― オタフクカゼの難聴について ―
大阪の橋本裕美先生書かれた論文(7500人のオタフクカゼ患者さんのうち7名の難聴が見つかったこと)が外国の雑誌に掲載されました。外国ではMMRワクチンが主流なのでオタフクカゼの発生が少なく、このような研究論文が報告されていませんでした。昔からの小児科医の教科書では最大20000人に1人だとされています。この論文ではオタフクカゼは後天的難聴を起こす率が高いこと、難聴を起こした場合には回復しないことをもっと多くの医師が理解し、国民も小児期に罹ってしまえばよい軽度の病気であるという認識を改めていくべきだとしている。
彼女は「片方が健常ならいいんじゃない」という医師の一言も患者さんを医療不信につながらせてしまう原因となるので医師の言動には注意が必要だとお会いした時に教えてくれました。現実的にはオタフクカゼに罹ったら必ず電話などの会話を通じて子どもの聴力をチェックしていただくしかないと私は感じています。この研究を通じて一般臨床を行っている医師たちがやらねばならない仕事を彼女は教えてくれています。
小児科医の話題38 09.04.08
ご入園・ご入学おめでとうございます。
水痘・オタフクカゼにかかったことの無いお子さんにはワクチンを接種してください。特にご兄弟もかかっていない場合には是非接種を行なってください。水痘は7日間、オタフクカゼは10日間は登校・登園停止となり、その上ようやく行き始めたと思ったら下のお子さんにうつってしまいます。潜伏期は水痘で14日・オタフクカゼで16日です。ようやく治ったとしても1週間で兄弟が発症します。発症してからでは予防は不可能です。
年長さん(第二期)、中学1年生(第三期)、高校3年生(第四期)の麻疹・風疹混合ワクチンの定期接種が始まっております。山辺町の第三期接種は山辺中学校での集団接種になりますが、第二期・第四期接種は個別接種です。高校生は痛いので接種しないというお子さんが多いようですが、早めに接種しておくことをお勧めします。入学時に進学先の調書には必ずワクチン接種の確認がおこなわれます。冬にはインフルエンザが流行して期間内に接種できない方も見受けられました。
VPD(Vaccine Prevented Disease)という言葉をご存知ですか?ワクチンで防げる疾患という意味です。小児科医の間では当然なことだと考えておりますが、まだまだ認識されておられないようです。例えば水痘・オタフクカゼ・インフルエンザb菌(Hib)・7価or13価肺炎球菌ワクチンが小児科では有名ですが、成人では子宮頚癌を起こすとされているHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンや老人の肺炎に対する23価肺炎球菌ワクチンが有名です。特に女性にとって大きな問題はHPVワクチンをどのような時期に接種するかです。性の低年齢化に伴い今後子宮頚癌が増加することが懸念されており1年でも早く定期接種化が望まれています。
東京などでは子育て支援対策としてワクチン接種の補助が始まっています。あるところでは水痘6000円、オタフクカゼ4000円、だそうです。またHibワクチンに対しての補助も自治体によっては始まっています。
天童市では小学6年生まで、山形市では小学校1年生までの医療費が無料となるようですが、まずVPDワクチンに対する補助政策のほうがコスト的に見合う施策だと思います。市長さんと議員さんのご努力には感謝しますが、無駄な税金の使い方はあってはならないはずです。このような施策は検査をたくさん行なう医療機関にとっては朗報かもしれませんが、急患の増加の誘引にもなりかねません。必要最低限の医療費補助とVPDワクチン補助のバランスが大切です。天童市東村山郡医師会ではこの点を自治体に要望しておりますが、市長さんの公約だとかで行うのだそうです。全く公約とは不自由なものです。
車内閉じ込め事故に注意を
ようやく暖かくなってきました。これに伴って車の中の温度も急上昇いたします。毎年のようにちょっとした買い物やパチンコなどで車を離れた隙に熱中症を起こしてしまい、子どもの命が奪われてしまいます。お母さん・お父さん注意してください。もしこのような事故で子どもの命を失った場合には一生自分を責めて生きていかねばならないことにもつながります。ちょっとしたことかもしれませんが注意をしてください。
小児科医の話題38 09.03.25
麻疹の発生と対応
麻疹は昔から命定めの病気として怖がられていた。山形ではワクチン接種が行なわれるようになり流行が起きなくなって久しくなる。しかし数年前から成人や高校生・大学生の集団発生が目立ち始め、各地で休校措置を取るほどとなるケースもある。今年も入学者にワクチン2回接種記録の提示か抗体価の測定を義務付けている学校が多い。
平成20年度から高校3年生と中学1年生に無料で接種することができるようになりましたが、山辺町の高校3年生16名が接種を行なっていないという。以前から書いているようにうつされないためのワクチン接種だけでなく、うつさないための接種でもある。5年かけて麻疹を一掃する。これが目的である。
麻疹が発生すると個人追跡調査が行なわれ、接触者全員に指導が行われる。理由は麻疹の急性期に肺炎、脳炎や脳症、麻疹罹患後の結核発症など多彩な合併症や数年後にSSPEと呼ばれる脳障害のケースが出てくるからである。罹患してもよいという親や子どもがいて、もしその家族がうつした人に重い後遺症を残してしまったとしても良心の呵責に苛まれることはまずありえない。なぜならうつさないという強い意志が働いていないからである。
この3月16日発熱・発疹で発症した7ヶ月児がいます。保健所職員はその対応で3連休を棒に振ってしまったスタッフも多いと思われます。このお子さんが気付かないで健診や色々なところに出かけていれば、2次感染は子ども達ばかりではなく成人にも感染し、その成人感染者から3次感染者と鼠算式に急激に流行を起こしてしまうでしょう。中学校や高校生はよく中体連・高体連の試合に行って他の地域の人にも感染を繰り返させているのも現状である。最近では麻疹ワクチンを接種しない子ども達には大会出場を辞退させるところもありますし、患者さんの出たところでは全校で出場辞退を求められる所も出ています。したがって今回の場合のように年度の端境期に発生する場合には特に接種をスムーズに出来るよう自治体・教育委員会などと連携をとる必要が出てくるのです。
沖縄では1歳からの接種ではなく流行期には緊急避難的に11ヶ月より接種を行ない、麻疹感受性者を少しでも減らそうと努力しています。本土の人たちが麻疹を沖縄に持ち込んでしまい、毎年のように流行を繰り返しているからです。しかし現実的には接種率の悪いのは沖縄であり、大阪なのです。
子ども達をVPD(ワクチンで予防できる疾患)から守る運動は小児科医では当然だと考えているのです。でも麻疹流行のひどさや後遺症をみたことのない医師も多く、またVPDを理解してくれない医師も多いのが現状である。小児科医のあるグループでは麻疹・風疹撲滅のために広島球場の毎年広告看板を数百万円もかけて掲げています。また色々なイベントに出かけてVPDの理解を求める運動を行っています。今年も東京マラソンの応援者・走者で麻疹・風疹ワクチン接種を呼びかけてきました。個人でできない事を多くの医師たちで積み重ねているのです。そのような努力をしてまでも子ども達には麻疹に罹患してほしくない!それほど怖い疾患なのです。
小児科医の話題37 09.03.06
インフルエンザBが現在各地で流行中ですが、3月中旬の卒業式を境に著明に減少していきます。しかし流行の起こらなかった地域では4月の連休前に集団発生が起こる事もありますので注意が必要です。
さて高校入学の前に携帯電話を購入する場合の注意点。
1.フィルタリングを行って子どもに与えてください。(悪意のあるものには近づかない)
2.プロフィール・ブログには個人が特定できるような文章は書き込まない(自分を守る)炎上という遊びもありえます(人が傷つくことを楽しむことで快感を得ています)。
3.個人情報は絶対に書き込まないこと。
4.自分の部屋には持ち込まない(閉じこもる傾向が出てきます)。コミュニケーションを大事にするように指導して・・。
5.5あるいは15分ルールに巻き込まれないように。メールが着たらすぐに返事を出さないといけないルールは個人の生活を脅かす原因になります。
6.書き込んで良い事と悪いことを教えてください。
7.電話をして良い時間と悪い時間があるはずです。友達だからといって何時も電話をかけてよいのではないことを教えてください。
毎年不眠を訴えて睡眠導入剤を希望する人が4月になると増加します。自分の生活リズムをマズきちんとすることが大事です。
メディアリテラシー(自分で判断・選別をおこなう)をマズ教えましょう!
小児科医の話題36 09.02.20
医療費の無料化
天童市で今年から小学生の医療費が無料になるようです。市長選で公約としたことから実現したようです。コストベネフィットの計算はどのようにしたのでしょうか?
