だといいます。藻場に多く潜んでいますので藻の近くで遊ぶことはやめましょう。荘内のお子さん達はこのことを知っていて、藻場には近づかないようです。

 直接の日焼けは?
紫外線障害の例として日焼けが挙げられます。直接日焼けをしないよう子ども達にもTシャツを着せて水遊びをさせましょう。短時間遊んでは木陰で休憩させてください。またプールでは日焼け止めが禁止されているところもあります。お互いに注意しましょう。可能な場合にはクリームよりもローションタイプのものを使用してください。理由はプール掃除がクリームだと壁などにこびりついて大変なのだそうです。

 家庭の水遊びでは風呂場で遊ばせない!
風呂場で遊ぶ癖があると風呂への落下・溺水というパターンが考えられます。風呂には水を張った状態にしておかない、風呂の蓋は子どもが乗って遊んでも壊れないような蓋を利用しましょう
ビニールプールに朝水を汲んで昼頃に水遊びをさせる時は、かなり熱くなっている場合もあります。熱傷に注意が必要です。汗疹の予防に水遊び入浴は大切です。

小児科医の話題40 09.06.12

    マスクと咳エチケット

新型インフルエンザが都会から岩手県に拡散して来ました。小児科医のMLでも
マスクで感染は防げない、感染させない効果は疑問だということが話題になって
います。
マスク狂想曲・・・・何処にいってもマスクがなく買えない。楽天市場のスタ ッフは
出店者にマスクを買い占めてインターネットで販売するように勧めてみたり・・・。

 マスクをするメリット
1)直接鼻の周囲に飛散するウィルスが入りにくい。
しかし顔にフィットしないと予防にはならない。鼻までキチンと着用する。
2)手で鼻をこすったりする回数が減る。
鼻周囲に手を持っていき、直接鼻に触れないために感染リスクをへらす。
3)湿度を保ちウィルスの増殖環境を抑制的に働く。
4)ウィルスの飛散空間が減少する。

 デメリット
1)呼吸が苦しくなる。
2)何度も使用する場合、ウィルスに汚染されたまま直接マスクをするリスクがある。

【マスクをする=咳エチケット】ではないこと。
【マスクをする=感染予防・ウィルス飛散抑制】ではないことを強調する意見が
多いようでした。

ただ感染を防ぐにはウィルスの量がある程度体内に入らないことが絶対条件です
ので、マスクはある程度役に立っていると考えています。もし咳や痰、クシャミが
出るようでしたらティッシュで鼻と口を押さえ、顔を横にして他の人への飛散を防ぎ、
ティッシュをすぐにゴミ箱へ捨てる事が一番大事なようです。けっしてテーブルなどに
おいておかないことが大切です。

小児科医の話題39 09.05.29

                新型インフルエンザ
新型インフルエンザの流行が京阪神地区でみられ、最近関東地区でも散見されています。連休終了後にはかなり多くの議論がみられました。特に弱毒性であるという点から社会行動の規制が厳しすぎる、診療所の診療を行うことでも厳しい規制が敷かれすぎ、発熱外来は機能していない、蔓延期と考えて診療を行うべきだとなど・・・・・。県内でも医師会・自治体などの連携をめざして色々な会議が開かれています。

現在ある特定の人たちですが、インフルエンザの検査をして欲しいと要望してきます。しかし迅速診断キット・抗インフルエンザ薬などはほとんど手に入らない状況で、手持ちのなかで診療を行なわなければなりません。検査を行なって陰性の時には流行期の検査ができないのです。そのため咳と発熱の関係・咽頭所見・集団発生の有無などからインフルエンザの臨床的スクリーニングしながら検査を行なっている状態です。

現在のところ発熱外来で検査を行なってくださると思いますが、やはり検査キットの不足から選別して使用しているのが実情です。最近流行している高熱の出る疾患は嘔吐→高熱・水様性下痢を起こすロタウィルス、咳がひどく出て高熱の続きやすいパラインフルエンザウィルス、発熱のみの夏カゼ(エンテロウィルス感染)、溶連菌感染症などが中心です。症状の流れから疾患を疑っていきますので、症状の流れを教えてください。また細菌性の感染だがはっきり原因がわからないものもみられます。この時には元気がない・グッタリしている・いつもと違うという訴えをすることが多いようです。お子さんの元気さに注意してください。

流行は阻止できないと考えてマスクなどは徐々にでも良いですから、準備をしておいてください。
小児科医はある程度近所の情報を仲間同士で共有しております。あまり心配しないようにしましょう。


 問題は検査での診断が正しいのか?

医師会のMLを通じて診断キットの精度を上げる方法などを公開しておりますが、すべての先生ができる限りのことをしていただけるのかはわかりません。昨年皆さんの協力をいただいてSAS hMPV testを行った経験から、できるだけ多くの先生方に検査の問題点を理解して使用していただけるよう努力しております。
キットが不足したら?どうして診断をつけていくのか。当医院の集団感染した施設の子ども達の診察の仕方などノウハウをできるだけ多くの先生方に伝えていきながら、安心して医療を受けられるよう心がけていきます。兎に角患者さんの方では自分だけでよいからというパニックを起こさないように心がけてください。
迅速診断はB型と同様に発熱して翌日が確実に判定できるようです。これはウイルスの増殖が弱いからではないかと考えられています。

小児科医の話題39 09.05.14

 連休も終わり新しい生活リズムが作られる頃だと思います。新型インフルエンザの話題で連休中多くの情報で小児科のMLが賑わいました。5月13日の村山地区小児科勉強会でも新しいインフルエンザとして登場した時のスペイン風邪・アジア風邪・香港カゼの登場パターンについて話題提供がありました。
また今年のインフルエンザについてタミフル耐性について、ある医療機関でのインフルエンザ薬の処方内容について話題提供されています。おおよそ50%近くの患者さんが抗インフルエンザ薬を投与せずに頑張られていたことや予防に対しては薬より生活指導の重要性が指摘されていました。

 【ワクチン打って麻疹・風疹完封】 
これは全国の小児科医300名弱の寄付によって新広島球場1塁側ダッグアウトの上に掲げられた広告塔です。広島球場の試合をテレビで観た時に映るかもしれません。もし映ったら小児科医の心を思い出してください。

 ― 外遊びをしましょう ―
幼稚園や学校での遠足の季節です。お母さんと一緒におにぎりを握ってみましょう。最近の子ども達はおにぎりを握る時にヤケドを起こすかもしれないということを知りません。実体験不足・経験不足によるものです。是非お母さん方と一緒に握らせてください。そのおにぎりを持って、天気の良い日には山にでも出かけてみましょう。県民の森・西公園・西蔵王高原など外遊びにはもってこいの場所が山形近郊にはたくさんあります。お父さん仕事のことを忘れて子ども達と遊んでみませんか?

― オタフクカゼの難聴について ―
大阪の橋本裕美先生書かれた論文(7500人のオタフクカゼ患者さんのうち7名の難聴が見つかったこと)が外国の雑誌に掲載されました。外国ではMMRワクチンが主流なのでオタフクカゼの発生が少なく、このような研究論文が報告されていませんでした。昔からの小児科医の教科書では最大20000人に1人だとされています。この論文ではオタフクカゼは後天的難聴を起こす率が高いこと、難聴を起こした場合には回復しないことをもっと多くの医師が理解し、国民も小児期に罹ってしまえばよい軽度の病気であるという認識を改めていくべきだとしている。
彼女は「片方が健常ならいいんじゃない」という医師の一言も患者さんを医療不信につながらせてしまう原因となるので医師の言動には注意が必要だとお会いした時に教えてくれました。現実的にはオタフクカゼに罹ったら必ず電話などの会話を通じて子どもの聴力をチェックしていただくしかないと私は感じています。この研究を通じて一般臨床を行っている医師たちがやらねばならない仕事を彼女は教えてくれています。

小児科医の話題38 09.04.08

  ご入園・ご入学おめでとうございます。

  水痘・オタフクカゼにかかったことの無いお子さんにはワクチンを接種してください。特にご兄弟もかかっていない場合には是非接種を行なってください。水痘は7日間、オタフクカゼは10日間は登校・登園停止となり、その上ようやく行き始めたと思ったら下のお子さんにうつってしまいます。潜伏期は水痘で14日・オタフクカゼで16日です。ようやく治ったとしても1週間で兄弟が発症します。発症してからでは予防は不可能です。
年長さん(第二期)、中学1年生(第三期)、高校3年生(第四期)の麻疹・風疹混合ワクチンの定期接種が始まっております。山辺町の第三期接種は山辺中学校での集団接種になりますが、第二期・第四期接種は個別接種です。高校生は痛いので接種しないというお子さんが多いようですが、早めに接種しておくことをお勧めします。入学時に進学先の調書には必ずワクチン接種の確認がおこなわれます。冬にはインフルエンザが流行して期間内に接種できない方も見受けられました。

 VPD(Vaccine Prevented Disease)という言葉をご存知ですか?ワクチンで防げる疾患という意味です。小児科医の間では当然なことだと考えておりますが、まだまだ認識されておられないようです。例えば水痘・オタフクカゼ・インフルエンザb菌(Hib)・7価or13価肺炎球菌ワクチンが小児科では有名ですが、成人では子宮頚癌を起こすとされているHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンや老人の肺炎に対する23価肺炎球菌ワクチンが有名です。特に女性にとって大きな問題はHPVワクチンをどのような時期に接種するかです。性の低年齢化に伴い今後子宮頚癌が増加することが懸念されており1年でも早く定期接種化が望まれています。
東京などでは子育て支援対策としてワクチン接種の補助が始まっています。あるところでは水痘6000円、オタフクカゼ4000円、だそうです。またHibワクチンに対しての補助も自治体によっては始まっています。
天童市では小学6年生まで、山形市では小学校1年生までの医療費が無料となるようですが、まずVPDワクチンに対する補助政策のほうがコスト的に見合う施策だと思います。市長さんと議員さんのご努力には感謝しますが、無駄な税金の使い方はあってはならないはずです。このような施策は検査をたくさん行なう医療機関にとっては朗報かもしれませんが、急患の増加の誘引にもなりかねません。必要最低限の医療費補助とVPDワクチン補助のバランスが大切です。天童市東村山郡医師会ではこの点を自治体に要望しておりますが、市長さんの公約だとかで行うのだそうです。全く公約とは不自由なものです。

車内閉じ込め事故に注意を

 ようやく暖かくなってきました。これに伴って車の中の温度も急上昇いたします。毎年のようにちょっとした買い物やパチンコなどで車を離れた隙に熱中症を起こしてしまい、子どもの命が奪われてしまいます。お母さん・お父さん注意してください。もしこのような事故で子どもの命を失った場合には一生自分を責めて生きていかねばならないことにもつながります。ちょっとしたことかもしれませんが注意をしてください。

小児科医の話題38 09.03.25

麻疹の発生と対応

 麻疹は昔から命定めの病気として怖がられていた。山形ではワクチン接種が行なわれるようになり流行が起きなくなって久しくなる。しかし数年前から成人や高校生・大学生の集団発生が目立ち始め、各地で休校措置を取るほどとなるケースもある。今年も入学者にワクチン2回接種記録の提示か抗体価の測定を義務付けている学校が多い。
平成20年度から高校3年生と中学1年生に無料で接種することができるようになりましたが、山辺町の高校3年生16名が接種を行なっていないという。以前から書いているようにうつされないためのワクチン接種だけでなく、うつさないための接種でもある。5年かけて麻疹を一掃する。これが目的である。