確かに医療費は大変ですが、それよりも大事なことはワクチンで防げる疾患はワクチンで予防することです。現在個人で行なえるワクチンは水痘ワクチン、オタフクカゼワクチン、インフルエンザ菌ワクチン(Hibワクチン)があげられます。
水痘は罹患すると7日間、オタフクカゼは10日間近く通園・通学停止となります。最近働くお母さん方が増加しています。診断時と治癒時の二回医療機関を受診することが多いと思われます。その時の休み(休業費用)はワクチン代より高いはずですし、長期間の休みは雇用側でも大変困ります。医療費の補助よりもむしろワクチン接種の補助のほうが大切だと信じています。また病児保育・病後児保育などコストの見合わない部分の補助に回すべきだと思います。
安易な医療費の無料化はモラルを低下させることもあります。今後天童市の医療負担金が増加しないことを願うばかりです。
山辺町ではこのようなことにならないように医師クラブから要望を続けていく予定です。馬鹿げた施策より確実な施策。教育関連経費(特別支援が必要な子どもへの援助)、学習障害児の早期発見とその育児相談、高齢者への肺炎球菌ワクチン補助などです。住民の皆さんの協力期待しております。
山形もAH1はタミフル耐性
昨年末当院で採取した検体のインフルエンザAH1ソ連の遺伝子解析の結果3検体(12月中に検出された8検体すべて耐性だったようです)すべてタミフル耐性でした。タミフルを投与して効果のなかった患者さんには申し訳なく思っています。医師としてはインフルエンザAH1がすべて重症でないことも良く理解できました。自然経過を話して感染しやすい時期を理解していただくほうが患者さんにとっても有意義なことだったと思います。今後の診療に役立てたいと思います。
今年診療スタイルで変更した点は、できるだけ隔離状態で診察する。診察終わった時点で検査中の患者さんには色々なところで待機していただきました。ご不自由だったと思いますがご協力ありがとうございました。またインフルエンザと診断された患者さんの再診時に起きる2次感染を防ぐために、お薬を4~5日分から7日分に増やして投与したことです。その結果インフルエンザの患者さんの再診率が大きく減少し、医院内での2次感染は防げたようです。
小児科医の話題35 09.01.23
インフルエンザの流行期に入りました。インフルエンザはA型ソ連・香港B型山形系・ビクトリア系C型に分類されます。現時点ではインフルエンザA型香港が尾花沢市内で11月に集団発生していますが、現在何処で流行しているか不明な状態です。山形市内・山辺町内などで多く分離されているのはA型ソ連です。これは仙台市内で10月に流行してその後12月に山形県内で流行しているものです。B型山形系は12月に山形市内で流行したものですが現在寒河江市内でみとめますが、A型の流行が終わってから再度流行してくると思います。
インフルエンザは咳が出てから1日以内でほとんど発熱します。ワクチンを接種して抵抗力が充分上昇している時には発熱や再発熱しにくくなります。最近マスコミを通じてタミフル耐性インフルエンザが話題になっていますが、昨年暮れより山形でのA型はタミフルを使用しても無効である可能性が強いとして外来でお話をしておりました。しかしこの話題が浸透してもまだタミフルを使用している小児科医もおられます。注意が必要です。
A型ソ連かA型香港を区別することは現実では不可能ですが、方法的には衛生研究所での分離速報を確認することや集団発生しているところではタミフルを投与した患者さんからインフルエンザの自然経過であるかどうか熱型を教えていただくことです。また一時落ち着いている施設で再度インフルエンザA型が流行したときは、別のA型が流行していると考えて治療することです。
人ごみの中では必ずマスクを着用すること(咳エチケットを守ること)。家族内で感染者が出た場合やはりマスク着用は必要です。乳幼児では正面抱っこをせざるを得ないわけですがマスクを必ず着用することです。ある程度大きなお子さんではできるだけ正面抱っこは避けるほうがよいと思います。解熱してから入浴する時は換気扇を停止し、シャワーを一度出してから湿度の高い状況で入浴を行なうことです。部屋の湿度もできれば高め(50~60%位)にしておくことが望ましいといわれています。
医療機関で駐車場が大きなところでは色々な患者さんがいます。したがって車の中で待機するほうが望ましいのですが、順番がどうのこうのということで他の患者さんからクレームがつくこともあり、感染症のトリアージがうまくいかず院内感染を起こしている医療機関も多いと思います。充分に注意してください。1時間12名以内までが上限だと思います。そのような医療機関で常識的な治療を行なってくださるところを選ぶべきです。
小児科医の話題34 09.01.09
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
Hibワクチン接種開始のお知らせ
昨年末より待望のインフルエンザ桿菌B型(Hib)ワクチンの接種ができるようになりました。当医院でも昨年12月より予約接種しております。昨年4月より県内では2名のお子さんがHib感染による細菌性髄膜炎に罹患されていることが報告されています。細菌性髄膜炎の起炎菌頻度は全国ではHibが多いのですが、山形県内では肺炎球菌が多いようです。しかし全国調査と同じようにHibの頻度が増加すると考えられています。
一般の菌血症では肺炎球菌によるほうがインフルエンザ桿菌より多いことがわかっておりますが、抗菌薬による反応は肺炎球菌のほうがよく外来治療も可能であることが示唆されています。当医院の結果でもそのような状況です。しかしインフルエンザ桿菌では検査結果(WBC,CRP)ではウイルス感染かどうかの判断がつかないことも多いといわれ、しかも急激に悪化するため間に合わないことも起きています。特に喉頭蓋炎ではあっという間に悪化して死亡することもあります。また細菌性髄膜炎でも急激に悪化することが報告されおり、予防するにはHibワクチンしかないといわれています。
小さなお子さんにインフルエンザHAワクチンを接種するよりも、Hibワクチンや通園しているお子さんでは水痘ワクチン・オタフクワクチンのほうがご家族にはメリットが大きいことしってください。幸い開業して12年間化膿性髄膜炎や喉頭蓋炎の発生がないのは、偶然であり今後起きない保障もありません。ぜひ公的定期予防接種ばかりではなく、個人的に接種するワクチンにも眼を向けてください。
個人で行なうワクチンについては受付で予約してください。
小児科医の話題33 08.12.19
今年(2008年9月)のインフルエンザについて
今シーズンのインフルエンザは12月1日よりFluB yamagataが竹田西武幼稚園の児から分離されて以後大曽根小学校やべにばな幼稚園・つばさ幼稚園で流行いたしました。B型インフルエンザに対してタミフル・リレンザ共にその有効性に対して疑問視する報告があることや、インフルエンザによる異常行動があたかもタミフルによるものだとする報道もなされましたので、B型インフルエンザには抗インフルエンザ薬の使用は行ないません。
その後12月初旬サクランボ幼稚園でFluAの集団発生が起こり、山辺相模小学校でも集団発生を12月15日より確認され現在ゆりかご幼稚園などでも発生しているようです。このFluAはタミフルによく反応していることからAH3 ( A香港型 )とみられています。AH3は此処2年流行しておらず大きな流行となるかもしれません。このAH3に対してタミフル・リレンザの反応はよく、病状改善などメリットが大きいために抗インフルエンザ薬は投与する方向で考えています。
ところで仙台ではAH1が多く分離されており年末年始にかけて山形県内でも感染者が出ると思われます。問題は昨年度から日本各地でAH1に対してタミフルが効かないタミフル耐性AH1の報告が出てきています。世界的にはほとんど今シーズンのAH1ではタミフルが効かないと報告されており、集団発生した場合その集団での治療ではタミフルを投与しないことも充分ありますのでお含み下さい。
現在までのインフルエンザの情報をお伝えいたします。
12月19日 山辺こどもクリニック
小児科医の話題32 08.12.11
今年は暖かい日が多い気がします。札幌でも雪がないような状況です。
最近外来小児科学会で抗菌薬の使用率を調査した結果が報告されています。この外来小児科学会の有志が抗菌薬の適正使用を呼びかけてから6年目になります。その間ガイドライン作りを行なったり、どのような疾患との鑑別が必要だとか、臨床症状と発熱の関係を調査したり、数多くの報告を行なっています。2003年に抗菌薬の投与率を調査した時は、かなり多くの小児科医が発熱した時にはすぐに抗菌薬を処方していることがわかっています。しかし昨年度の調査では40%の小児科医(外来小児科学会に所属する会員)の使用率は0〜5%という結果が出てきています。これは今までの抗菌薬の使用が本当に必要だったのかという疑問から、カゼという疾患概念が小児科医の思考過程にキチンと整理されて組み込まれたのでしょう。
山形県内のウィルス分離情報は患者さんのお陰で小児科医が流行している疾患群を思い描きながら診療を行なえるようになりました。そのために県内の小児科医の抗菌薬の使用率は非常に少なくなっています。しかし耳鼻科や内科で子どもを診察していただくことも多く、彼らがどのような疾患を思い描いて検査や治療を行なっているのかが解からないこともしばしばです。小児科医の常識と他科の医師の理解度がかなり異なっていることが問題になりつつあります。
ある小児科医のMLでこれらのことも議論されています。治療法もかなり違ってきています。医師それぞれの考えがあってよいのかもしれませんが、子ども達にとって不利益のない治療を行なっていただきたいものです。
年末年始の診療は
■通常診療
12月30日午前中まで→仕事納め
1月5日午前中から診療開始
■救急診療
12月30日 夜間診療所勤務 午後7:30〜10:30
12月31日 午前10時まで電話連絡してください。転送しております。午後不在。
1月1日 不在。診療できません
1月2〜4日午前10時まで電話連絡してください。転送しております。午後不在。
救急診療のときは必ず保険証と医療証・診察券をご持参ください。
カルテを出すのに時間がかかり他の人に迷惑がかかります。
小児科医の話題31 08.12.4
迅速診断と感染症
小児科医のあるメーリングでRSウィルスの迅速診断について議論されている。一般診療医は発熱する子どもを診察すると咽喉から検査をおこなう。無駄な検査ではないのか!その反省も込めて議論されています。
1) それがどれ程の意味を持つのか?
2) 全員に検査をしなければならないのか?
3) 家族が本当に望んでいるのか?・・・よその医院ではやってくれたのに!
4) 医療費が上昇して結局税金の無駄遣いではないのか!
1) ,2)正確な診断は正確な治療に結びつく・臨床経過を家族に伝えられる
↓
積極的に迅速診断を使用すべきだ
迅速診断は現在病原体と反応させて行なうもの(インフルエンザ・RSウィルス・アデノウィルス・溶連菌など)と抵抗力のレベルを調べるもの(肺炎マイコプラズマ)の2通りがある。しかし抵抗力のレベルを調べる肺炎マイコプラズマ迅速診断は罹ったことを意味するが今回罹患していることの証明ではない。したがって誤診が非常に多いことも指摘されている。溶連菌感染症はきちんと抗菌薬を服薬しないと再発や腎炎などを合併することもあり疑った場合には検査をしたほうがよいといわれている。典型的な咽頭痛や咽頭所見を有する場合には検査は必要ないし、一般の正常な幼児では約1割の子が咽喉に常在しているとも言われ治療が必要でないケースも存在する。流行期でない時に発熱のみの訴えで迅速診断を行ない陽性であれば治療を行なうことは、やはり過剰治療となることも考えられる。その他の疾患はウィルス性であり臨床経過を知る上で医師にとっては大事な情報源ですが、ウィルス性疾患ではインフルエンザA型以外治療法がないことも事実です。その為経過をみながら必要に応じて検査すべきだという意見が小児科医には多いようでした。
2) 迅速診断には保険請求のできる検査(溶連菌、インフルエンザ、アデノウィルス)と保険請求のできない検査(ノロウィルス、RSウィルス)があります。小児科医や耳鼻科医は良く保険請求のできる検査を同日に行なうところもよくありますが、保険請求のできない検査は行なわないことが多いと思います。しかし医療機関によっては集団発生をしているような地域に限り保険請求のできない検査(RSV、ノロウィルス)も行い診療に役立てているところもあります。通園施設の方が検査を行なってもらうようにとか、ご家族がやって欲しいという場合には有料で個人負担をしていただく必要が出てきます。それも検査だけの費用ということではなく、診療そのものが自由診療となり保険がきかないこともありうる(混合診療の禁止条項に触れてしまう)のです。
その点もあり全員に無料で迅速診断を行なえないのです。
カゼは人から人へとうつるものです。その基本は先ず成人から子どもへ。その後幼稚園で多くの子どもさんが罹患して地域の流行を起こしていきます。終息する場合には散発的に発症した子どもから成人にうつり徐々に流行が落ち着きます。
このように地域的な流行を起こしやすい感染症の場合には家族内感染などの指導することも大事な小児科医の仕事です。その為に保険のきかない迅速診断を医院負担で行なうこともあるのです。
迅速診断のメリット、デメリットを考えて診療を行なっています。皆さんの大事な医療費を医師や家族の単なる自己満足のために、同日に数種類の迅速診断を行なうことは避けるべきだと考えています。
小児科医の話題31 08.11.14
チャイルドシート・後部座席シートベルト
先日不幸な交通事故がありました。ご両親のお心は如何ばかりかと思いながら掲載することにしました。
車を運転していて気付くのは子ども達の後部座席から運転者を覗き込むような仕草の多いことです。小さいお子さんから大きな子まで・・・・なんと多いことでしょう。急ブレーキをかけたら後部座席に座っている子どもが車から飛び出してしまうことは予期できるのではと考えてしまいますが・・・。しかし子ども達にとっては非常に楽しいひと時なのです。でも子どもを育てる時のリスクはできるだけ少ないほうがよいのです。ぜひご両親には後部座席でのシートベルト着用を指導していただきたいと思います。
小児科学会で報告されたチャイルドシートのパンフレットを外来に置いておきますので必要な方は自由にお持ちください。
また車の乗り降りは運転者が先に降りてから子どもがおりる。子どもが乗ってから運転者が乗るように心がけましょう。親が仕事に出かける時に子ども達はよく車を追いかける姿や、車庫入れをしている時に車へ近づくのを見かけます。車での事故は本当に悲惨です。もうこのようなことで事故が起きないようにと祈るばかりです。
子どもの救急診療について
先日山辺保育所でこどもの救急について話してきました。しかし出席者は少なく関心がないと思われるほどでした。このような啓発運動を自治体が行なっても本来必要な親世代祖父母世代が無関心であれば当然行なう意味がありません。どのようなスタイルが本当に必要なのでしょうか?
さて夜間救急はできるだけ9:00くらいまでに受診しましょう。迷っているくらいなら受診したほうがよいと思います。特に嘔吐する場合・腹痛を訴える場合には我慢できませんので受診してください。
山形市近郊で夜間でも診察してくださる医療機関は、pm7:00~8:00くらいまでなら上山小児クリニックさん。しかし不在の時もありますので電話で確認してから受診してください。当山辺こどもクリニックでは診察しておりません。
日曜日について
まず新聞の休日診療医療機関が掲載されますのでまず確認してください。意外に小児科医が診療を行なっていることも多いのです。
その他第1・3・5日曜日午前中は寒河江市の西川産婦人科小児科医院の小児科で診療を行なっています。確認して出かけてください。当山辺こどもクリニックでも朝8:00~10:00まで診療ができる時は携帯電話に繋いでおりますので、医院に電話をして名前をキチンと伝えてから診察希望であることをお話ください。すべて電話予約診療です。医療相談はしておりません。
小児科医の話題30 08.10.30
入浴について
最近咳と鼻汁のカゼを多く見かけます。咳が激しい場合は飛沫感染が多く、鼻汁・鼻閉が主症状である場合は接触感染でうつると考えられます。そのため手洗い・うがい・マスク着用は効果があると考えられます。室内の乾燥はカゼがうつりやすい条件の一つですので就寝前にタオルを干したりしてみましょう。
もしうつった場合に膿性鼻汁や痰が粘っこくて膿性の場合には発熱がなければ入浴してもかまいません。その時にはぜひ換気扇を使用しないでシャワーを出して高い湿度の中で入浴をしてみてください。その上で鼻汁をかむとよくかめますし、痰もよく排出することができるようになります。
山辺町は山形県内でも脳血管障害の多い地域です。入浴時には風呂の温度をややぬるめにしてください。血圧の急激な変動を抑えることが大切です。また高血圧の患者さんは服薬を忘れないようにしましょう。
湯冷めするからといってすぐに子ども達を寝かせると、逆に睡眠時に布団から出てくることがあります。少し茶の間で体が火照るのを落ち着かせてから寝せてください。
大学受験でホテルに宿泊する時には部屋が乾燥しますので、湿度を確保するため浴槽にお湯をはっておくのもひとつの方法です。
小児科医の話題20〜29
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- 小児科医の話題29 08.10.17
- 朝晩寒くなりました。山の紅葉も始まりこれから11月初旬までがみごろでしょうか?新1年生の入学時健診も終了し、学校への1日体験入学も始まると思います。子どもと一緒に歩いて学校まで行ってみませんか?
体験入学での保護者へのお話
1.早寝・早起き・朝ごはん
大きな都市部では子ども達の食生活が孤食となっていることが話題になることもありました。山形ではそれほど問題にはなっておりませんが、朝起きられず食事を食べないで学校に行くお子さんが増えているといわれています。またご家族のお仕事が忙しく、また夜勤などで一緒に食事を取ることが不可能になっておられることも話題にあがります。できるだけご家族一緒に食事を取る努力をいたしましょう。
子ども達でも遅くまで起きていることは可能です。しかし早く起きることはできません。これは早く起きる生活によってリズムが形成され、早く寝る習慣がつきます。早寝が早起きさせるコツではなく、早起きが早寝を起こすことに注意してください。子ども達はTVを見たくて、「お母さんばっかりTVを見て、何故私達子供は見れないの!」と問題提起しますが、大人と子どもの生活時間帯が異なることを小さな時期から教えるのが一つのポイントになります。是非子ども達を夜遅くまで親の生活に巻き込まないようにしてください。
2.メディアリテラシー
子ども達のゲームソフトに年齢制限があることをご存知でしょうか?小さな時から子ども達に、暴力的なシーンの多いゲームを与えることやめましょう。年齢にあわせたゲームを与えるようにしてください。販売店では年齢に適したものをおしえてくれると思います。
大人でも携帯電話・ビデオ・ゲーム・パソコンに夢中になられる方もおられるとか。子どもと一緒に遊ぶことも大事です。できるだけ安易にメディアの利用をしないようにしましょう。
3月4月は卒園・入学と子どもの生活パターンが大きく変化する時です。子どもの声に耳を傾けることも大事です。
3.ワクチン接種について
定期接種はすべて終わりましたか?確認すること。任意個人接種するワクチンについて特にオタフク風邪ワクチン・水痘ワクチンについて罹患していない子どもさんはできるだけ個人接種を行なってから入学するように。
4.子どもと学校への相談
子どものことで悩んだり相談したい事があれば何処に相談先があるか。まずは学校へ相談することも大切です。しかし担任の先生のことで悩む場合には、その相談窓口を知っておいてください。このようなことを入学前のご家族にお話をしてみました。一番大切なことは人間関係です。学校の先生方を大切にしてください。自分達が何で悩んでいるのかを一緒に考えてみましょう。手立てはたくさんの方法があります。とにかく一人で背負い込まないようにしましょう。
- 小児科医の話題28 08.10.06
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また起きたこんにゃくゼリーによる窒息死
かなり以前から「こんにゃくゼリー」による窒息死は指摘されていました。最近でも学童保育での事故が有名です。注意事項で小児・老人には与えないよう注意書きがなされています。小児科医の間では生協などでの販売は中止してくれと申し入れておりました。おいしくて食べておられる小児科医もおりますが、その多くはダイエット食品として食べていると言います。多くの母親も自分のダイエット食品として購入し、子どもに与えているのかもしれません。また小児科医の間では新しく母となる人たちが若い時にそのような事故が起きていても無関心だったので同じ事を繰り返すという「親世代の新陳代謝」を指摘している先生も多いようです。実際に保健師が多くの母親にそのような事故を説明しても実際の事故が減少していないことも報告されています。お母さんの『想像する力』が子育てする力をつけていくのです。是非医療者の話に耳を傾けてください。
こんにゃくゼリーはゼリーではありません。そのため加温しても変形せず、誤飲すればほとんど呼吸困難・窒息が起こるものと思います。窒息の原因はこんにゃくゼリーを食べる時にカップから吸い込むようにして食べることが多いため誤飲を起こすのです。キチンと皿に出して小さくして食べれば窒息は起こさないと思えるのですがどうでしょうか?誤飲した時には指を使用して取り除く事を試みてもよいのでしょうが除去できないことのほうが多いのだろうとおもいます。「こんにゃくゼリーやもち」は子どもや老人に与える場合には1人で食べないよう注意してください。
このほか小児の誤飲事故では豆菓子が有名です。しかしこれはほとんど口に物を入れながら走り回って転倒するときによく起きるものです。口に物を入れたまま走らせたりしないようにしましょう。さらに転倒事故によるものでは綿菓子の箸を咽喉に突き刺して死亡した例が有名です。これ等も容易に想像でき、予防できる事故だと思っています。
会社が製造中止しても同じような事故が起こると思います。ニュースとなった事故は覚えておくしかありません。そのためにはテレビ・携帯電話やパソコンからのみニュースソースとするのではなく、新聞などを読むようにしましょう。