 麻疹が発生すると個人追跡調査が行なわれ、接触者全員に指導が行われる。理由は麻疹の急性期に肺炎、脳炎や脳症、麻疹罹患後の結核発症など多彩な合併症や数年後にSSPEと呼ばれる脳障害のケースが出てくるからである。罹患してもよいという親や子どもがいて、もしその家族がうつした人に重い後遺症を残してしまったとしても良心の呵責に苛まれることはまずありえない。なぜならうつさないという強い意志が働いていないからである。
この3月16日発熱・発疹で発症した7ヶ月児がいます。保健所職員はその対応で3連休を棒に振ってしまったスタッフも多いと思われます。このお子さんが気付かないで健診や色々なところに出かけていれば、2次感染は子ども達ばかりではなく成人にも感染し、その成人感染者から3次感染者と鼠算式に急激に流行を起こしてしまうでしょう。中学校や高校生はよく中体連・高体連の試合に行って他の地域の人にも感染を繰り返させているのも現状である。最近では麻疹ワクチンを接種しない子ども達には大会出場を辞退させるところもありますし、患者さんの出たところでは全校で出場辞退を求められる所も出ています。したがって今回の場合のように年度の端境期に発生する場合には特に接種をスムーズに出来るよう自治体・教育委員会などと連携をとる必要が出てくるのです。
沖縄では1歳からの接種ではなく流行期には緊急避難的に11ヶ月より接種を行ない、麻疹感受性者を少しでも減らそうと努力しています。本土の人たちが麻疹を沖縄に持ち込んでしまい、毎年のように流行を繰り返しているからです。しかし現実的には接種率の悪いのは沖縄であり、大阪なのです。

 子ども達をVPD(ワクチンで予防できる疾患)から守る運動は小児科医では当然だと考えているのです。でも麻疹流行のひどさや後遺症をみたことのない医師も多く、またVPDを理解してくれない医師も多いのが現状である。小児科医のあるグループでは麻疹・風疹撲滅のために広島球場の毎年広告看板を数百万円もかけて掲げています。また色々なイベントに出かけてVPDの理解を求める運動を行っています。今年も東京マラソンの応援者・走者で麻疹・風疹ワクチン接種を呼びかけてきました。個人でできない事を多くの医師たちで積み重ねているのです。そのような努力をしてまでも子ども達には麻疹に罹患してほしくない!それほど怖い疾患なのです。

小児科医の話題37 09.03.06

 インフルエンザBが現在各地で流行中ですが、3月中旬の卒業式を境に著明に減少していきます。しかし流行の起こらなかった地域では4月の連休前に集団発生が起こる事もありますので注意が必要です。

 さて高校入学の前に携帯電話を購入する場合の注意点。

  1. フィルタリングを行って子どもに与えてください。(悪意のあるものには近づかない)
  2. プロフィール・ブログには個人が特定できるような文章は書き込まない(自分を守る)

  3. 炎上という遊びもありえます(人が傷つくことを楽しむことで快感を得ています)。
  4. 個人情報は絶対に書き込まないこと。
  5. 自分の部屋には持ち込まない(閉じこもる傾向が出てきます)。コミュニケーションを大事にするように指導して・・。
  6. 5あるいは15分ルールに巻き込まれないように。メールが着たらすぐに返事を出さないといけないルールは個人の生活を脅かす原因になります。
  7. 書き込んで良い事と悪いことを教えてください。
  8. 電話をして良い時間と悪い時間があるはずです。友達だからといって何時も電話をかけてよいのではないことを教えてください。

毎年不眠を訴えて睡眠導入剤を希望する人が4月になると増加します。自分の生活リズムをマズきちんとすることが大事です。

メディアリテラシー(自分で判断・選別をおこなう)をマズ教えましょう!

小児科医の話題36 09.02.20

医療費の無料化

 天童市で今年から小学生の医療費が無料になるようです。市長選で公約としたことから実現したようです。コストベネフィットの計算はどのようにしたのでしょうか?

 確かに医療費は大変ですが、それよりも大事なことはワクチンで防げる疾患はワクチンで予防することです。現在個人で行なえるワクチンは水痘ワクチン、オタフクカゼワクチン、インフルエンザ菌ワクチン(Hibワクチン)があげられます。

 水痘は罹患すると7日間、オタフクカゼは10日間近く通園・通学停止となります。最近働くお母さん方が増加しています。診断時と治癒時の二回医療機関を受診することが多いと思われます。その時の休み(休業費用)はワクチン代より高いはずですし、長期間の休みは雇用側でも大変困ります。医療費の補助よりもむしろワクチン接種の補助のほうが大切だと信じています。また病児保育・病後児保育などコストの見合わない部分の補助に回すべきだと思います。

 安易な医療費の無料化はモラルを低下させることもあります。今後天童市の医療負担金が増加しないことを願うばかりです。
山辺町ではこのようなことにならないように医師クラブから要望を続けていく予定です。馬鹿げた施策より確実な施策。教育関連経費(特別支援が必要な子どもへの援助)、学習障害児の早期発見とその育児相談、高齢者への肺炎球菌ワクチン補助などです。住民の皆さんの協力期待しております。

山形もAH1はタミフル耐性

 昨年末当院で採取した検体のインフルエンザAH1ソ連の遺伝子解析の結果3検体(12月中に検出された8検体すべて耐性だったようです)すべてタミフル耐性でした。タミフルを投与して効果のなかった患者さんには申し訳なく思っています。医師としてはインフルエンザAH1がすべて重症でないことも良く理解できました。自然経過を話して感染しやすい時期を理解していただくほうが患者さんにとっても有意義なことだったと思います。今後の診療に役立てたいと思います。

 今年診療スタイルで変更した点は、できるだけ隔離状態で診察する。診察終わった時点で検査中の患者さんには色々なところで待機していただきました。ご不自由だったと思いますがご協力ありがとうございました。またインフルエンザと診断された患者さんの再診時に起きる2次感染を防ぐために、お薬を4~5日分から7日分に増やして投与したことです。その結果インフルエンザの患者さんの再診率が大きく減少し、医院内での2次感染は防げたようです。

小児科医の話題35 09.01.23

 インフルエンザの流行期に入りました。インフルエンザはA型ソ連・香港B型山形系・ビクトリア系C型に分類されます。現時点ではインフルエンザA型香港が尾花沢市内で11月に集団発生していますが、現在何処で流行しているか不明な状態です。山形市内・山辺町内などで多く分離されているのはA型ソ連です。これは仙台市内で10月に流行してその後12月に山形県内で流行しているものです。B型山形系は12月に山形市内で流行したものですが現在寒河江市内でみとめますが、A型の流行が終わってから再度流行してくると思います。
インフルエンザは咳が出てから1日以内でほとんど発熱します。ワクチンを接種して抵抗力が充分上昇している時には発熱や再発熱しにくくなります。最近マスコミを通じてタミフル耐性インフルエンザが話題になっていますが、昨年暮れより山形でのA型はタミフルを使用しても無効である可能性が強いとして外来でお話をしておりました。しかしこの話題が浸透してもまだタミフルを使用している小児科医もおられます。注意が必要です。
A型ソ連かA型香港を区別することは現実では不可能ですが、方法的には衛生研究所での分離速報を確認することや集団発生しているところではタミフルを投与した患者さんからインフルエンザの自然経過であるかどうか熱型を教えていただくことです。また一時落ち着いている施設で再度インフルエンザA型が流行したときは、別のA型が流行していると考えて治療することです。
人ごみの中では必ずマスクを着用すること(咳エチケットを守ること)。家族内で感染者が出た場合やはりマスク着用は必要です。乳幼児では正面抱っこをせざるを得ないわけですがマスクを必ず着用することです。ある程度大きなお子さんではできるだけ正面抱っこは避けるほうがよいと思います。解熱してから入浴する時は換気扇を停止し、シャワーを一度出してから湿度の高い状況で入浴を行なうことです。部屋の湿度もできれば高め(50~60%位)にしておくことが望ましいといわれています。
医療機関で駐車場が大きなところでは色々な患者さんがいます。したがって車の中で待機するほうが望ましいのですが、順番がどうのこうのということで他の患者さんからクレームがつくこともあり、感染症のトリアージがうまくいかず院内感染を起こしている医療機関も多いと思います。充分に注意してください。1時間12名以内までが上限だと思います。そのような医療機関で常識的な治療を行なってくださるところを選ぶべきです。

小児科医の話題34 09.01.09

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

Hibワクチン接種開始のお知らせ

 昨年末より待望のインフルエンザ桿菌B型(Hib)ワクチンの接種ができるようになりました。当医院でも昨年12月より予約接種しております。昨年4月より県内では2名のお子さんがHib感染による細菌性髄膜炎に罹患されていることが報告されています。細菌性髄膜炎の起炎菌頻度は全国ではHibが多いのですが、山形県内では肺炎球菌が多いようです。しかし全国調査と同じようにHibの頻度が増加すると考えられています。

 一般の菌血症では肺炎球菌によるほうがインフルエンザ桿菌より多いことがわかっておりますが、抗菌薬による反応は肺炎球菌のほうがよく外来治療も可能であることが示唆されています。当医院の結果でもそのような状況です。しかしインフルエンザ桿菌では検査結果(WBC,CRP)ではウイルス感染かどうかの判断がつかないことも多いといわれ、しかも急激に悪化するため間に合わないことも起きています。特に喉頭蓋炎ではあっという間に悪化して死亡することもあります。また細菌性髄膜炎でも急激に悪化することが報告されおり、予防するにはHibワクチンしかないといわれています。

 小さなお子さんにインフルエンザHAワクチンを接種するよりも、Hibワクチンや通園しているお子さんでは水痘ワクチン・オタフクワクチンのほうがご家族にはメリットが大きいことしってください。幸い開業して12年間化膿性髄膜炎や喉頭蓋炎の発生がないのは、偶然であり今後起きない保障もありません。ぜひ公的定期予防接種ばかりではなく、個人的に接種するワクチンにも眼を向けてください。

個人で行なうワクチンについては受付で予約してください。

小児科医の話題33 08.12.19

今年(2008年9月)のインフルエンザについて

 今シーズンのインフルエンザは12月1日よりFluB yamagataが竹田西武幼稚園の児から分離されて以後大曽根小学校やべにばな幼稚園・つばさ幼稚園で流行いたしました。B型インフルエンザに対してタミフル・リレンザ共にその有効性に対して疑問視する報告があることや、インフルエンザによる異常行動があたかもタミフルによるものだとする報道もなされましたので、B型インフルエンザには抗インフルエンザ薬の使用は行ないません。

その後12月初旬サクランボ幼稚園でFluAの集団発生が起こり、山辺相模小学校でも集団発生を12月15日より確認され現在ゆりかご幼稚園などでも発生しているようです。このFluAはタミフルによく反応していることからAH3 ( A香港型 )とみられています。AH3は此処2年流行しておらず大きな流行となるかもしれません。このAH3に対してタミフル・リレンザの反応はよく、病状改善などメリットが大きいために抗インフルエンザ薬は投与する方向で考えています。

 ところで仙台ではAH1が多く分離されており年末年始にかけて山形県内でも感染者が出ると思われます。問題は昨年度から日本各地でAH1に対してタミフルが効かないタミフル耐性AH1の報告が出てきています。世界的にはほとんど今シーズンのAH1ではタミフルが効かないと報告されており、集団発生した場合その集団での治療ではタミフルを投与しないことも充分ありますのでお含み下さい。