この事故でお子さんを亡くしたご遺族の悲しみをお母さん方には経験させたくはありません。二度と起きないよう注意しましょう。
- 小児科医の話題27 08.09.22
- ずいぶん涼しくなってきました。寒河江や谷地のお祭りが終わると稲刈りのシーズンで農家の方は忙しくなってきます。稲刈りが終わればリンゴ、ラ・フランスの収穫、キノコの採取と秋の味覚がたくさん出てきます。台風などで被害のないことを祈っています。
国内での米の偽装、中国での育児ミルクへのメラミン添加。自己の利益を追い求めるために犠牲者が出ています。倫理観をキチンともてなくなったのは本当に悲しいことです。特に育児用ミルクへのメラミン添加は大きな問題です。これから中国国内ばかりではなく輸出国への影響も出てくることでしょう。日本でも私が小さな時にヒ素ミルク事件が起きています。また10年近く前に育児用ミルクに好酸菌が混入していることが分かっていても人体への影響はないと主張して回収を行なわなかったメーカーがありました。全国の産科・小児科医療機関では当然そのメーカーのミルクをボイコットしました。これもまだ記憶に新しいところです。工業製品は大量に作り、大量に販売しますので被害が非常に大きくなります。
このミルクへの混入事件を防ぐ手立ては母乳育児しかありません。最近どの産科・小児科の医療機関では母乳育児に力を入れているのは、赤ちゃんとのコミュニケーション作り・愛着形成ばかりではなく、このような混入事故を予防できるからです。しかし母乳育児でも問題はあります。お母さんの取る食事・嗜好品などによって胎内でアレルゲンの感作が起こる場合があることです。したがって母乳育児を行ないたいと考えているお母さん方にはできるだけ偏った食事をしないようお願いしたいと思っています。
朝日新聞であたかも母乳育児で低血糖を起こし障害を残したお子さんがいると報道されました。新生児を扱う医療機関ではnot well being (なんかヘンだな?)というレベルですぐに血糖や他の検査を行なっているところが多いので心配しなくともよいと考えています。出産後母児同室で過ごす施設が増えていますので、心配なことがあれば出産施設のスタッフに必ず相談することです。小児科医が新生児を管理している施設では毎日ミーティングを行なっています。
出産時・退院時・退院後1週間後・1ヶ月健診は大切です。特に退院後1週間後の健診は乳房管理と赤ちゃんの体重増加そして家族(お母さん方)の心配などにキチンと対応してあげないといけません。おっぱい外来(退院後1週後健診)を行なっている施設であればできるだけ健診をしていただきましょう。
山辺町では4ヶ月健診時に母乳の会のスタッフがボランティアで母乳育児相談室を開いております。是非ご利用ください。
- 小児科医の話題26 08.09.09
- 8月29日午後より医院を休診にして日本外来小児科学会に出席のため名古屋に行ってきました。前日は岡崎市が大雨で全戸避難勧告が出されていけるかどうか危ぶまれましたが何とかたどり着き、各地の小児科医と話をしてきました。学会は種々のワークショップと演題発表にわかれており興味のある分野に・・・・。
初日は「抱っこを科学する」。どのようなスタイルでどのようなところに注意して抱っこするのか。ようやく母乳育児一辺倒のところから乳幼児期の抱っこというところに視点が向いてきているところに新鮮さを感じました。WSリーダーの伊藤智子先生(広島県)と話させていただき、そのうち山形県内でも抱っこについて考える勉強会があってもよいなあという思いを強くしました。
午後からはHibワクチンのミニシンポジウムに登録しておりましたが、ランチオンセミナーで概ねの所を聞いていましたこと、前日の移動と初日に行なった演題発表の疲れと二日目のWS「咳を科学する」の疾患各論hMPV・肺炎マイコプラズマ感染症の症状解析の発表原稿を再度見直すためにドタキャンをしてしまいました。夜間中標津の友人から電話が入り彼らと合流し全国の小児科医仲間と夜を楽しんでまいりました。
二日目は朝から雨の中会場へ。抗菌薬適正使用で有名な諸先生と「咳を科学する」のWSへ。如何に小児科医が鼻汁・鼻腔粘膜所見という大事な診療ポイントをおさえていないかを指摘され、自分では診ているつもりでも視点を変えて診察を行なうことの大切さを学んできました。各論では乳幼児期のRSV感染症の専門家植村先生の治療上のポイント。治療の実態について教えていただきました。また太田先生から百日咳の実態と診療・診断、鈴江先生からは咳の観察表の利用の実態と問題点を教えていただきました。 各個人個人診療スタイルは異なりますが、お互いに良いところを学びあいこれからの診療に生かしていきたいと考えています。
休診でご迷惑をおかけしましたが、子ども達へ還元すべきものだと思いますのでお許しください。
- 小児科医の話題25 08.08.24
- 小児科医として共感を覚えるのは正しい診断をつけて必要なものだけを投薬すること。小児医療では何もしないことも大事であるという心がけです。
夏カゼが流行していることをカゼ情報にアップしましたが、まさに夏カゼの診断が正しければ鎮痛解熱剤のみでよいのです。よくトランサミンを投与されているお子さんを見かけますが、トランサミンはもともと内科・耳鼻科の先生方で咽喉の痛み・咽喉の炎症を取る目的で使用されているようですが、小児科では鎮痛解熱剤だけで充分なはずです。ウイルス性疾患は重症な合併症を起こすような疾患(例えばインフルエンザ・ヘルペスウイルスなど)では治療上必要ですが、もともと自然治癒する疾患です。本当に効くの?小児の治験はできているのでしょうか?高熱ですが2〜3日で解熱することがわかっている疾患に何故必要なのか理解できない私がおかしいのでしょうか。
薬を飲まないと夏カゼはよくならない。このように考えるお母さんが増えたら誰がメリットを享受するのでしょうか。薬側と医師側が当然大きなメリットを受けることになると思います。それよりもキチンと説明しお母さん方に病気の理解をしていただくほうがズーッと子育てする力をつけることになるのですが・・・・。
子どもにお薬を飲ませるたび苦労したことはありませんか?不必要な薬を飲ませる苦労は本当に無駄なことです。
- 小児科医の話題24 08.08.02
- 夏休みは入り毎日が子ども達にとっては楽しい日々のことだと思いますが、生活のリズムだけはキチンとつけてください。できるだけテレビ・ビデオ・ゲームから離れて外遊びを行なうようにしましょう。
先日行なわれた大寺小学校のノーテレビデー・ノーゲームデーで子ども達は何を望んでいたか。家族は何をしてあげたいと思っていたか。基本的にはできるだけの家族行動(スポーツ・トランプなど)でした。非常に健全な回答でしたが、テレビ・ゲーム・携帯電話・パソコンなどはほとんど一人で行なうものですから、人とのコミュニケーションがうまくとれないことに思いをはせた人はわずかでした。
子ども達にテレビ・ゲームなどパーソナルなメディアとの付き合いを中止させようとしても高学年以上では逆に部屋への閉じこもりなど逆効果であるばかりか家族内人間関係が壊れる場合さえあることを知って欲しいのです。したがってできるだけ早めにメディアリテラシイをご家族で考えていただくことが必要です。
最近ちょっとしたお手伝いはできるが炊事・掃除などができないお子さんが増えていることに気付きます。この子達が家庭を巣立ってひとりで生活をしていくには大変な苦労があるだろうと思います。ぜひこの夏休み中に一緒に炊事場に立ち子どもに仕事を任せて見守る・待つことを行なってみましょう。何事も子どもを信頼し任せて経験させてやることが大事です。失敗してもよい。これがよい経験になって感謝されることにつながる。自己肯定感を高く保つよう子ども達に接したいものです。
- 小児科医の話題23 08.07.17
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■お母さんの想像する力と子育て力
子育てする時に周りの人に色々相談する場合が数多くあります。しかしいつも周囲の人のアドバイスが適格だとは誰も保障できません。そんな時はどうしましょうか?
例えば1 解熱剤は何度だったら使用できるのですか?
答え 38.5度になったら使用しましょう。・・・本当ですか?
解熱剤は鎮痛解熱剤という分類の薬ですから鎮痛剤としても使用します。お母さん方の頭痛薬・生理痛薬などにもよく使用されています。その時に発熱していることはほとんどないのに利用しているのです。したがって中耳炎で耳が痛いというときにもよく使用します。
38.4度なのですが解熱剤を使用してよいでしょうか?
こういう疑問で真夜中に電話をかけてくださるお母さんがおられます。かかりつけ医がそのように説明しているのでしょう。それならそのかかりつけ医に電話をするのが筋ではないですか?あわてないことです。そのような説明をしていない医療機関の医師に真夜中電話をすることはないはずです。基本的に体温計での測定では高くも出るし低く出ることもしばしばです。したがってお母さんがお子さんの状態をどのように見ているかによって異なってきます。心配なら使用してもよいと思われます。0.1度で何処が異なるのでしょう。
例えば2 ヘルパンギーナや手足口病の口内炎のときは?
ある小児科医がある保育所の先生のお子さんに口内塗布用に軟膏を出していました。そこで保育所の先生は軟膏をもらって塗ってくださいとお母さん方に伝えていたことがありました。ヘルパンギーナや手足口病の水泡形成は軟口蓋にできるため塗布することは困難で、咽頭反射を起こしやすいので塗布はできないはずです。また塗布できても潰瘍を形成しているので塗布されても痛がります。ちょっとしたことですができないような処置をしなさいという小児科医も現実にはおられるようです。でもお母さんがチョット想像していただければわかりそうなものではないですか?
食べ物はどんなものを与えれば良いの?・・・・答えはお母さんがこの子だったらどんなものを食べたいの?と逆に考えれば答えはおのずと出てくるものなのです。
保育所へはいつからなら行くことができますか?
基本的にはウイルスが飛沫感染しないような時期(涎がすくなうなってから)になったらといえばよいのでしょうが、手足口病やヘルパンギーナの口腔内潰瘍は浅いためそれほど涎がひどくはなりません。そのため食べられることができれば通園可としておられる先生が多いと思います。お母さんが保育所の職員なら「食べられないお子さん」を預かれますか?そのことを想像していただければご理解いただけると思います。
- 小児科医の話題22 08.07.07
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■ノーテレビディー・ノーゲームディー
各地の学校保健委員会でNo TV day , No game dayの取り組みが紹介されてきます。先日鈴鹿市のある小児科の先生が取り組まれ、学校全体で夏休みの期間に数日やってみたいというご家族が何組か出てきていることを報告していました。また宮城県利府町では全体で取り組んでみて3〜4割のご家庭で行われたとある新聞に取り上げられています。マスコミの論調は3〜4割しか取り組めなかったと非常に否定的だったようですが、3〜4割ものご家庭で取り組んだという実績は非常に価値のあることだと小児科医の間で話題になりました。
ところで子ども達の生活でのTVやgameは現実にはどのようになっているのか?
ある小学校6年生へのアンケートでは5年生に比し睡眠時間が減少し、午前中に時々眠くなるという子が増えてきます。これはスポーツ少年団の夜間練習等で遅くなったり、夕食後ご家族と一緒に買い物(コンビニやスーパー等)に出かけたり、上のお子さんと一緒にTVなどを見るチャンスが増えるからだと考えられます。
此処で指摘しておきたいのは「子どもの生活時間と大人の生活時間が異なること」これを子ども達に小さいうちから教えておくことの重要性です。お母さん。子どもは大人とお友達ではないのです。
■TV・gameのよいところは?