 現在までのインフルエンザの情報をお伝えいたします。
12月19日  山辺こどもクリニック

小児科医の話題32 08.12.11

 今年は暖かい日が多い気がします。札幌でも雪がないような状況です。
最近外来小児科学会で抗菌薬の使用率を調査した結果が報告されています。この外来小児科学会の有志が抗菌薬の適正使用を呼びかけてから6年目になります。その間ガイドライン作りを行なったり、どのような疾患との鑑別が必要だとか、臨床症状と発熱の関係を調査したり、数多くの報告を行なっています。2003年に抗菌薬の投与率を調査した時は、かなり多くの小児科医が発熱した時にはすぐに抗菌薬を処方していることがわかっています。しかし昨年度の調査では40%の小児科医(外来小児科学会に所属する会員)の使用率は0〜5%という結果が出てきています。これは今までの抗菌薬の使用が本当に必要だったのかという疑問から、カゼという疾患概念が小児科医の思考過程にキチンと整理されて組み込まれたのでしょう。

山形県内のウィルス分離情報は患者さんのお陰で小児科医が流行している疾患群を思い描きながら診療を行なえるようになりました。そのために県内の小児科医の抗菌薬の使用率は非常に少なくなっています。しかし耳鼻科や内科で子どもを診察していただくことも多く、彼らがどのような疾患を思い描いて検査や治療を行なっているのかが解からないこともしばしばです。小児科医の常識と他科の医師の理解度がかなり異なっていることが問題になりつつあります。

ある小児科医のMLでこれらのことも議論されています。治療法もかなり違ってきています。医師それぞれの考えがあってよいのかもしれませんが、子ども達にとって不利益のない治療を行なっていただきたいものです。

年末年始の診療は

■通常診療
12月30日午前中まで→仕事納め
1月5日午前中から診療開始
■救急診療
12月30日 夜間診療所勤務 午後7:30〜10:30
12月31日 午前10時まで電話連絡してください。転送しております。午後不在。
1月1日 不在。診療できません
1月2〜4日午前10時まで電話連絡してください。転送しております。午後不在。

救急診療のときは必ず保険証と医療証・診察券をご持参ください。
カルテを出すのに時間がかかり他の人に迷惑がかかります。

小児科医の話題31 08.12.4

迅速診断と感染症
小児科医のあるメーリングでRSウィルスの迅速診断について議論されている。一般診療医は発熱する子どもを診察すると咽喉から検査をおこなう。無駄な検査ではないのか!その反省も込めて議論されています。
1) それがどれ程の意味を持つのか?
2) 全員に検査をしなければならないのか?
3) 家族が本当に望んでいるのか?・・・よその医院ではやってくれたのに!
4) 医療費が上昇して結局税金の無駄遣いではないのか!

1) ,2)正確な診断は正確な治療に結びつく・臨床経過を家族に伝えられる

積極的に迅速診断を使用すべきだ

 迅速診断は現在病原体と反応させて行なうもの(インフルエンザ・RSウィルス・アデノウィルス・溶連菌など)と抵抗力のレベルを調べるもの(肺炎マイコプラズマ)の2通りがある。しかし抵抗力のレベルを調べる肺炎マイコプラズマ迅速診断は罹ったことを意味するが今回罹患していることの証明ではない。したがって誤診が非常に多いことも指摘されている。溶連菌感染症はきちんと抗菌薬を服薬しないと再発や腎炎などを合併することもあり疑った場合には検査をしたほうがよいといわれている。典型的な咽頭痛や咽頭所見を有する場合には検査は必要ないし、一般の正常な幼児では約1割の子が咽喉に常在しているとも言われ治療が必要でないケースも存在する。流行期でない時に発熱のみの訴えで迅速診断を行ない陽性であれば治療を行なうことは、やはり過剰治療となることも考えられる。その他の疾患はウィルス性であり臨床経過を知る上で医師にとっては大事な情報源ですが、ウィルス性疾患ではインフルエンザA型以外治療法がないことも事実です。その為経過をみながら必要に応じて検査すべきだという意見が小児科医には多いようでした。

2) 迅速診断には保険請求のできる検査(溶連菌、インフルエンザ、アデノウィルス)と保険請求のできない検査(ノロウィルス、RSウィルス)があります。小児科医や耳鼻科医は良く保険請求のできる検査を同日に行なうところもよくありますが、保険請求のできない検査は行なわないことが多いと思います。しかし医療機関によっては集団発生をしているような地域に限り保険請求のできない検査(RSV、ノロウィルス)も行い診療に役立てているところもあります。通園施設の方が検査を行なってもらうようにとか、ご家族がやって欲しいという場合には有料で個人負担をしていただく必要が出てきます。それも検査だけの費用ということではなく、診療そのものが自由診療となり保険がきかないこともありうる(混合診療の禁止条項に触れてしまう)のです。
その点もあり全員に無料で迅速診断を行なえないのです。

カゼは人から人へとうつるものです。その基本は先ず成人から子どもへ。その後幼稚園で多くの子どもさんが罹患して地域の流行を起こしていきます。終息する場合には散発的に発症した子どもから成人にうつり徐々に流行が落ち着きます。

 このように地域的な流行を起こしやすい感染症の場合には家族内感染などの指導することも大事な小児科医の仕事です。その為に保険のきかない迅速診断を医院負担で行なうこともあるのです。

 迅速診断のメリット、デメリットを考えて診療を行なっています。皆さんの大事な医療費を医師や家族の単なる自己満足のために、同日に数種類の迅速診断を行なうことは避けるべきだと考えています。

小児科医の話題31 08.11.14

チャイルドシート・後部座席シートベルト

 先日不幸な交通事故がありました。ご両親のお心は如何ばかりかと思いながら掲載することにしました。
車を運転していて気付くのは子ども達の後部座席から運転者を覗き込むような仕草の多いことです。小さいお子さんから大きな子まで・・・・なんと多いことでしょう。急ブレーキをかけたら後部座席に座っている子どもが車から飛び出してしまうことは予期できるのではと考えてしまいますが・・・。しかし子ども達にとっては非常に楽しいひと時なのです。でも子どもを育てる時のリスクはできるだけ少ないほうがよいのです。ぜひご両親には後部座席でのシートベルト着用を指導していただきたいと思います。
小児科学会で報告されたチャイルドシートのパンフレットを外来に置いておきますので必要な方は自由にお持ちください。
また車の乗り降りは運転者が先に降りてから子どもがおりる。子どもが乗ってから運転者が乗るように心がけましょう。親が仕事に出かける時に子ども達はよく車を追いかける姿や、車庫入れをしている時に車へ近づくのを見かけます。車での事故は本当に悲惨です。もうこのようなことで事故が起きないようにと祈るばかりです。

 子どもの救急診療について

 先日山辺保育所でこどもの救急について話してきました。しかし出席者は少なく関心がないと思われるほどでした。このような啓発運動を自治体が行なっても本来必要な親世代祖父母世代が無関心であれば当然行なう意味がありません。どのようなスタイルが本当に必要なのでしょうか?
さて夜間救急はできるだけ9:00くらいまでに受診しましょう。迷っているくらいなら受診したほうがよいと思います。特に嘔吐する場合・腹痛を訴える場合には我慢できませんので受診してください。
山形市近郊で夜間でも診察してくださる医療機関は、pm7:00~8:00くらいまでなら上山小児クリニックさん。しかし不在の時もありますので電話で確認してから受診してください。当山辺こどもクリニックでは診察しておりません。。


日曜日について

 まず新聞の休日診療医療機関が掲載されますのでまず確認してください。意外に小児科医が診療を行なっていることも多いのです。
その他第1・3・5日曜日午前中は寒河江市の西川産婦人科小児科医院の小児科で診療を行なっています。確認して出かけてください。当山辺こどもクリニックでも朝8:00~10:00まで診療ができる時は携帯電話に繋いでおりますので、医院に電話をして名前をキチンと伝えてから診察希望であることをお話ください。すべて電話予約診療です。医療相談はしておりません。

小児科医の話題30 08.10.30

入浴について

 最近咳と鼻汁のカゼを多く見かけます。咳が激しい場合は飛沫感染が多く、鼻汁・鼻閉が主症状である場合は接触感染でうつると考えられます。そのため手洗い・うがい・マスク着用は効果があると考えられます。室内の乾燥はカゼがうつりやすい条件の一つですので就寝前にタオルを干したりしてみましょう。
もしうつった場合に膿性鼻汁や痰が粘っこくて膿性の場合には発熱がなければ入浴してもかまいません。その時にはぜひ換気扇を使用しないでシャワーを出して高い湿度の中で入浴をしてみてください。その上で鼻汁をかむとよくかめますし、痰もよく排出することができるようになります。

 山辺町は山形県内でも脳血管障害の多い地域です。入浴時には風呂の温度をややぬるめにしてください。血圧の急激な変動を抑えることが大切です。また高血圧の患者さんは服薬を忘れないようにしましょう。

 湯冷めするからといってすぐに子ども達を寝かせると、逆に睡眠時に布団から出てくることがあります。少し茶の間で体が火照るのを落ち着かせてから寝せてください。

 大学受験でホテルに宿泊する時には部屋が乾燥しますので、湿度を確保するため浴槽にお湯をはっておくのもひとつの方法です。

小児科医の話題29 08.10.17

朝晩寒くなりました。山の紅葉も始まりこれから11月初旬までがみごろでしょうか?新1年生の入学時健診も終了し、学校への1日体験入学も始まると思います。子どもと一緒に歩いて学校まで行ってみませんか?
体験入学での保護者へのお話

  1. 早寝・早起き・朝ごはん

大きな都市部では子ども達の食生活が孤食となっていることが話題になることもありました。山形ではそれほど問題にはなっておりませんが、朝起きられず食事を食べないで学校に行くお子さんが増えているといわれています。またご家族のお仕事が忙しく、また夜勤などで一緒に食事を取ることが不可能になっておられることも話題にあがります。できるだけご家族一緒に食事を取る努力をいたしましょう。
子ども達でも遅くまで起きていることは可能です。しかし早く起きることはできません。これは早く起きる生活によってリズムが形成され、早く寝る習慣がつきます。早寝が早起きさせるコツではなく、早起きが早寝を起こすことに注意してください。子ども達はTVを見たくて、「お母さんばっかりTVを見て、何故私達子供は見れないの!」と問題提起しますが、大人と子どもの生活時間帯が異なることを小さな時期から教えるのが一つのポイントになります。是非子ども達を夜遅くまで親の生活に巻き込まないようにしてください。

  1. メディアリテラシー

   子ども達のゲームソフトに年齢制限があることをご存知でしょうか?小さな時から子ども達に、暴力的なシーンの多いゲームを与えることやめましょう。年齢にあわせたゲームを与えるようにしてください。販売店では年齢に適したものをおしえてくれると思います。
大人でも携帯電話・ビデオ・ゲーム・パソコンに夢中になられる方もおられるとか。子どもと一緒に遊ぶことも大事です。できるだけ安易にメディアの利用をしないようにしましょう。
3月4月は卒園・入学と子どもの生活パターンが大きく変化する時です。子どもの声に耳を傾けることも大事です。

  1. ワクチン接種について

   定期接種はすべて終わりましたか?確認すること。任意個人接種するワクチンについて特にオタフク風邪ワクチン・水痘ワクチンについて罹患していない子どもさんはできるだけ個人接種を行なってから入学するように。

  1. 子どもと学校への相談

   子どものことで悩んだり相談したい事があれば何処に相談先があるか。まずは学校へ相談することも大切です。しかし担任の先生のことで悩む場合には、その相談窓口を知っておいてください。このようなことを入学前のご家族にお話をしてみました。一番大切なことは人間関係です。学校の先生方を大切にしてください。自分達が何で悩んでいるのかを一緒に考えてみましょう。手立てはたくさんの方法があります。とにかく一人で背負い込まないようにしましょう。