面白い・楽しい・クリアすることでの達成感を得られる! 暇つぶしになる・情報が得られる・会話の話題になるなどのメリットを指摘するお子さんが多かったようです。
悪い点
眼に悪い・時間を忘れてしまう・起きられなくなる・外で遊ばなくなったなどの意見が
多いようです。 しかし問題は子ども達にはコミュニケーション能力・相手に伝えたたり相手を理解しようとする努力が不足する可能性について気付いていないのが現実のようです。 ご家族の努力で何とか休日にでもノーテレビディー・ノーゲームデーを実際に取り組んでみませんか?
- 小児科医の話題21 08.06.20
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■微量採血針による検査
先日ある内科医院で微量採血針を使いまわして肝炎の集団発生が起きたことが報道されました。厚生省はこのことを重くみて、保健所などを通じて医療機関の採血状況を確認しています。この微量採血針は一般に糖尿病の患者さんが毎日血糖を測定する時にわずかな血液を採取する時に用いるものです。原則的には患者さん1名が血液採取時に毎回針を交換して使用することを前提にして開発されてきたものです。しかしその内科医院では針を交換しないで不特定多数の患者さんに使用したために、他の患者さんにウイルス性肝炎を引き起こしたものと考えられています。
今回の騒動で問題になったのは類似したことが起きる可能性が非常に高いからと考えられます。当医院では採血は点滴確保時の採血あるいは18Gの採血針を用いて耳朶や足底を穿刺して採取しています。したがって肝炎ウイルスの感染は起こりえないと考えています。
厚生省が問題視しているのは個人用の採血器具を不特定多数の人で使用することに対してですので、同じような採血器具を使用している医療機関を調査しているのです。県内の医療機関では採血器具を使用していても基本的には針を毎回交換していると考えられますので心配は要らないと思います。事実山形県感染症サーベーランス事業での報告でもウイルス性肝炎が異常に多く発生しているという報告はありません。
■プールでの日焼け止めは?
暑くなるとプールに入りたいと思うのは私だけでしょうか?厚生省や皮膚科学会では日焼け予防を提唱しています。しかし現実には公的プールでは日焼け止めの使用は禁止です。九州では学校のプールでの使用を認めており、東北では禁止するというのはどうかな?と感じています。ただし九州の皮膚科の先生のお話ではオイルタイプはプーの掃除の時に滑って危険であると同時になかなか落ちないということです。それに比しクリームタイプはプールに付着する量が少なく掃除も楽であるとのこと。若しお使いになるのでしたらクーリームタイプをご使用ください。
またそのような日焼け対策より大事なことは炎天下ではバスタオルで身体を覆うことです。
- 小児科医の話題20 08.06.06
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■学校・幼稚園の内科健診
学校などでの健診がたけなわです。とにかく6月まで終了しなければなりません。その後健診結果を(医療が必要なのか不必要なのかまた生活上の注意点など)ご家族に報告しています。問題なのは肥満・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎などご家族も当に知っていることなのに医療機関を受診するよう勧告する養護教諭の多いことである。医療機関を受診したところで「様子を見ましょう」とか「症状が悪化するようなら再来してください」といわれることが多いと思います。したがって本当に医療が必要な場合にのみ医療機関受診を勧めるように校医をしている学校にはお話をしています。スポ少で柔道をやっていて体が大きいほど良いといわれ一生懸命に食べているお子さんがいます。そのことは家族が一番知っているはずなのです。また山形大学耳鼻咽喉科でまとめたアレルギー性鼻炎はプールに入ると悪化する?に対して、悪化しないと患児たちがアンケートに答えているという。そのようなことが言われているのに何故それほど悪化していない子ども達が医療機関を受診しなくてはならないのでしょう。個人的には不必要な受診をしないよう校医は考えるべきだと思っています。 幼稚園児の内科健診では問題になっている「手を焼くお子さん・育てにくいお子さん(所謂多動・学習障害児など)」をスクリーニングして臨床心理士に相談し、さらに子育てを行なう時の注意点を一緒に考えてゆきたいと思っています。したがってこのスクリーニングで引っかかった場合には3歳児健診で再度健診を行なっていただくように町に相談しています。小学校入学前に突然特別支援学級へといわれてのご家族の負担・不安が少しでも少なくなるようにと思っています。全国には自治体で5歳児健診としてスクリーニング検査を行なっているところもあり、少しでも子どもにメリットがあるようにと考えています。
■学校保健委員会
小学校では毎年2回学校保健委員会が開かれます。今年も7月に行なわれますが、大寺小学校では子ども達に「自分の時間を大切に」というテーマで子ども・ご父兄・教員と一緒に考えていこうと思っています。特にメディアリテラシーについて(TV/Video/Game)なども含めたいと思っています。昔は子どもの時間は終わったから早く寝なさいということで子ども達は納得して寝ました。しかし最近のお子さんは何故大人がよくて子どもは駄目なのかと反論してきます。その点について一緒に子ども達と考えてみましょう。 学校保健委員会で子ども達と一緒に考えてみる。その点が教員やご父兄にとって必要なのでしょう。
■プールでの日焼け止めの使用について
厚生省や皮膚科学会から日焼け止めの使用について勧告が出されていますが、まだ山辺町では使用が認められておりません。ゴーグルについても同じです。山形県全体で意思統一しないといけない問題と思っています。これについては県の教育委員会がキチンとした説明責任があると思います。
小児科医の話題10〜19
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- 小児科医の話題19 08.05.23
- 昨日天童東村山郡医師会主催の特定健診(所謂メタボ健診)の講義を聞きに行った。特定健診を行なうにあたって医療機関の設備スペース・指導内容・事務的コストとその煩雑さが医療機関側の不参加の大きな理由となっていることに気付いた。健診を行なう主体は保険者(支払い基金)側であるが、地域に根ざして健診を受けやすくしなければならないことが大前提だったのですが、地域の医師たちがとてもこなせそうな内容でもなく多くの医師が不参加になる可能性も出てきている。山辺町のような小さな自治体では山形市のような大きな地域の医療機関に外注すればよいという意見もあったが、はたしてそれで健診率が上がるのであろうか?したがってどうしても地域の診療所医師の協力が必要なのである。
これから地域医師クラブと自治体の話し合いが持たれるようであるが、はっきりとしたビジョンを共有しそれを目標として活動を行なっていくべきなのであろう。医療機関ができることと自治体ができることを協議しお互いにその得意分野を補う形でこの特定健診を遂行できることを願っている。
ところで山形県医療計画によると山辺町で問題になっていることは「脳血管障害」であるという。多くの町民が「所謂脳卒中」で入院・リハビリ・在宅医療にまわされている現実を知った。在宅にまわされ介護するご家族の大変さを考えると、この特定健診は大きなメリットをもたす可能性がある。それは脳血管障害や虚血性疾患の多くは糖尿病などを基礎疾患とする動脈硬化が主な原因であるからである。したがって多くの町民がこの特定健診を受けられるように医師会担当医師としてまとめてゆきたいと考えている。
今後地区の公民館主催の健康教室の開催・特定健診の持つ意味など住民への啓発運動も考えていかなければならないと思っています。山辺町の医師として最初は大変でしょうが「特定健診(メタボ健診)」を何とか軌道に乗せていきたいと考えています。あくまでも住民を守るために、自治体と手を取り合っていくつもりです。しかし住民の皆さんの御協力が一番大切なのです。何卒「特定健診」が始まったら「特定健診」を積極的に受けてください。
- 小児科医の話題18 08.05.09
- 母乳育児のお話;母乳育児で大切なことは母乳をいかに上手にくわえさせるか(ラッチオン)!である。これは出産施設により大きく異なります。したがって母乳育児を行なう時は助産師の指導通りにはじめは行なってください。また哺乳時の母親の姿勢は前かがみにならないように心がけましょう。
母乳で育てられなかったことで自分を責める必要はありません。人それぞれで母乳の出る人も出にくい人もおられるからです。
山形県立中央病院で「母乳なんでもQ&Aフォーラム」が開かれます。
主催:山形県母乳育児を応援する会
日時:平成20年6月14日(土)10時〜12時
場所:山形県立中央病院2階 講堂(入退院入り口より入る)
参加費:500円
内容:
1)これから生まれる赤ちゃんを母乳で育てたい妊婦さん
2)母乳育児を行なっているが心配なお母さん・・・次の妊娠をどう考えればよいの?
3)孫が母乳育児ですがミルクでないと?と不安なおばあちゃん
4)母乳で育てるとどんなよいことがあるの?
5)母乳だけで大丈夫?量は足りているの?
6)仕事を始めるんだけどおっぱいはどうする?
7)カゼをひいたけどお薬は飲んでよいの?
色々な心配事に新生児科医・小児科医・産科医・助産師・保健師が皆さんの相談にのります。赤ちゃんやお子さんも連れきてかまいません。
母乳の最新の知識などミニ講義もあります。ぜひご参加ください。予約は必要ありません。当医院に案内状がありますのでお持ちください。
インフルエンザ桿菌ワクチン(Hibワクチン)について
―Hibワクチン予約開始について―
「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」などが活発に国会議員に働きかけており、最近テレビでもよく取り上げられるワクチンです。今日もあるお母さんから「Hibワクチンは接種できますか?」というご質問を受けました。
Hibワクチンは延期に延期を重ねてどうも9月頃より発売されるようです。当医院でも「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」への協力や酒田市議会の佐藤先生に山形県内の細菌性髄膜炎の発生状況などを連絡してきました。当然Hibワクチンを行ないますが、コストがネックになりそうです。接種費用4回(0歳に3回,1年後に1回接種)で3〜4万円くらいになりそうです。また現在まで同時接種ができない事になってきましたが、三種混合ワクチンと同時に接種することになります。お母さん方には慣れないことばかりでしょうが、できるだけHibワクチンを接種することをお勧めいたします。
Hibワクチンで細菌性髄膜炎の頻度は激減いたしますし、喉頭蓋炎など緊急性の高く診断が困難な疾患から子どもを守ります(Hib感染は白血球が正常で炎症マーカーも正常であることが多いのです)。
小児科医は白血球が発熱の割りに低くしかも炎症マーカーが発熱した時間から考えて多い場合にHib感染を考えて行動を起こします。しかしこれでも防ぐことはできません。なぜならHibは抗菌剤に対して耐性(薬が効かない)が生じていることが多いからです。
このHib感染からお子さんを守るのは容易なことではありません。言い換えれば「ワクチンしか手立てがない」といっても過言ではありません。
もうそろそろワクチン希望者の予約を開始する予定です。
- 小児科医の話題17 08.04.19
- 幼稚園・保育所・小学校で新しい生活が始まりましたが慣れたでしょうか?この時期はご家族に子どもがよく話しかけるようになります。幼稚園での遊び・お友達・通学時のことたくさん話しても、話しても時間が足りないものです。できるだけ夕食時にはテレビ・ビデオはかけないようにお願いいたします。食事の時に子どもは色々なことを伝えようとします。オーム返しでもよいですから、相槌をうったりしながらお話を聞いてみましょう。子ども達はどんなことを御家族に伝えてくれるでしょうか?
新しく幼稚園に入られたお子さんはよくカゼをひくといわれます。その理由は家族だけの小さな集団生活から多くの家族をバックにする大きな集団に変化するためです。カゼをひくのが嫌だといってもいずれは罹患することになります。しかしワクチンで防ぐことのできる水痘・オタフク風邪についてはワクチンを接種しておくことが大事なことだと考えています。入園した今の時期にワクチンを接種しておいてください。
今年から医療機関ではおおよそ5分間は再診でも時間をとって患者さんへのお話をしましょうということになっています(医療機関での無診察処方が問題となってきます)。少し混雑するかもしれませんがその点を御理解していただければ幸いです。
- 小児科医の話題16 08.04.01
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麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)2期3期4期のお知らせ
本年度から5年間で麻疹の流行を防ぐために年長さん・中学1年生・高校3年生の4月よりMRワクチンを1年以内に接種することになりました。山辺町と寒河江市の中学1年生は学校で集団接種を行ないますが、高校3年生と年長さんは個別接種となります。詳細は個別通知が配布されていると思いますので必ずお読みください。これを逃すとすべて個人接種となり、個人で接種すると医療機関で異なりますが8000~10000円位かかると思います。高校を卒業しても専門学校や大学の入学時にワクチン接種を行なっていない場合当然ワクチン接種あるいは抗体価測定を行なうように勧告されると考えてください。その為接種を行なったという記録も大事に保存する必要があります。必ず母子手帳に記載していただきましょう。もし紛失した場合接種証明書を渡しますので大事に保存してください。
接種時期ですが毎年のように関東地方での流行がみられます(今年も神奈川県内で大きな流行)ので、GW前に接種を行なうようにしてください。学生が帰省するときに山形県内に持ち込む可能性と家族旅行で(ディズニーランドなど)感染する可能性があるためです。成人30歳前後の方も未接種の場合接種しておくほうがよいでしょう。
誤飲について。先日農薬を吸い込んで頭痛を訴えたお子さんがいました。春になると農作業の準備などで小屋に入ってしまうお子さんもおられます。農薬の管理には充分気をつけてください。
小児科学会からの傷害注意速報
1)ミルトンによる喉頭狭窄 9ヶ月 男児
哺乳瓶とミルトンを流しに置いておいた。女児が哺乳瓶で遊んでいて男児にミルトンのサンプルを口腔内に入れた。口腔内洗浄を行なったが後日呼吸困難を起こし咽頭下部・喉頭部の狭窄を起こして手術となった。
コメント
イ)口に入るサイズの物は上の子が乳児の口に入れることはよくある
ロ)認知症の人がタブレットをドロップと間違えて飲み込むこともありうる
ハ)粘膜障害を起こした物質が何であるのか同定する必要がある。物質を除くか濃度を下げる必要がある。
二)幼児が開けにくいパッケージする必要がある。
2)犬による咬傷(右精巣粉砕) 4ヶ月 男児
昼寝をさせていて保護者が離れた隙に犬に外陰部をかまれた。顔面蒼白外陰部からの出血。緊急に手術(精巣摘出術)。
コメント
イ)動物が食べている時や争っている時に手を出すと咬まれることが多い。
ロ)動物が嫌がることをして咬まれる子が多い。
ハ)この子の場合オムツの尿の臭いに反応した可能性が強い。
二)室内犬を飼っている家庭が増加しており乳児と動物が同じ平面で接触状況は避ける必要がある。
3)短時間に腐食が進行したリチウムボタン電池(山口県地方会) 2歳女児
遊んでいて何かを飲み込んだ。胸部レ線で円形異物を確認し、全身麻酔かで内視鏡的に除去した。数時間しか経っていないが食道は全周にわたって腐食し電池と強く癒着していた。嚥下障害を来たし1ヶ月以上の入院が必要だった。
4)複数個の磁石誤飲による消化管穿孔(栃木県地方会) 5歳女児
4個の磁石を飲み込み7病日に精査。磁石同士がくっつき、消化管穿孔を起こしていた。挟まれた消化管は壊死・穿孔していた。複数個の磁石は高率に消化管穿孔やイレウスを起こしやすい異物である。
- 小児科医の話題15 08.03.13
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母乳育児と母乳育児相談室設置について
先日からある小児科医のメールで母乳育児について話題提供がありました。母親の大部分が母乳育児を行ないたいができていない現実について、ある小児科医はすぐに体重増加率が悪いとすぐ調整乳を足すように指示することが原因であると述べ、ある小児科医は何故母乳育児が困難であるのかその原因を考えてみようと意見であった。母乳論者は母乳・母乳と連呼するが母親にとって心理的負担が多いのであればそれも考慮に入れて調整乳を与えてみることも必要である。ただ闇雲に調整乳を足してやればよいと言う考えに同調できない意見が多いようであった。
調整乳を作る時の温度は何度が良いのか?
昨年厚生省より通達があり70度以上のお湯で調整乳を作り体温くらいまで冷まして使用することになっている。理由はWHOの報告によれば調整乳の粉は無菌ではない。エンテロバクターサカザキという菌による髄膜炎の報告があり調整乳の作り方を通達として出した経緯がある。今年の通達では調整乳の細菌汚染については記載されない方向であるという。調整乳の安全はメーカーが保障しているが、現実的には森永ヒ素ミルク事件(絵本の「長谷川君きらいや」など)、雪印の好酸菌混入ミルクなどメーカーでも予測できないことが起こっていました。一応メーカーがしっかりしていれば問題なく安全なものとして考えてよいのでしょう。但し国内では販売されていないがある国のミルクについては問題があるかもしれない。
調整乳でも加水分解ミルクなど大きな利点を持つミルクが市販されるようになり食事アレルギーのお子さんには朗報であることに変わりはない。子どもによって必要な子とそうではない子がいることは事実です。母乳・母乳と母親を責めることはせずにできれば母乳育児を楽しめる環境をどのようにして作っていくかが問われているのである。母乳のよさは誰でもわかっているのであるが、できない時にどうしてあげるのかを考える必要があるのでしょう。
山辺町での母乳育児相談室設置について
最近山形市内に助産婦さんが開業し、母乳育児を進めているところがあると言う。また各病院では助産師が「おっぱい外来」など積極的に行なっています。少しでも母乳育児を行ないたい母親のために相談窓口が開かれていることをお母さん方に知っていただきたいと思います。山辺町では今年度から毎月1回第1水曜日に行なわれる3~4ヶ月健診時に山形県母乳の会のスタッフである助産師による母乳相談室が設けられます。相談したいお母さん方の来場を待っています(町の健診では託児スタッフもいます)。山辺町外のお母さん方も利用できるようにお願いしておりますので心配せずに来てください。できれば山辺こどもクリニック(電話023-664-8488)にご一報ください。
- 小児科医の話題14 08.02.25
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フジテレビ ニュース に木村太郎氏の発言に物申す
前回麻疹・風疹ワクチンを受けるようお願いいたしました。しかしFNN(フジテレビニュース)サクランボテレビSAYで木村太郎さんが「実際の流行で死亡する患者さんよりワクチンでの死亡者が多い」という発言をしたために現在小児科医が彼に対する謝罪を求め抗議行動を起こしております。おそらく謝罪もせずにホッカムリなんでしょう。この影響で麻疹ワクチンを受けたくないというご家族も現れ始めました。
麻疹の輸出国として日本が責められているからワクチンを受けるべきであるという彼の意見は全く意味を持ちません。麻疹ワクチンを受けないために現在も中学生〜大学生が罹患してひどい思いをしている現実や学校が休校となってしまっている現実を彼はどのように考えているのでしょうか?小さいお子さんがワクチンを行なっているために小さな子ども達の流行は起きてはいません。したがって現在では子どもが麻疹で死亡するということは非常にまれなことになっているのです。
麻疹を軽く見てはいけません。公共広告機構・ユニセフで何故ワクチンの広告をしているのでしょうか?昔から麻疹は「命定め」としての役割をしてきました。麻疹で死んでしまうのは子どもが弱かったから死んだのであるというあきらめの境地を作り出していたのです。何度も書きますが麻疹肺炎ばかりでなく脳症・遅発性脳炎(SSPE)と呼ばれる脳疾患を引き起こしてきます。本当に悲惨な感染症であることを理解してください。
木村太郎氏は公的な放送網で大々的に発言をしているのですから彼の意見は当然重いものです。放送網ばかりではなく新聞網も利用して彼あるいはフジテレビは謝罪すべきです。
麻疹ワクチンは必ず受けましょう!