 

 

小児科医の話題28 08.10.06

また起きたこんにゃくゼリーによる窒息死

 かなり以前から「こんにゃくゼリー」による窒息死は指摘されていました。最近でも学童保育での事故が有名です。注意事項で小児・老人には与えないよう注意書きがなされています。小児科医の間では生協などでの販売は中止してくれと申し入れておりました。おいしくて食べておられる小児科医もおりますが、その多くはダイエット食品として食べていると言います。多くの母親も自分のダイエット食品として購入し、子どもに与えているのかもしれません。また小児科医の間では新しく母となる人たちが若い時にそのような事故が起きていても無関心だったので同じ事を繰り返すという「親世代の新陳代謝」を指摘している先生も多いようです。実際に保健師が多くの母親にそのような事故を説明しても実際の事故が減少していないことも報告されています。お母さんの『想像する力』が子育てする力をつけていくのです。是非医療者の話に耳を傾けてください。

 こんにゃくゼリーはゼリーではありません。そのため加温しても変形せず、誤飲すればほとんど呼吸困難・窒息が起こるものと思います。窒息の原因はこんにゃくゼリーを食べる時にカップから吸い込むようにして食べることが多いため誤飲を起こすのです。キチンと皿に出して小さくして食べれば窒息は起こさないと思えるのですがどうでしょうか?誤飲した時には指を使用して取り除く事を試みてもよいのでしょうが除去できないことのほうが多いのだろうとおもいます。「こんにゃくゼリーやもち」は子どもや老人に与える場合には1人で食べないよう注意してください。

 このほか小児の誤飲事故では豆菓子が有名です。しかしこれはほとんど口に物を入れながら走り回って転倒するときによく起きるものです。口に物を入れたまま走らせたりしないようにしましょう。さらに転倒事故によるものでは綿菓子の箸を咽喉に突き刺して死亡した例が有名です。これ等も容易に想像でき、予防できる事故だと思っています。
会社が製造中止しても同じような事故が起こると思います。ニュースとなった事故は覚えておくしかありません。そのためにはテレビ・携帯電話やパソコンからのみニュースソースとするのではなく、新聞などを読むようにしましょう。

 この事故でお子さんを亡くしたご遺族の悲しみをお母さん方には経験させたくはありません。二度と起きないよう注意しましょう。

 

小児科医の話題27 08.09.22

 ずいぶん涼しくなってきました。寒河江や谷地のお祭りが終わると稲刈りのシーズンで農家の方は忙しくなってきます。稲刈りが終わればリンゴ、ラ・フランスの収穫、キノコの採取と秋の味覚がたくさん出てきます。台風などで被害のないことを祈っています。

 国内での米の偽装、中国での育児ミルクへのメラミン添加。自己の利益を追い求めるために犠牲者が出ています。倫理観をキチンともてなくなったのは本当に悲しいことです。特に育児用ミルクへのメラミン添加は大きな問題です。これから中国国内ばかりではなく輸出国への影響も出てくることでしょう。日本でも私が小さな時にヒ素ミルク事件が起きています。また10年近く前に育児用ミルクに好酸菌が混入していることが分かっていても人体への影響はないと主張して回収を行なわなかったメーカーがありました。全国の産科・小児科医療機関では当然そのメーカーのミルクをボイコットしました。これもまだ記憶に新しいところです。工業製品は大量に作り、大量に販売しますので被害が非常に大きくなります。

このミルクへの混入事件を防ぐ手立ては母乳育児しかありません。最近どの産科・小児科の医療機関では母乳育児に力を入れているのは、赤ちゃんとのコミュニケーション作り・愛着形成ばかりではなく、このような混入事故を予防できるからです。しかし母乳育児でも問題はあります。お母さんの取る食事・嗜好品などによって胎内でアレルゲンの感作が起こる場合があることです。したがって母乳育児を行ないたいと考えているお母さん方にはできるだけ偏った食事をしないようお願いしたいと思っています。

朝日新聞であたかも母乳育児で低血糖を起こし障害を残したお子さんがいると報道されました。新生児を扱う医療機関ではnot well being (なんかヘンだな?)というレベルですぐに血糖や他の検査を行なっているところが多いので心配しなくともよいと考えています。出産後母児同室で過ごす施設が増えていますので、心配なことがあれば出産施設のスタッフに必ず相談することです。小児科医が新生児を管理している施設では毎日ミーティングを行なっています。
出産時・退院時・退院後1週間後・1ヶ月健診は大切です。特に退院後1週間後の健診は乳房管理と赤ちゃんの体重増加そして家族(お母さん方)の心配などにキチンと対応してあげないといけません。おっぱい外来(退院後1週後健診)を行なっている施設であればできるだけ健診をしていただきましょう。

山辺町では4ヶ月健診時に母乳の会のスタッフがボランティアで母乳育児相談室を開いております。是非ご利用ください。

小児科医の話題26 08.09.09

 8月29日午後より医院を休診にして日本外来小児科学会に出席のため名古屋に行ってきました。前日は岡崎市が大雨で全戸避難勧告が出されていけるかどうか危ぶまれましたが何とかたどり着き、各地の小児科医と話をしてきました。学会は種々のワークショップと演題発表にわかれており興味のある分野に・・・・。
初日は「抱っこを科学する」。どのようなスタイルでどのようなところに注意して抱っこするのか。ようやく母乳育児一辺倒のところから乳幼児期の抱っこというところに視点が向いてきているところに新鮮さを感じました。WSリーダーの伊藤智子先生(広島県)と話させていただき、そのうち山形県内でも抱っこについて考える勉強会があってもよいなあという思いを強くしました。
午後からはHibワクチンのミニシンポジウムに登録しておりましたが、ランチオンセミナーで概ねの所を聞いていましたこと、前日の移動と初日に行なった演題発表の疲れと二日目のWS「咳を科学する」の疾患各論hMPV・肺炎マイコプラズマ感染症の症状解析の発表原稿を再度見直すためにドタキャンをしてしまいました。夜間中標津の友人から電話が入り彼らと合流し全国の小児科医仲間と夜を楽しんでまいりました。
二日目は朝から雨の中会場へ。抗菌薬適正使用で有名な諸先生と「咳を科学する」のWSへ。如何に小児科医が鼻汁・鼻腔粘膜所見という大事な診療ポイントをおさえていないかを指摘され、自分では診ているつもりでも視点を変えて診察を行なうことの大切さを学んできました。各論では乳幼児期のRSV感染症の専門家植村先生の治療上のポイント。治療の実態について教えていただきました。また太田先生から百日咳の実態と診療・診断、鈴江先生からは咳の観察表の利用の実態と問題点を教えていただきました。 各個人個人診療スタイルは異なりますが、お互いに良いところを学びあいこれからの診療に生かしていきたいと考えています。
休診でご迷惑をおかけしましたが、子ども達へ還元すべきものだと思いますのでお許しください。

小児科医の話題25 08.08.24

 小児科医として共感を覚えるのは正しい診断をつけて必要なものだけを投薬すること。小児医療では何もしないことも大事であるという心がけです。
夏カゼが流行していることをカゼ情報にアップしましたが、まさに夏カゼの診断が正しければ鎮痛解熱剤のみでよいのです。よくトランサミンを投与されているお子さんを見かけますが、トランサミンはもともと内科・耳鼻科の先生方で咽喉の痛み・咽喉の炎症を取る目的で使用されているようですが、小児科では鎮痛解熱剤だけで充分なはずです。ウイルス性疾患は重症な合併症を起こすような疾患(例えばインフルエンザ・ヘルペスウイルスなど)では治療上必要ですが、もともと自然治癒する疾患です。本当に効くの?小児の治験はできているのでしょうか?高熱ですが2〜3日で解熱することがわかっている疾患に何故必要なのか理解できない私がおかしいのでしょうか。
薬を飲まないと夏カゼはよくならない。このように考えるお母さんが増えたら誰がメリットを享受するのでしょうか。薬側と医師側が当然大きなメリットを受けることになると思います。それよりもキチンと説明しお母さん方に病気の理解をしていただくほうがズーッと子育てする力をつけることになるのですが・・・・。
子どもにお薬を飲ませるたび苦労したことはありませんか?不必要な薬を飲ませる苦労は本当に無駄なことです。