- 小児科医の話題13 08.02.13
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麻痺の再流行
昨年暮れより麻疹の流行が10・20代の方に起きています。現在神奈川県・秋田県・札幌市で数多くの患者さんの報告があります。昨年春にも起きたばかりなのですが何故このように再流行するのでしょうか。その原因は麻疹ワクチンの未接種者が多い以外に、麻疹の流行がほとんど起きなくなったために抵抗力が弱まってきていることがあります。しかしアレだけ騒がれても全くワクチンを接種しようとしない人々に問題があるのでしょう。平成20年度から高校3年生の年齢(現在の2年生)と中学1年生の年齢(現在の小学6年生)で麻疹風疹混合ワクチンの接種が定期接種となり全員が無料で接種できるようになります。お子さんの言いなりにならないで必ず接種していただきたいと考えています。もし接種しない場合には専門学校や大学での実習に支障をきたすことも出てくることは当然です。実習先で麻疹を発症するリスクのある人の場合、当然実習を認めないことは昨年度の様子から明らかです。事実私が園医・校医をしている施設ではすべて確認してきました。また幼稚園でも若い先生方の抗体価を測定し感染リスクが少ないことを確認しています。そのようにしてまで子ども達を麻疹から守りたいのです。
麻疹に罹患した場合麻疹そのものによる肺炎や脳炎など重症化して亡くなられる場合もあります。また数年経ってから進行性の脳障害を起こすこともあります。さらに現在忘れ去られている結核ですが、最近集団発生したという地域も山形県内では報告されています。麻疹では免疫が低下するために結核にかかりやすくなるといわれており注意が必要です。私自身麻疹後に治らない肺炎のお子さんが結核だったということも経験しています。
うつさない努力とうつされない努力 麻疹ではこの努力が必要なのです。
インフルエンザの流行について
山辺町内のインフルエンザAソ連型の流行はほぼ終わりに近づいています。新潟県内ではインフルエンザB型の報告、仙台市内ではインフルエンザA香港型の報告もみられまだ安心できる状況ではありません。今年もダラダラとインフルエンザの流行が長引くかもしれません。
その他仙台で多く分離されているライノウイルスと思われる方が多いようです。一般にライノウイルス感染症は秋と春に多くみられます。発熱はそれほどでもなく倦怠感が強く、鼻汁がたくさん出てすぐ詰まってしまい副鼻腔炎を起こすのがライノウイルスの特徴です。予防にはやはりマスクと部屋の湿度の確保そして入浴時に換気扇をかけずゆっくり入浴し、風呂から上がったときに鼻をかんでください。
- 小児科医の話題12 08.01.31
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東京マラソン
2月17日東京都庁を出発点にして9時10分スタート。7時間にわたって走る東京マラソンが開催されます。フルマラソンと10kmの二つのコースが準備され約12000人がエントリーしています。出場するには抽選で選ばれなければなりません。これが第1の難関です。
この東京マラソンに現在わかっているだけで小児科医が10kmコースに2名、フルマラソンに2名参加します。その応援に全国から(北海道中標津から沖縄北谷村まで)の小児科医が集まります。
これらの小児科医の中には「子どもとの約束を守るために」走る者もいます。彼は家族を大事にし、夏には大山登山を行なったりしていました。しかし昨年秋御次男をご病気で失ってしまいました。この前後に私は彼と他3名の小児科医と共に北海道に行き、ある小学校で講演を行なっています。彼の講演は「大人だから夢を持とう。そしてそれをかなえよう」という内容でした。おそらくこの時に御次男と東京マラソンを走る約束をしていたのでしょう。しかしそれがかなわず。御次男は天から父親の努力と約束を守る姿を見てくれるのでしょう。
私たちは現在彼に内緒で応援に出かけることを計画しています。16日夜東京の浅草にある柴田小児科医院に集まり、応援する場所とグループ分けを行い、路上での応援を行なう。最後のゴールでは麻疹撲滅を願った「ワクチンで麻疹を・・・・」という旗を持った崎山先生のグループと合流して走ってきた小児科医スタッフを讃える。こんなことを考えています。
ヒトとの出会いは人間を変えてしまう。彼らは私よりやや若い世代です。しかし彼らと出会うことで大きなものを得ました。「自分の気持ちを相手に伝えることの大切さ」と「相手の話を聴こうとする努力と共感」これらは彼らにいただいた大きなプレゼントです。これからも彼らを大事にしていきたいと思います。
東京マラソンの応援ために皆さんに御迷惑をおかけしますが、我が友の「子どもとの約束」を果たすところを一目みるためにお許しください。
- 小児科医の話題11 08.01.15
- インフルエンザが流行してきました。インフルエンザと抗インフルエンザ薬の問題についてマスコミ等で報道されていますが、基本的に10歳以上20歳未満には抗インフルエンザ薬は処方できないようです。48時間は抗インフルエンザ薬を投与する・しないにかかわらずご家族が面倒みてくださるようお願いいたします。
外来でインフルエンザと診断された場合抗インフルエンザ薬の投与基準・神経症状の発現率・インフルエンザ型ごとの有効率とその差が出てくる原因について説明した後で服薬させるかどうかについてご検討ください。
インフルエンザの合併症
中枢神経合併症
脳症;発症早期の急速な意識障害・けいれんを中心とした症状
Reye症候群;回復期に嘔吐などの消化器症状・意識障害を起こすもの。
筋炎;B型に多く見られる。まれにミオグロビン尿症などで腎機能障害をおこしうる
潜伏期 2日
症状;咳→発熱→鼻汁のパターンが多い。しかしアレルギー性鼻炎があると咳と鼻汁が同時に出ることが多い。
診断;イムノクロマト法を利用した迅速診断。
基準は鼻咽腔吸引物を利用する。12時間後では90%が診断可能だといわれています。しかし鼻をかんだ後の鼻汁・咽頭拭い液では感度が当然落ちてきます。当医院では基準を守って診断をしています(誤診を防ぐため)。
治療;基本的には投与しやすいタミフルの投与。妊娠の可能性の高い年齢ではそのまま経過をみることもあるいは吸入薬であるリレンザ(体内移行率が少ない)を使用します。妊娠境界期でタミフルを飲まれた方がおりますが、全く健康なお子さんとして育っております。市販約は使用しないでください。解熱剤が入っていますので体温が上昇せずインフルエンザを見逃す危険性があります。医療機関を受診するようにしたほうがよいと思います。
感染源となる期間;タミフルなどの抗インフルエンザ薬を飲まれた方でも5日は感染源となりうるという報告があります。せめて1週間はマスク着用お願いいたします。
予防;ウイルスの進入門戸は鼻・口・眼です。従ってマスクは鼻と口すべてを覆う立体型マスク(花粉症用)を使用してください。医療機関・ショッピングセンター・列車・バスなど人ごみにはできるだけマスクをしましょう。
インフルエンザウイルスは界面活性剤で失活します。手洗いは石鹸で洗うようにします。
部屋の乾燥はウイルスが飛散しやすくなります。湿度を保ちましょう。またうがいはイソジンなどを用いずとも水道水でかまいません。
流行を知るには
通園施設でインフルエンザが発生した時には広報活動を行なうと思います。急激に通園施設や学校で発熱して帰宅する子が多くなります。またクラスで3名以上発熱と咳など同じ症状で欠席した場合にはインフルエンザなどの感染性疾患が流行していると考えてください。
インフルエンザは現在Aソ連型が多く分離されています。毎年流行していたA香港型と比較して症状が軽いため無理をしないようご注意ください。また全国的にはA香港型が分離されたりB山形系やBビクトリア系が分離されたりしてもいますので今後どのような流行をしめすのか油断できません。毎年連休明けくらいまでインフルエンザがみられますのでその点をご理解ください。
インフルエンザと鑑別が必要な疾患は10・11月に流行したRSV感染症、11・12月に流行したhMPV感染症。また肺炎マイコプラズマがあります。これらについては絶えず迅速診断(RSV)や分離(hMPV)を通して流行地域の確認と症状パターンから鑑別することになります。
- 小児科医の話題10 08.01.07
- あけましておめでとうございます。年明け早々雪が舞い天気としても大変でしたが、山形市の休日診療所も数多くの患者さんで大変でした。それでも31日より少ないということでした。
休日診療所のノートから
年末年始の小児救急診療を午前中二人診療体制で行なっても患者さんの出足が悪く効率が悪い(患者さんの来院数は10時半以降と4時以降に多い)。一人体制か午後二人体制にしたほうが良いのではないか?
患者さんの必要な時間に診療を行なうことは大事だが、このままでは診療時間が遅くなるだけである。これが常態化すればサポート診療施設である基幹病院や休日に働いてくださるスタッフが迷惑するばかりである。この点も患者さんにご理解いただく必要がある。休日診療所を長く継続するためには医療スタッフの努力ではなんともしがたい状況になっていることをご理解いただくしかないのでしょう。
さてこの年末年始の休日診療所の診療は午前中2名午後1名の診療体制でしたが、31日は急遽午後も2名体制で行なわれました。1月1日の急患は午前中それほどではなかったのですが、やはり駆け込み診療が多く結局5時以降も診療となっています。2日は午後2時に訪れた患者さんが約3時間待ちだったようです。この日は山形市の広報に県立中央病院・河北病院で午前中診療を行なうという情報が流れていたのですが、そのことに気付かないご家族が多かったのかもしれません。当然当医院ではその情報を公開しておりましたので年末に受診していた方はご存知だったと思います。子育てを行なっているご家族はそのような情報を把握しておくべきだろうと思います。またかかりつけ医そのものがキチンとした情報を公開しておくべきなのでしょう。これらについては今後の課題として医師会あるいは山形市小児科医の集まりで議論していくことになりそうです。とりあえずは個人が年末年始の救急体制情報を確認しておくか?あるいは子育て情報基地の広報で診療体制を取り上げていくべきだと思います。
これらのことは県内の多くの小児科医は知っております。したがってカゼ?と感じた場合には小児科でカゼの交通整理をすべきだと考えています。お子さんがカゼをひかれたらまず小児科を受診しましょう。
小児科医の話題1〜9
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- 小児科医の話題9 07.10.12
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季節の変わり目になってカゼが増えてきました
9月22日より鼻汁と咳の患者さんが増加しました。毎年恒例なのですが小児科医の間ではカゼが季節が変わって急に増加したと言われました。実際そうでしょうか?カゼの一般的定義は咳・鼻汁・発熱を主症状とする疾患群とされています。その点から言えば現在流行しているカゼは発熱がないだけでその通りです。したがってカゼと判断してもかまわないわけですが、カゼの主な原因はウイルスによるものであると考えている小児科医が一番多いはずです。山形県衛生研究所(全国でも有数のウイルス分離を誇っています)のウイルス分離結果を見ても呼吸器系感染と思われるウイルスではパラインフルエンザウイルスが多く分離されている程度です。この原因は呼吸器感染原因として多いとされているライノウイルスが分離できにくいウイルスだからですが、それだけで説明はできません。