小児科医の話題24 08.08.02
 夏休みは入り毎日が子ども達にとっては楽しい日々のことだと思いますが、生活のリズムだけはキチンとつけてください。できるだけテレビ・ビデオ・ゲームから離れて外遊びを行なうようにしましょう。
先日行なわれた大寺小学校のノーテレビデー・ノーゲームデーで子ども達は何を望んでいたか。家族は何をしてあげたいと思っていたか。基本的にはできるだけの家族行動(スポーツ・トランプなど)でした。非常に健全な回答でしたが、テレビ・ゲーム・携帯電話・パソコンなどはほとんど一人で行なうものですから、人とのコミュニケーションがうまくとれないことに思いをはせた人はわずかでした。
子ども達にテレビ・ゲームなどパーソナルなメディアとの付き合いを中止させようとしても高学年以上では逆に部屋への閉じこもりなど逆効果であるばかりか家族内人間関係が壊れる場合さえあることを知って欲しいのです。したがってできるだけ早めにメディアリテラシイをご家族で考えていただくことが必要です。
最近ちょっとしたお手伝いはできるが炊事・掃除などができないお子さんが増えていることに気付きます。この子達が家庭を巣立ってひとりで生活をしていくには大変な苦労があるだろうと思います。ぜひこの夏休み中に一緒に炊事場に立ち子どもに仕事を任せて見守る・待つことを行なってみましょう。何事も子どもを信頼し任せて経験させてやることが大事です。失敗してもよい。これがよい経験になって感謝されることにつながる。自己肯定感を高く保つよう子ども達に接したいものです。
小児科医の話題23 08.07.17
■お母さんの想像する力と子育て力
子育てする時に周りの人に色々相談する場合が数多くあります。しかしいつも周囲の人のアドバイスが適格だとは誰も保障できません。そんな時はどうしましょうか?
例えば1 解熱剤は何度だったら使用できるのですか?
答え 38.5度になったら使用しましょう。・・・本当ですか?
解熱剤は鎮痛解熱剤という分類の薬ですから鎮痛剤としても使用します。お母さん方の頭痛薬・生理痛薬などにもよく使用されています。その時に発熱していることはほとんどないのに利用しているのです。したがって中耳炎で耳が痛いというときにもよく使用します。
38.4度なのですが解熱剤を使用してよいでしょうか?
こういう疑問で真夜中に電話をかけてくださるお母さんがおられます。かかりつけ医がそのように説明しているのでしょう。それならそのかかりつけ医に電話をするのが筋ではないですか?あわてないことです。そのような説明をしていない医療機関の医師に真夜中電話をすることはないはずです。基本的に体温計での測定では高くも出るし低く出ることもしばしばです。したがってお母さんがお子さんの状態をどのように見ているかによって異なってきます。心配なら使用してもよいと思われます。0.1度で何処が異なるのでしょう。
例えば2 ヘルパンギーナや手足口病の口内炎のときは?
ある小児科医がある保育所の先生のお子さんに口内塗布用に軟膏を出していました。そこで保育所の先生は軟膏をもらって塗ってくださいとお母さん方に伝えていたことがありました。ヘルパンギーナや手足口病の水泡形成は軟口蓋にできるため塗布することは困難で、咽頭反射を起こしやすいので塗布はできないはずです。また塗布できても潰瘍を形成しているので塗布されても痛がります。ちょっとしたことですができないような処置をしなさいという小児科医も現実にはおられるようです。でもお母さんがチョット想像していただければわかりそうなものではないですか?
食べ物はどんなものを与えれば良いの?・・・・答えはお母さんがこの子だったらどんなものを食べたいの?と逆に考えれば答えはおのずと出てくるものなのです。
保育所へはいつからなら行くことができますか?
基本的にはウイルスが飛沫感染しないような時期(涎がすくなうなってから)になったらといえばよいのでしょうが、手足口病やヘルパンギーナの口腔内潰瘍は浅いためそれほど涎がひどくはなりません。そのため食べられることができれば通園可としておられる先生が多いと思います。お母さんが保育所の職員なら「食べられないお子さん」を預かれますか?そのことを想像していただければご理解いただけると思います。
小児科医の話題22 08.07.07
■ノーテレビディー・ノーゲームディー
各地の学校保健委員会でNo TV day , No game dayの取り組みが紹介されてきます。先日鈴鹿市のある小児科の先生が取り組まれ、学校全体で夏休みの期間に数日やってみたいというご家族が何組か出てきていることを報告していました。また宮城県利府町では全体で取り組んでみて3〜4割のご家庭で行われたとある新聞に取り上げられています。マスコミの論調は3〜4割しか取り組めなかったと非常に否定的だったようですが、3〜4割ものご家庭で取り組んだという実績は非常に価値のあることだと小児科医の間で話題になりました。
ところで子ども達の生活でのTVやgameは現実にはどのようになっているのか?
ある小学校6年生へのアンケートでは5年生に比し睡眠時間が減少し、午前中に時々眠くなるという子が増えてきます。これはスポーツ少年団の夜間練習等で遅くなったり、夕食後ご家族と一緒に買い物(コンビニやスーパー等)に出かけたり、上のお子さんと一緒にTVなどを見るチャンスが増えるからだと考えられます。
此処で指摘しておきたいのは「子どもの生活時間と大人の生活時間が異なること」これを子ども達に小さいうちから教えておくことの重要性です。お母さん。子どもは大人とお友達ではないのです。
■TV・gameのよいところは?
面白い・楽しい・クリアすることでの達成感を得られる! 暇つぶしになる・情報が得られる・会話の話題になるなどのメリットを指摘するお子さんが多かったようです。
悪い点
眼に悪い・時間を忘れてしまう・起きられなくなる・外で遊ばなくなったなどの意見が
多いようです。 しかし問題は子ども達にはコミュニケーション能力・相手に伝えたたり相手を理解しようとする努力が不足する可能性について気付いていないのが現実のようです。 ご家族の努力で何とか休日にでもノーテレビディー・ノーゲームデーを実際に取り組んでみませんか?
小児科医の話題21 08.06.20
■微量採血針による検査
先日ある内科医院で微量採血針を使いまわして肝炎の集団発生が起きたことが報道されました。厚生省はこのことを重くみて、保健所などを通じて医療機関の採血状況を確認しています。この微量採血針は一般に糖尿病の患者さんが毎日血糖を測定する時にわずかな血液を採取する時に用いるものです。原則的には患者さん1名が血液採取時に毎回針を交換して使用することを前提にして開発されてきたものです。しかしその内科医院では針を交換しないで不特定多数の患者さんに使用したために、他の患者さんにウイルス性肝炎を引き起こしたものと考えられています。
今回の騒動で問題になったのは類似したことが起きる可能性が非常に高いからと考えられます。当医院では採血は点滴確保時の採血あるいは18Gの採血針を用いて耳朶や足底を穿刺して採取しています。したがって肝炎ウイルスの感染は起こりえないと考えています。
厚生省が問題視しているのは個人用の採血器具を不特定多数の人で使用することに対してですので、同じような採血器具を使用している医療機関を調査しているのです。県内の医療機関では採血器具を使用していても基本的には針を毎回交換していると考えられますので心配は要らないと思います。事実山形県感染症サーベーランス事業での報告でもウイルス性肝炎が異常に多く発生しているという報告はありません。
■プールでの日焼け止めは?
暑くなるとプールに入りたいと思うのは私だけでしょうか?厚生省や皮膚科学会では日焼け予防を提唱しています。しかし現実には公的プールでは日焼け止めの使用は禁止です。九州では学校のプールでの使用を認めており、東北では禁止するというのはどうかな?と感じています。ただし九州の皮膚科の先生のお話ではオイルタイプはプーの掃除の時に滑って危険であると同時になかなか落ちないということです。それに比しクリームタイプはプールに付着する量が少なく掃除も楽であるとのこと。若しお使いになるのでしたらクーリームタイプをご使用ください。
またそのような日焼け対策より大事なことは炎天下ではバスタオルで身体を覆うことです。
小児科医の話題20 08.06.06
■学校・幼稚園の内科健診
学校などでの健診がたけなわです。とにかく6月まで終了しなければなりません。その後健診結果を(医療が必要なのか不必要なのかまた生活上の注意点など)ご家族に報告しています。問題なのは肥満・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎などご家族も当に知っていることなのに医療機関を受診するよう勧告する養護教諭の多いことである。医療機関を受診したところで「様子を見ましょう」とか「症状が悪化するようなら再来してください」といわれることが多いと思います。したがって本当に医療が必要な場合にのみ医療機関受診を勧めるように校医をしている学校にはお話をしています。スポ少で柔道をやっていて体が大きいほど良いといわれ一生懸命に食べているお子さんがいます。そのことは家族が一番知っているはずなのです。また山形大学耳鼻咽喉科でまとめたアレルギー性鼻炎はプールに入ると悪化する?に対して、悪化しないと患児たちがアンケートに答えているという。そのようなことが言われているのに何故それほど悪化していない子ども達が医療機関を受診しなくてはならないのでしょう。個人的には不必要な受診をしないよう校医は考えるべきだと思っています。 幼稚園児の内科健診では問題になっている「手を焼くお子さん・育てにくいお子さん(所謂多動・学習障害児など)」をスクリーニングして臨床心理士に相談し、さらに子育てを行なう時の注意点を一緒に考えてゆきたいと思っています。したがってこのスクリーニングで引っかかった場合には3歳児健診で再度健診を行なっていただくように町に相談しています。小学校入学前に突然特別支援学級へといわれてのご家族の負担・不安が少しでも少なくなるようにと思っています。全国には自治体で5歳児健診としてスクリーニング検査を行なっているところもあり、少しでも子どもにメリットがあるようにと考えています。
■学校保健委員会
小学校では毎年2回学校保健委員会が開かれます。今年も7月に行なわれますが、大寺小学校では子ども達に「自分の時間を大切に」というテーマで子ども・ご父兄・教員と一緒に考えていこうと思っています。特にメディアリテラシーについて(TV/Video/Game)なども含めたいと思っています。昔は子どもの時間は終わったから早く寝なさいということで子ども達は納得して寝ました。しかし最近のお子さんは何故大人がよくて子どもは駄目なのかと反論してきます。その点について一緒に子ども達と考えてみましょう。 学校保健委員会で子ども達と一緒に考えてみる。その点が教員やご父兄にとって必要なのでしょう。
■プールでの日焼け止めの使用について
厚生省や皮膚科学会から日焼け止めの使用について勧告が出されていますが、まだ山辺町では使用が認められておりません。ゴーグルについても同じです。山形県全体で意思統一しないといけない問題と思っています。これについては県の教育委員会がキチンとした説明責任があると思います。
小児科医の話題19 08.05.23
 昨日天童東村山郡医師会主催の特定健診(所謂メタボ健診)の講義を聞きに行った。特定健診を行なうにあたって医療機関の設備スペース・指導内容・事務的コストとその煩雑さが医療機関側の不参加の大きな理由となっていることに気付いた。健診を行なう主体は保険者(支払い基金)側であるが、地域に根ざして健診を受けやすくしなければならないことが大前提だったのですが、地域の医師たちがとてもこなせそうな内容でもなく多くの医師が不参加になる可能性も出てきている。山辺町のような小さな自治体では山形市のような大きな地域の医療機関に外注すればよいという意見もあったが、はたしてそれで健診率が上がるのであろうか?したがってどうしても地域の診療所医師の協力が必要なのである。
これから地域医師クラブと自治体の話し合いが持たれるようであるが、はっきりとしたビジョンを共有しそれを目標として活動を行なっていくべきなのであろう。医療機関ができることと自治体ができることを協議しお互いにその得意分野を補う形でこの特定健診を遂行できることを願っている。
ところで山形県医療計画によると山辺町で問題になっていることは「脳血管障害」であるという。多くの町民が「所謂脳卒中」で入院・リハビリ・在宅医療にまわされている現実を知った。在宅にまわされ介護するご家族の大変さを考えると、この特定健診は大きなメリットをもたす可能性がある。それは脳血管障害や虚血性疾患の多くは糖尿病などを基礎疾患とする動脈硬化が主な原因であるからである。したがって多くの町民がこの特定健診を受けられるように医師会担当医師としてまとめてゆきたいと考えている。

今後地区の公民館主催の健康教室の開催・特定健診の持つ意味など住民への啓発運動も考えていかなければならないと思っています。山辺町の医師として最初は大変でしょうが「特定健診(メタボ健診)」を何とか軌道に乗せていきたいと考えています。あくまでも住民を守るために、自治体と手を取り合っていくつもりです。しかし住民の皆さんの御協力が一番大切なのです。何卒「特定健診」が始まったら「特定健診」を積極的に受けてください。
小児科医の話題18 08.05.09

母乳育児のお話;母乳育児で大切なことは母乳をいかに上手にくわえさせるか(ラッチオン)!である。これは出産施設により大きく異なります。したがって母乳育児を行なう時は助産師の指導通りにはじめは行なってください。また哺乳時の母親の姿勢は前かがみにならないように心がけましょう。

 母乳で育てられなかったことで自分を責める必要はありません。人それぞれで母乳の出る人も出にくい人もおられるからです。

山形県立中央病院で「母乳なんでもQ&Aフォーラム」が開かれます。

 主催:山形県母乳育児を応援する会
日時:平成20年6月14日(土)10時〜12時
場所:山形県立中央病院2階 講堂(入退院入り口より入る)
参加費:500円
内容:1)これから生まれる赤ちゃんを母乳で育てたい妊婦さん
2)母乳育児を行なっているが心配なお母さん・・・次の妊娠をどう考えればよいの?
3)孫が母乳育児ですがミルクでないと?と不安なおばあちゃん
4)母乳で育てるとどんなよいことがあるの?
5)母乳だけで大丈夫?量は足りているの?
6)仕事を始めるんだけどおっぱいはどうする?
7)カゼをひいたけどお薬は飲んでよいの?
色々な心配事に新生児科医・小児科医・産科医・助産師・保健師が皆さんの相談にのります。赤ちゃんやお子さんも連れきてかまいません。
母乳の最新の知識などミニ講義もあります。ぜひご参加ください。予約は必要ありません。当医院に案内状がありますのでお持ちください。

インフルエンザ桿菌ワクチン(Hibワクチン)について
―Hibワクチン予約開始について―
「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」などが活発に国会議員に働きかけており、最近テレビでもよく取り上げられるワクチンです。今日もあるお母さんから「Hibワクチンは接種できますか?」というご質問を受けました。
Hibワクチンは延期に延期を重ねてどうも9月頃より発売されるようです。当医院でも「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」への協力や酒田市議会の佐藤先生に山形県内の細菌性髄膜炎の発生状況などを連絡してきました。当然Hibワクチンを行ないますが、コスト

がネックになりそうです。接種費用4回(0歳に3回,1年後に1回接種)で3〜4万円くらいになりそうです。また現在まで同時接種ができない事になってきましたが、三種混合ワクチンと同時に接種することになります。お母さん方には慣れないことばかりでしょうが、できるだけHibワクチンを接種することをお勧めいたします。
Hibワクチンで細菌性髄膜炎の頻度は激減いたしますし、喉頭蓋炎など緊急性の高く診断が困難な疾患から子どもを守ります(Hib感染は白血球が正常で炎症マーカーも正常であることが多いのです)。
小児科医は白血球が発熱の割りに低くしかも炎症マーカーが発熱した時間から考えて多い場合にHib感染を考えて行動を起こします。しかしこれでも防ぐことはできません。なぜならHibは抗菌剤に対して耐性(薬が効かない)が生じていることが多いからです。
このHib感染からお子さんを守るのは容易なことではありません。言い換えれば「ワクチンしか手立てがない」といっても過言ではありません。
もうそろそろワクチン希望者の予約を開始する予定です。

小児科医の話題17 08.04.19
 幼稚園・保育所・小学校で新しい生活が始まりましたが慣れたでしょうか?この時期はご家族に子どもがよく話しかけるようになります。幼稚園での遊び・お友達・通学時のことたくさん話しても、話しても時間が足りないものです。できるだけ夕食時にはテレビ・ビデオはかけないようにお願いいたします。食事の時に子どもは色々なことを伝えようとします。オーム返しでもよいですから、相槌をうったりしながらお話を聞いてみましょう。子ども達はどんなことを御家族に伝えてくれるでしょうか?
新しく幼稚園に入られたお子さんはよくカゼをひくといわれます。その理由は家族だけの小さな集団生活から多くの家族をバックにする大きな集団に変化するためです。カゼをひくのが嫌だといってもいずれは罹患することになります。しかしワクチンで防ぐことのできる水痘・オタフク風邪についてはワクチンを接種しておくことが大事なことだと考えています。入園した今の時期にワクチンを接種しておいてください。
今年から医療機関ではおおよそ5分間は再診でも時間をとって患者さんへのお話をしましょうということになっています(医療機関での無診察処方が問題となってきます)。少し混雑するかもしれませんがその点を御理解していただければ幸いです。
小児科医の話題16 08.04.01
 麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)2期3期4期のお知らせ
本年度から5年間で麻疹の流行を防ぐために年長さん・中学1年生・高校3年生の4月よりMRワクチンを1年以内に接種することになりました。山辺町と寒河江市の中学1年生は学校で集団接種を行ないますが、高校3年生と年長さんは個別接種となります。詳細は個別通知が配布されていると思いますので必ずお読みください。これを逃すとすべて個人接種となり、個人で接種すると医療機関で異なりますが8000~10000円位かかると思います。高校を卒業しても専門学校や大学の入学時にワクチン接種を行なっていない場合当然ワクチン接種あるいは抗体価測定を行なうように勧告されると考えてください。その為接種を行なったという記録も大事に保存する必要があります。必ず母子手帳に記載していただきましょう。もし紛失した場合接種証明書を渡しますので大事に保存してください。
接種時期ですが毎年のように関東地方での流行がみられます(今年も神奈川県内で大きな流行)ので、GW前に接種を行なうようにしてください。学生が帰省するときに山形県内に持ち込む可能性と家族旅行で(ディズニーランドなど)感染する可能性があるためです。成人30歳前後の方も未接種の場合接種しておくほうがよいでしょう。
誤飲について。先日農薬を吸い込んで頭痛を訴えたお子さんがいました。春になると農作業の準備などで小屋に入ってしまうお子さんもおられます。農薬の管理には充分気をつけてください。
小児科学会からの傷害注意速報

1)ミルトンによる喉頭狭窄 9ヶ月 男児
哺乳瓶とミルトンを流しに置いておいた。女児が哺乳瓶で遊んでいて男児にミルトンのサンプルを口腔内に入れた。口腔内洗浄を行なったが後日呼吸困難を起こし咽頭下部・喉頭部の狭窄を起こして手術となった。
コメント
イ)口に入るサイズの物は上の子が乳児の口に入れることはよくある
ロ)認知症の人がタブレットをドロップと間違えて飲み込むこともありうる
ハ)粘膜障害を起こした物質が何であるのか同定する必要がある。物質を除くか濃度を下げる必要がある。
二)幼児が開けにくいパッケージする必要がある。

2)犬による咬傷(右精巣粉砕) 4ヶ月 男児
昼寝をさせていて保護者が離れた隙に犬に外陰部をかまれた。顔面蒼白外陰部からの出血。緊急に手術(精巣摘出術)。
コメント
イ)動物が食べている時や争っている時に手を出すと咬まれることが多い。
ロ)動物が嫌がることをして咬まれる子が多い。
ハ)この子の場合オムツの尿の臭いに反応した可能性が強い。
二)室内犬を飼っている家庭が増加しており乳児と動物が同じ平面で接触状況は避ける必要がある。

3)短時間に腐食が進行したリチウムボタン電池(山口県地方会) 2歳女児
遊んでいて何かを飲み込んだ。胸部レ線で円形異物を確認し、全身麻酔かで内視鏡的に除去した。数時間しか経っていないが食道は全周にわたって腐食し電池と強く癒着していた。嚥下障害を来たし1ヶ月以上の入院が必要だった。

4)複数個の磁石誤飲による消化管穿孔(栃木県地方会) 5歳女児
4個の磁石を飲み込み7病日に精査。磁石同士がくっつき、消化管穿孔を起こしていた。挟まれた消化管は壊死・穿孔していた。複数個の磁石は高率に消化管穿孔やイレウスを起こしやすい異物である。

小児科医の話題15 08.03.13
 母乳育児と母乳育児相談室設置について
先日からある小児科医のメールで母乳育児について話題提供がありました。母親の大部分が母乳育児を行ないたいができていない現実について、ある小児科医はすぐに体重増加率が悪いとすぐ調整乳を足すように指示することが原因であると述べ、ある小児科医は何故母乳育児が困難であるのかその原因を考えてみようと意見であった。母乳論者は母乳・母乳と連呼するが母親にとって心理的負担が多いのであればそれも考慮に入れて調整乳を与えてみることも必要である。ただ闇雲に調整乳を足してやればよいと言う考えに同調できない意見が多いようであった。
調整乳を作る時の温度は何度が良いのか?
昨年厚生省より通達があり70度以上のお湯で調整乳を作り体温くらいまで冷まして使用することになっている。理由はWHOの報告によれば調整乳の粉は無菌ではない。エンテロバクターサカザキという菌による髄膜炎の報告があり調整乳の作り方を通達として出した経緯がある。今年の通達では調整乳の細菌汚染については記載されない方向であるという。調整乳の安全はメーカーが保障しているが、現実的には森永ヒ素ミルク事件(絵本の「長谷川君きらいや」など)、雪印の好酸菌混入ミルクなどメーカーでも予測できないことが起こっていました。一応メーカーがしっかりしていれば問題なく安全なものとして考えてよいのでしょう。但し国内では販売されていないがある国のミルクについては問題があるかもしれない。
調整乳でも加水分解ミルクなど大きな利点を持つミルクが市販されるようになり食事アレルギーのお子さんには朗報であることに変わりはない。子どもによって必要な子とそうではない子がいることは事実です。母乳・母乳と母親を責めることはせずにできれば母乳育児を楽しめる環境をどのようにして作っていくかが問われているのである。母乳のよさは誰でもわかっているのであるが、できない時にどうしてあげるのかを考える必要があるのでしょう。
 山辺町での母乳育児相談室設置について
最近山形市内に助産婦さんが開業し、母乳育児を進めているところがあると言う。また各病院では助産師が「おっぱい外来」など積極的に行なっています。少しでも母乳育児を行ないたい母親のために相談窓口が開かれていることをお母さん方に知っていただきたいと思います。山辺町では今年度から毎月1回第1水曜日に行なわれる3~4ヶ月健診時に山形県母乳の会のスタッフである助産師による母乳相談室が設けられます。相談したいお母さん方の来場を待っています(町の健診では託児スタッフもいます)。山辺町外のお母さん方も利用できるようにお願いしておりますので心配せずに来てください。できれば山辺こどもクリニック(電話023-664-8488)にご一報ください。
小児科医の話題14 08.02.25
 フジテレビ ニュース に木村太郎氏の発言に物申す
前回麻疹・風疹ワクチンを受けるようお願いいたしました。しかしFNN(フジテレビニュース)サクランボテレビSAYで木村太郎さんが「実際の流行で死亡する患者さんよりワクチンでの死亡者が多い」という発言をしたために現在小児科医が彼に対する謝罪を求め抗議行動を起こしております。おそらく謝罪もせずにホッカムリなんでしょう。この影響で麻疹ワクチンを受けたくないというご家族も現れ始めました。
麻疹の輸出国として日本が責められているからワクチンを受けるべきであるという彼の意見は全く意味を持ちません。麻疹ワクチンを受けないために現在も中学生〜大学生が罹患してひどい思いをしている現実や学校が休校となってしまっている現実を彼はどのように考えているのでしょうか?小さいお子さんがワクチンを行なっているために小さな子ども達の流行は起きてはいません。したがって現在では子どもが麻疹で死亡するということは非常にまれなことになっているのです。
麻疹を軽く見てはいけません。公共広告機構・ユニセフで何故ワクチンの広告をしているのでしょうか?昔から麻疹は「命定め」としての役割をしてきました。麻疹で死んでしまうのは子どもが弱かったから死んだのであるというあきらめの境地を作り出していたのです。何度も書きますが麻疹肺炎ばかりでなく脳症・遅発性脳炎(SSPE)と呼ばれる脳疾患を引き起こしてきます。本当に悲惨な感染症であることを理解してください。
木村太郎氏は公的な放送網で大々的に発言をしているのですから彼の意見は当然重いものです。放送網ばかりではなく新聞網も利用して彼あるいはフジテレビは謝罪すべきです。
麻疹ワクチンは必ず受けましょう!
小児科医の話題13 08.02.13
 麻痺の再流行
昨年暮れより麻疹の流行が10・20代の方に起きています。現在神奈川県・秋田県・札幌市で数多くの患者さんの報告があります。昨年春にも起きたばかりなのですが何故このように再流行するのでしょうか。その原因は麻疹ワクチンの未接種者が多い以外に、麻疹の流行がほとんど起きなくなったために抵抗力が弱まってきていることがあります。しかしアレだけ騒がれても全くワクチンを接種しようとしない人々に問題があるのでしょう。平成20年度から高校3年生の年齢(現在の2年生)と中学1年生の年齢(現在の小学6年生)で麻疹風疹混合ワクチンの接種が定期接種となり全員が無料で接種できるようになります。お子さんの言いなりにならないで必ず接種していただきたいと考えています。もし接種しない場合には専門学校や大学での実習に支障をきたすことも出てくることは当然です。実習先で麻疹を発症するリスクのある人の場合、当然実習を認めないことは昨年度の様子から明らかです。事実私が園医・校医をしている施設ではすべて確認してきました。また幼稚園でも若い先生方の抗体価を測定し感染リスクが少ないことを確認しています。そのようにしてまで子ども達を麻疹から守りたいのです。
麻疹に罹患した場合麻疹そのものによる肺炎や脳炎など重症化して亡くなられる場合もあります。また数年経ってから進行性の脳障害を起こすこともあります。さらに現在忘れ去られている結核ですが、最近集団発生したという地域も山形県内では報告されています。麻疹では免疫が低下するために結核にかかりやすくなるといわれており注意が必要です。私自身麻疹後に治らない肺炎のお子さんが結核だったということも経験しています。
うつさない努力とうつされない努力 麻疹ではこの努力が必要なのです。
 インフルエンザの流行について
山辺町内のインフルエンザAソ連型の流行はほぼ終わりに近づいています。新潟県内ではインフルエンザB型の報告、仙台市内ではインフルエンザA香港型の報告もみられまだ安心できる状況ではありません。今年もダラダラとインフルエンザの流行が長引くかもしれません。
その他仙台で多く分離されているライノウイルスと思われる方が多いようです。一般にライノウイルス感染症は秋と春に多くみられます。発熱はそれほどでもなく倦怠感が強く、鼻汁がたくさん出てすぐ詰まってしまい副鼻腔炎を起こすのがライノウイルスの特徴です。予防にはやはりマスクと部屋の湿度の確保そして入浴時に換気扇をかけずゆっくり入浴し、風呂から上がったときに鼻をかんでください。
小児科医の話題12 08.01.31
 東京マラソン
2月17日東京都庁を出発点にして9時10分スタート。7時間にわたって走る東京マラソンが開催されます。フルマラソンと10kmの二つのコースが準備され約12000人がエントリーしています。出場するには抽選で選ばれなければなりません。これが第1の難関です。
この東京マラソンに現在わかっているだけで小児科医が10kmコースに2名、フルマラソンに2名参加します。その応援に全国から(北海道中標津から沖縄北谷村まで)の小児科医が集まります。
これらの小児科医の中には「子どもとの約束を守るために」走る者もいます。彼は家族を大事にし、夏には大山登山を行なったりしていました。しかし昨年秋御次男をご病気で失ってしまいました。この前後に私は彼と他3名の小児科医と共に北海道に行き、ある小学校で講演を行なっています。彼の講演は「大人だから夢を持とう。そしてそれをかなえよう」という内容でした。おそらくこの時に御次男と東京マラソンを走る約束をしていたのでしょう。しかしそれがかなわず。御次男は天から父親の努力と約束を守る姿を見てくれるのでしょう。
私たちは現在彼に内緒で応援に出かけることを計画しています。16日夜東京の浅草にある柴田小児科医院に集まり、応援する場所とグループ分けを行い、路上での応援を行なう。最後のゴールでは麻疹撲滅を願った「ワクチンで麻疹を・・・・」という旗を持った崎山先生のグループと合流して走ってきた小児科医スタッフを讃える。こんなことを考えています。
ヒトとの出会いは人間を変えてしまう。彼らは私よりやや若い世代です。しかし彼らと出会うことで大きなものを得ました。「自分の気持ちを相手に伝えることの大切さ」と「相手の話を聴こうとする努力と共感」これらは彼らにいただいた大きなプレゼントです。これからも彼らを大事にしていきたいと思います。
東京マラソンの応援ために皆さんに御迷惑をおかけしますが、我が友の「子どもとの約束」を果たすところを一目みるためにお許しください。
小児科医の話題11 08.01.15

 インフルエンザが流行してきました。インフルエンザと抗インフルエンザ薬の問題についてマスコミ等で報道されていますが、基本的に10歳以上20歳未満には抗インフルエンザ薬は処方できないようです。48時間は抗インフルエンザ薬を投与する・しないにかかわらずご家族が面倒みてくださるようお願いいたします。
外来でインフルエンザと診断された場合抗インフルエンザ薬の投与基準・神経症状の発現率・インフルエンザ型ごとの有効率とその差が出てくる原因について説明した後で服薬させるかどうかについてご検討ください。
 インフルエンザの合併症
中枢神経合併症
脳症;発症早期の急速な意識障害・けいれんを中心とした症状
Reye症候群;回復期に嘔吐などの消化器症状・意識障害を起こすもの。

筋炎;B型に多く見られる。まれにミオグロビン尿症などで腎機能障害をおこしうる

 潜伏期 2日

 症状;咳→発熱→鼻汁のパターンが多い。しかしアレルギー性鼻炎があると咳と鼻汁が同時に出ることが多い。

 診断;イムノクロマト法を利用した迅速診断。
基準は鼻咽腔吸引物を利用する。12時間後では90%が診断可能だといわれています。しかし鼻をかんだ後の鼻汁・咽頭拭い液では感度が当然落ちてきます。当医院では基準を守って診断をしています(誤診を防ぐため)。

 治療;基本的には投与しやすいタミフルの投与。妊娠の可能性の高い年齢ではそのまま経過をみることもあるいは吸入薬であるリレンザ(体内移行率が少ない)を使用します。妊娠境界期でタミフルを飲まれた方がおりますが、全く健康なお子さんとして育っております。市販約は使用しないでください。解熱剤が入っていますので体温が上昇せずインフルエンザを見逃す危険性があります。医療機関を受診するようにしたほうがよいと思います。

 感染源となる期間;タミフルなどの抗インフルエンザ薬を飲まれた方でも5日は感染源となりうるという報告があります。せめて1週間はマスク着用お願いいたします。

 予防;ウイルスの進入門戸は鼻・口・眼です。従ってマスクは鼻と口すべてを覆う立体型マスク(花粉症用)を使用してください。医療機関・ショッピングセンター・列車・バスなど人ごみにはできるだけマスクをしましょう。
インフルエンザウイルスは界面活性剤で失活します。手洗いは石鹸で洗うようにします。

 部屋の乾燥はウイルスが飛散しやすくなります。湿度を保ちましょう。またうがいはイソジンなどを用いずとも水道水でかまいません。

 流行を知るには
通園施設でインフルエンザが発生した時には広報活動を行なうと思います。急激に通園施設や学校で発熱して帰宅する子が多くなります。またクラスで3名以上発熱と咳など同じ症状で欠席した場合にはインフルエンザなどの感染性疾患が流行していると考えてください。

インフルエンザは現在Aソ連型が多く分離されています。毎年流行していたA香港型と比較して症状が軽いため無理をしないようご注意ください。また全国的にはA香港型が分離されたりB山形系やBビクトリア系が分離されたりしてもいますので今後どのような流行をしめすのか油断できません。毎年連休明けくらいまでインフルエンザがみられますのでその点をご理解ください。

 インフルエンザと鑑別が必要な疾患は10・11月に流行したRSV感染症、11・12月に流行したhMPV感染症。また肺炎マイコプラズマがあります。これらについては絶えず迅速診断(RSV)や分離(hMPV)を通して流行地域の確認と症状パターンから鑑別することになります。

小児科医の話題10 08.01.07
 あけましておめでとうございます。年明け早々雪が舞い天気としても大変でしたが、山形市の休日診療所も数多くの患者さんで大変でした。それでも31日より少ないということでした。
休日診療所のノートから

 年末年始の小児救急診療を午前中二人診療体制で行なっても患者さんの出足が悪く効率が悪い(患者さんの来院数は10時半以降と4時以降に多い)。一人体制か午後二人体制にしたほうが良いのではないか?

 患者さんの必要な時間に診療を行なうことは大事だが、このままでは診療時間が遅くなるだけである。これが常態化すればサポート診療施設である基幹病院や休日に働いてくださるスタッフが迷惑するばかりである。この点も患者さんにご理解いただく必要がある。休日診療所を長く継続するためには医療スタッフの努力ではなんともしがたい状況になっていることをご理解いただくしかないのでしょう。

 さてこの年末年始の休日診療所の診療は午前中2名午後1名の診療体制でしたが、31日は急遽午後も2名体制で行なわれました。1月1日の急患は午前中それほどではなかったのですが、やはり駆け込み診療が多く結局5時以降も診療となっています。2日は午後2時に訪れた患者さんが約3時間待ちだったようです。この日は山形市の広報に県立中央病院・河北病院で午前中診療を行なうという情報が流れていたのですが、そのことに気付かないご家族が多かったのかもしれません。当然当医院ではその情報を公開しておりましたので年末に受診していた方はご存知だったと思います。子育てを行なっているご家族はそのような情報を把握しておくべきだろうと思います。またかかりつけ医そのものがキチンとした情報を公開しておくべきなのでしょう。これらについては今後の課題として医師会あるいは山形市小児科医の集まりで議論していくことになりそうです。とりあえずは個人が年末年始の救急体制情報を確認しておくか?あるいは子育て情報基地の広報で診療体制を取り上げていくべきだと思います。

 これらのことは県内の多くの小児科医は知っております。したがってカゼ?と感じた場合には小児科でカゼの交通整理をすべきだと考えています。お子さんがカゼをひかれたらまず小児科を受診しましょう。

小児科医の話題9 07.10.12
季節の変わり目になってカゼが増えてきました

 9月22日より鼻汁と咳の患者さんが増加しました。毎年恒例なのですが小児科医の間ではカゼが季節が変わって急に増加したと言われました。実際そうでしょうか?カゼの一般的定義は咳・鼻汁・発熱を主症状とする疾患群とされています。その点から言えば現在流行しているカゼは発熱がないだけでその通りです。したがってカゼと判断してもかまわないわけですが、カゼの主な原因はウイルスによるものであると考えている小児科医が一番多いはずです。山形県衛生研究所(全国でも有数のウイルス分離を誇っています)のウイルス分離結果を見ても呼吸器系感染と思われるウイルスではパラインフルエンザウイルスが多く分離されている程度です。この原因は呼吸器感染原因として多いとされているライノウイルスが分離できにくいウイルスだからですが、それだけで説明はできません。

 山形ではこの時期にアレルギー性鼻炎が非常に多くの子ども達に鼻汁と咳を起こしている現実があります(日本小児科医会会報第27号「低年齢児の鼻汁好酸球検査」板垣 勉)。したがって9月下旬から10月上旬までは小児科医は耳以外に鼻腔内の観察が必要なのです。
アレルギー性鼻炎を簡単に推測する方法は鼻汁に白血球のひとつである好酸球が増加しているかを検査することです。平成19年9月22日から10月9日までの当医院の鼻汁好酸球検査の陽性率は53/68(77.9%)と高率でした。陰性のほとんどは0歳児です。その理由はこの時期の原因(抗原)に感作されていないのでアレルギーを起こす抗体を持っていないからだと考えられます。
山形のアレルギー性鼻炎の多くは季節によって変化することが多く、当医院のデータからはスギ花粉症の時期・7月中旬のクーラーの使用始め・そしてこの時期に多いことがわかっています。様々な原因によって起きていると推察されますが、現在山形県衛生研究所の高橋・鈴木らはスギ花粉の他の原因を調査中です。

 これらのことは県内の多くの小児科医は知っております。したがってカゼ?と感じた場合には小児科でカゼの交通整理をすべきだと考えています。お子さんがカゼをひかれたらまず小児科を受診しましょう。

小児科医の話題8 07.10.1
 先日山形県内の小児科医が集まって、小児救急医療啓発事業についてと予防接種の広域化が行なわれてどのように変化したかの報告がなされました。その概要について書いてみます。
小児救急医療啓発事業について
 お母さん方の手に「お子さんの急病対応ガイドブック」なるものが配布されていると思います。そのテキストを用いて急病時お母さん方にどのように対処していただくかの説明する会を、各自治体で子育て支援の一環として行なわれることになりました。山辺町でも計画されているようですが・・・・。小児科医の集まりではこのテキストは使えないという意見が多く寄せられました。実際の記載の問題点については院内のこのテキストに書き込んでありますのでお読みください。
予防接種の広域化と接種率の変化

 定期予防接種をかかりつけ医で行ないたいという意向から、県内35市町村のうち18年度は24市町村、19年度は30市町村が参加して行われました(最上地域の町村だけが参加せず)。接種自治体の料金設定で行なうために差額が出ることが原因で広域化が進まない実態が明らかになりました。また接種率はそれほど低下せず、例年と同じような結果になっています。ただ自治体間の差は大きく住民の意識の差あるいは母子手帳でのチェックが医療機関で行なわれているかどうかで差が出ている印象を持ちました。
ちなみにMRワクチンT期はほぼ95%以上を保ちましたが、U期では東根市・西川町で60%台と低く、山辺町では97.1%と高い結果でした。これは小学校入学時健診での予防接種の確認と指導が徹底していないためだと考えられます。とにかく小学校に入学する前に必ず定期接種について確認しましょう。
二種混合ワクチン(DT)は全体的に低く、山辺町で73.8%でした。野外活動や部活などでまだ汚い土壌で怪我をすることもありできるだけ接種しましょう。
定期外のオタフク風邪や水痘ワクチンについて知らない方が多いという全国調査もあります。小学校入学前には未罹患者は接種しておくべきでしょう。

 その他#8000についての報告がありました。夜間救急や休日救急は心配するなら早めに受診してください。特に腹痛と嘔吐はなかなか自宅で考えていても落ち着きません。

小児科医の話題7 07.10.1
 食事を抜く・嘔吐などを自ら行なう等を行なう率が女性では読まなかった人に比べ数倍高かった。しかし男性では差がなかった。
このような論文が出てきました。このような雑誌は家庭でもよく見かけますし、ご家族で行なっている方もおられるかもしれません。最近メタボリック症候群は成人病予備軍であるとして医師会・自治体などでもその予防目的で啓発運動を行なっています。確かにその通りです。適切な食事と運動は非常に大事なことです。しかしこの論文は思春期に大きな問題(拒食)が起こりうることをも提示しています。子どもの目に触れないようなところに雑誌を置くことも必要かもしれません。
自分に自信が持てないお子さんでは、手軽に行なえるためそのような行動をとりやすい事もしっておいてください。バランスのよい食事を家族で楽しく食べたいものです。
子どもの肥満はほとんどが過剰なカロリー摂取によるものです。特におやつでパン・ラーメン・おにぎり等を食べる。夕食を待てずに夕食前に少し食べてから夕食をとる。家族が遅く帰ってきた時にその人のおかずを再度つまむ。一般に頻回に摂食する行動パターンが多いようです。肥満度が40%以上になると子どもでも脂肪肝を起こしていることが多いものです。
先日肥満ということで外来を受診なさったお子さんがおられましたが、肥満度は昨年も40%今年も40%でした。前年小児科医を受診して脂肪肝の診断を受けて今年もその診断を受けなければならない子どもの気持ちはどうでしょうか?肥満なのだからしょうがないと思われる方も多いと思いますが、この場合「お母さんも子どもさんもよく頑張ってこの程度に抑えてくれたね!」というべきだと判断して、ほめてあげることにしました。この方が子どもやお母さんがよく話を聞いてくださることが多いのです。
実際この子の場合小学1年生の時に通っていた学童保育で、おやつに焼きそばやラーメンが出ていたようですし、この頃から肥満をきたしたようです。何処に原因があるか確かめて指導しなければならないのが肥満指導です。小学生では身長がよく伸びる時期が必ず来るのでその時に向かって体重が増えないような努力をすることが大事です。子どもにダイエットを求めるのではなく体重が増加しないようにするのがコツだと思っています。その為には子どもの食生活(食事の回数など)に眼を向けていただければよいと思っています。
小児科医の話題6 07.09.11
ダイエットを扱った雑誌を思春期に多く読んだ人は5年後にどんな行動をとったか?
 食事を抜く・嘔吐などを自ら行なう等を行なう率が女性では読まなかった人に比べ数倍高かった。しかし男性では差がなかった。
このような論文が出てきました。このような雑誌は家庭でもよく見かけますし、ご家族で行なっている方もおられるかもしれません。最近メタボリック症候群は成人病予備軍であるとして医師会・自治体などでもその予防目的で啓発運動を行なっています。確かにその通りです。適切な食事と運動は非常に大事なことです。しかしこの論文は思春期に大きな問題(拒食)が起こりうることをも提示しています。子どもの目に触れないようなところに雑誌を置くことも必要かもしれません。
自分に自信が持てないお子さんでは、手軽に行なえるためそのような行動をとりやすい事もしっておいてください。バランスのよい食事を家族で楽しく食べたいものです。
子どもの肥満はほとんどが過剰なカロリー摂取によるものです。特におやつでパン・ラーメン・おにぎり等を食べる。夕食を待てずに夕食前に少し食べてから夕食をとる。家族が遅く帰ってきた時にその人のおかずを再度つまむ。一般に頻回に摂食する行動パターンが多いようです。肥満度が40%以上になると子どもでも脂肪肝を起こしていることが多いものです。
先日肥満ということで外来を受診なさったお子さんがおられましたが、肥満度は昨年も40%今年も40%でした。前年小児科医を受診して脂肪肝の診断を受けて今年もその診断を受けなければならない子どもの気持ちはどうでしょうか?肥満なのだからしょうがないと思われる方も多いと思いますが、この場合「お母さんも子どもさんもよく頑張ってこの程度に抑えてくれたね!」というべきだと判断して、ほめてあげることにしました。この方が子どもやお母さんがよく話を聞いてくださることが多いのです。
実際この子の場合小学1年生の時に通っていた学童保育で、おやつに焼きそばやラーメンが出ていたようですし、この頃から肥満をきたしたようです。何処に原因があるか確かめて指導しなければならないのが肥満指導です。小学生では身長がよく伸びる時期が必ず来るのでその時に向かって体重が増えないような努力をすることが大事です。子どもにダイエットを求めるのではなく体重が増加しないようにするのがコツだと思っています。その為には子どもの食生活(食事の回数など)に眼を向けていただければよいと思っています。
小児科医の話題5 07.08.17
予防接種の資格?
 予防接種は各自治体が責任を持って施行することになっています。しかし現実には各医師会あるいは個人と契約しているのが現状です。接種医の知識・技術向上はどのようになされているのか?各自治体が接種医を集め講習を行なうのが当然ですが、医師会に丸投げ状態のところも出てきます。各医師会では最近の話題・厚生省通達の変更・接種の実際など各予防接種メーカーの研究者・ワクチンを主として研究している医師を招いての講演会を実施しています。したがってキチンと講習を受けていれば接種医として技術や知識を持ち続けることができるシステムになっています。
ある東京の小児科医がBCGの接種部位・接種痕、接種予定の組み立てなどから最低限の知識を持たずに接種を行なっているのではないか?その為予防接種といえども講習会を行い予防接種認定医をという提案をしていました。しかし医師の間では必要がないという意見も多く出されました。実際講習会を行なっても出席するのはほぼ毎回同じ医師が多く、聞いてほしい医師はあまり出席しないのが現状だとも議論されていました。
山辺町ではかなり以前よりキチンと予防接種の講習会を定期的に行なってきました。この講習会は医師ばかりでなく保健師や医療施設のスタッフの知識向上にも役立っているのです。実際私がこの地域で仕事を始めたときにはすべて集団接種の時代でしたが、定期接種の一部は個別接種に変更され接種医がキチンと予定を立てて接種を行なうことができるようになりました。さらに保健師がBCG・ポリオを優先接種する状態から三種混合をまず1回受けてからBCGに接種するシステムもほぼできました。この山辺町では集団接種でも接種医のサインを母子手帳に書き込む→接種に責任を持たせるシステムもできました。小児科医が考える方法を取り上げてくれたのはこの地域だけかもしれません。
これは山辺町独自の講習会とその場での議論(ワクチンが必要な疾患の疫学などの理解)からなしえたことです。他の市町村では集団接種の場合接種医が自治体の長の印鑑であったり、ポリオを接種するために三種混合が定期接種できなくなったりということがあるようですが山辺町ではなくなりました。
このように講習会は医師にとっても保健師・医療スタッフにとっても非常に有効な勉学の場です。お子さんたちの安全を守るために山辺町では頑張っています。
小児科医の最近の話題4
日本脳炎ワクチンとワクチン不足について
 日本脳炎ワクチンは3歳になったら接種できることになっています。しかし厚生省通達によって積極的勧奨を行なわない。もし接種希望者がいる場合自治体で接種希望の書類にサインして接種するようになっています。日本脳炎は中国や東南アジアに多く発生します。、日本では昨年茨城県に住んでいる成人が罹患したと報告されています。一般に夏場の脳炎や脳症の原因として鑑別診断に挙げられますが、広島県の研究では無菌性髄膜炎の原因にもなっているという報告もあります。山形県では本年度より豚の日本脳炎抗体価と子ども達の抗体価を測定していくことにしました。日本脳炎リスクがどの程度あるのかを知っておくことは県民を守るために必要だからです。実家が西日本以南・中国・東南アジアの方は積極的に接種すべきだと考えています。
ところでこの日本脳炎ワクチンは充分に供給されているかといえばそうではありません。西日本で接種したくとも接種できない状況になっています。大阪府では接種希望者に接種できない場合住民から不作為の行為にあたると言われかねないとして厚生省に充分なワクチン供給を求める要望書を提出しました。
考えてみれば来年は北京オリンピックが開催され、数年後上海万博が開かれます。その時に本当に大丈夫なのでしょうか?温暖化によって徐々に日本脳炎罹患リスクが高まるなか、子ども達にとってワクチンを接種しないほうがよいのか接種したほうがよいのか。それは明らかだと思います。積極的勧奨をしない=接種中止ではない。もしワクチンがなくて接種ができない場合、ワクチン接種するような経過措置をとるべきだという意見が多くみられます。
それに対して厚生省は蚊に刺されない対策を採ってくださいとのこと。なんとなく竹やり訓練を思い出すのは私だけでしょうか?
麻疹の流行
 麻疹ワクチンを接種していても大きな流行がなくなった現在中学生以上の麻疹罹患が多く報告されています。2006年度から麻疹。風疹混合ワクチン(MRワクチン)が1歳児と年長さんの2回接種になりました。必ずお子さんのワクチンは接種しましょう。沖縄では1998年以降本土から持ち込まれた麻疹に罹患して現在まで8名のお子さんが亡くなられました。その他脳炎・脳症・数年後のSSPEと呼ばれる脳障害で困られているご家族がおられます。是非麻疹ワクチンは接種しておきましょう。
手足口病になったら
 手足口病はエンテロウイルスによって起こる病気です。数種類のウイルスが起こしますので小さい時に何度か罹患します。
ある保育所の保育師からキチンと「軟膏」をもらってきなさいといわれた母親がおられました。軟膏は何のために処方されたのでしょうか?リンデロンVG軟膏を発疹に塗布しても何ら治癒に関係しません。また口腔内のアフタに塗布する軟膏をどのようにして奥の水泡や痛いアフタに塗れるのでしょうか?逆に子どもは痛がったり口をあけなかったりして塗れないことのほうが多いのです。むしろ食事内容に注意することや疼痛対策を行なうのが常識的だと思います。
また登園停止期間は医師によってさまざまだといわれますが、基本的に発熱がなく痛みがなくて普通に生活できれば登園してよいことになっています。便中に約1ヶ月近く原因ウイルスが排泄されています。これらを知っておいてください。