山形ではこの時期にアレルギー性鼻炎が非常に多くの子ども達に鼻汁と咳を起こしている現実があります(日本小児科医会会報第27号「低年齢児の鼻汁好酸球検査」板垣 勉)。したがって9月下旬から10月上旬までは小児科医は耳以外に鼻腔内の観察が必要なのです。
アレルギー性鼻炎を簡単に推測する方法は鼻汁に白血球のひとつである好酸球が増加しているかを検査することです。平成19年9月22日から10月9日までの当医院の鼻汁好酸球検査の陽性率は53/68(77.9%)と高率でした。陰性のほとんどは0歳児です。その理由はこの時期の原因(抗原)に感作されていないのでアレルギーを起こす抗体を持っていないからだと考えられます。
山形のアレルギー性鼻炎の多くは季節によって変化することが多く、当医院のデータからはスギ花粉症の時期・7月中旬のクーラーの使用始め・そしてこの時期に多いことがわかっています。様々な原因によって起きていると推察されますが、現在山形県衛生研究所の高橋・鈴木らはスギ花粉の他の原因を調査中です。
これらのことは県内の多くの小児科医は知っております。したがってカゼ?と感じた場合には小児科でカゼの交通整理をすべきだと考えています。お子さんがカゼをひかれたらまず小児科を受診しましょう。
- 小児科医の話題8 07.10.1
- 先日山形県内の小児科医が集まって、小児救急医療啓発事業についてと予防接種の広域化が行なわれてどのように変化したかの報告がなされました。その概要について書いてみます。
小児救急医療啓発事業について
お母さん方の手に「お子さんの急病対応ガイドブック」なるものが配布されていると思います。そのテキストを用いて急病時お母さん方にどのように対処していただくかの説明する会を、各自治体で子育て支援の一環として行なわれることになりました。山辺町でも計画されているようですが・・・・。小児科医の集まりではこのテキストは使えないという意見が多く寄せられました。実際の記載の問題点については院内のこのテキストに書き込んでありますのでお読みください。
予防接種の広域化と接種率の変化
定期予防接種をかかりつけ医で行ないたいという意向から、県内35市町村のうち18年度は24市町村、19年度は30市町村が参加して行われました(最上地域の町村だけが参加せず)。接種自治体の料金設定で行なうために差額が出ることが原因で広域化が進まない実態が明らかになりました。また接種率はそれほど低下せず、例年と同じような結果になっています。ただ自治体間の差は大きく住民の意識の差あるいは母子手帳でのチェックが医療機関で行なわれているかどうかで差が出ている印象を持ちました。
ちなみにMRワクチンT期はほぼ95%以上を保ちましたが、U期では東根市・西川町で60%台と低く、山辺町では97.1%と高い結果でした。これは小学校入学時健診での予防接種の確認と指導が徹底していないためだと考えられます。とにかく小学校に入学する前に必ず定期接種について確認しましょう。
二種混合ワクチン(DT)は全体的に低く、山辺町で73.8%でした。野外活動や部活などでまだ汚い土壌で怪我をすることもありできるだけ接種しましょう。
定期外のオタフク風邪や水痘ワクチンについて知らない方が多いという全国調査もあります。小学校入学前には未罹患者は接種しておくべきでしょう。
その他#8000についての報告がありました。夜間救急や休日救急は心配するなら早めに受診してください。特に腹痛と嘔吐はなかなか自宅で考えていても落ち着きません。
- 小児科医の話題7 07.10.1
- 食事を抜く・嘔吐などを自ら行なう等を行なう率が女性では読まなかった人に比べ数倍高かった。しかし男性では差がなかった。
このような論文が出てきました。このような雑誌は家庭でもよく見かけますし、ご家族で行なっている方もおられるかもしれません。最近メタボリック症候群は成人病予備軍であるとして医師会・自治体などでもその予防目的で啓発運動を行なっています。確かにその通りです。適切な食事と運動は非常に大事なことです。しかしこの論文は思春期に大きな問題(拒食)が起こりうることをも提示しています。子どもの目に触れないようなところに雑誌を置くことも必要かもしれません。
自分に自信が持てないお子さんでは、手軽に行なえるためそのような行動をとりやすい事もしっておいてください。バランスのよい食事を家族で楽しく食べたいものです。
子どもの肥満はほとんどが過剰なカロリー摂取によるものです。特におやつでパン・ラーメン・おにぎり等を食べる。夕食を待てずに夕食前に少し食べてから夕食をとる。家族が遅く帰ってきた時にその人のおかずを再度つまむ。一般に頻回に摂食する行動パターンが多いようです。肥満度が40%以上になると子どもでも脂肪肝を起こしていることが多いものです。
先日肥満ということで外来を受診なさったお子さんがおられましたが、肥満度は昨年も40%今年も40%でした。前年小児科医を受診して脂肪肝の診断を受けて今年もその診断を受けなければならない子どもの気持ちはどうでしょうか?肥満なのだからしょうがないと思われる方も多いと思いますが、この場合「お母さんも子どもさんもよく頑張ってこの程度に抑えてくれたね!」というべきだと判断して、ほめてあげることにしました。この方が子どもやお母さんがよく話を聞いてくださることが多いのです。
実際この子の場合小学1年生の時に通っていた学童保育で、おやつに焼きそばやラーメンが出ていたようですし、この頃から肥満をきたしたようです。何処に原因があるか確かめて指導しなければならないのが肥満指導です。小学生では身長がよく伸びる時期が必ず来るのでその時に向かって体重が増えないような努力をすることが大事です。子どもにダイエットを求めるのではなく体重が増加しないようにするのがコツだと思っています。その為には子どもの食生活(食事の回数など)に眼を向けていただければよいと思っています。
- 小児科医の話題6 07.09.11
- ダイエットを扱った雑誌を思春期に多く読んだ人は5年後にどんな行動をとったか?
食事を抜く・嘔吐などを自ら行なう等を行なう率が女性では読まなかった人に比べ数倍高かった。しかし男性では差がなかった。
このような論文が出てきました。このような雑誌は家庭でもよく見かけますし、ご家族で行なっている方もおられるかもしれません。最近メタボリック症候群は成人病予備軍であるとして医師会・自治体などでもその予防目的で啓発運動を行なっています。確かにその通りです。適切な食事と運動は非常に大事なことです。しかしこの論文は思春期に大きな問題(拒食)が起こりうることをも提示しています。子どもの目に触れないようなところに雑誌を置くことも必要かもしれません。
自分に自信が持てないお子さんでは、手軽に行なえるためそのような行動をとりやすい事もしっておいてください。バランスのよい食事を家族で楽しく食べたいものです。
子どもの肥満はほとんどが過剰なカロリー摂取によるものです。特におやつでパン・ラーメン・おにぎり等を食べる。夕食を待てずに夕食前に少し食べてから夕食をとる。家族が遅く帰ってきた時にその人のおかずを再度つまむ。一般に頻回に摂食する行動パターンが多いようです。肥満度が40%以上になると子どもでも脂肪肝を起こしていることが多いものです。
先日肥満ということで外来を受診なさったお子さんがおられましたが、肥満度は昨年も40%今年も40%でした。前年小児科医を受診して脂肪肝の診断を受けて今年もその診断を受けなければならない子どもの気持ちはどうでしょうか?肥満なのだからしょうがないと思われる方も多いと思いますが、この場合「お母さんも子どもさんもよく頑張ってこの程度に抑えてくれたね!」というべきだと判断して、ほめてあげることにしました。この方が子どもやお母さんがよく話を聞いてくださることが多いのです。
実際この子の場合小学1年生の時に通っていた学童保育で、おやつに焼きそばやラーメンが出ていたようですし、この頃から肥満をきたしたようです。何処に原因があるか確かめて指導しなければならないのが肥満指導です。小学生では身長がよく伸びる時期が必ず来るのでその時に向かって体重が増えないような努力をすることが大事です。子どもにダイエットを求めるのではなく体重が増加しないようにするのがコツだと思っています。その為には子どもの食生活(食事の回数など)に眼を向けていただければよいと思っています。
- 小児科医の話題5 07.08.17
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予防接種の資格?
予防接種は各自治体が責任を持って施行することになっています。しかし現実には各医師会あるいは個人と契約しているのが現状です。接種医の知識・技術向上はどのようになされているのか?各自治体が接種医を集め講習を行なうのが当然ですが、医師会に丸投げ状態のところも出てきます。各医師会では最近の話題・厚生省通達の変更・接種の実際など各予防接種メーカーの研究者・ワクチンを主として研究している医師を招いての講演会を実施しています。したがってキチンと講習を受けていれば接種医として技術や知識を持ち続けることができるシステムになっています。
ある東京の小児科医がBCGの接種部位・接種痕、接種予定の組み立てなどから最低限の知識を持たずに接種を行なっているのではないか?その為予防接種といえども講習会を行い予防接種認定医をという提案をしていました。しかし医師の間では必要がないという意見も多く出されました。実際講習会を行なっても出席するのはほぼ毎回同じ医師が多く、聞いてほしい医師はあまり出席しないのが現状だとも議論されていました。
山辺町ではかなり以前よりキチンと予防接種の講習会を定期的に行なってきました。この講習会は医師ばかりでなく保健師や医療施設のスタッフの知識向上にも役立っているのです。実際私がこの地域で仕事を始めたときにはすべて集団接種の時代でしたが、定期接種の一部は個別接種に変更され接種医がキチンと予定を立てて接種を行なうことができるようになりました。さらに保健師がBCG・ポリオを優先接種する状態から三種混合をまず1回受けてからBCGに接種するシステムもほぼできました。この山辺町では集団接種でも接種医のサインを母子手帳に書き込む→接種に責任を持たせるシステムもできました。小児科医が考える方法を取り上げてくれたのはこの地域だけかもしれません。
これは山辺町独自の講習会とその場での議論(ワクチンが必要な疾患の疫学などの理解)からなしえたことです。他の市町村では集団接種の場合接種医が自治体の長の印鑑であったり、ポリオを接種するために三種混合が定期接種できなくなったりということがあるようですが山辺町ではなくなりました。
このように講習会は医師にとっても保健師・医療スタッフにとっても非常に有効な勉学の場です。お子さんたちの安全を守るために山辺町では頑張っています。
- 小児科医の最近の話題4
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日本脳炎ワクチンとワクチン不足について
日本脳炎ワクチンは3歳になったら接種できることになっています。しかし厚生省通達によって積極的勧奨を行なわない。もし接種希望者がいる場合自治体で接種希望の書類にサインして接種するようになっています。日本脳炎は中国や東南アジアに多く発生します。、日本では昨年茨城県に住んでいる成人が罹患したと報告されています。一般に夏場の脳炎や脳症の原因として鑑別診断に挙げられますが、広島県の研究では無菌性髄膜炎の原因にもなっているという報告もあります。山形県では本年度より豚の日本脳炎抗体価と子ども達の抗体価を測定していくことにしました。日本脳炎リスクがどの程度あるのかを知っておくことは県民を守るために必要だからです。実家が西日本以南・中国・東南アジアの方は積極的に接種すべきだと考えています。
ところでこの日本脳炎ワクチンは充分に供給されているかといえばそうではありません。西日本で接種したくとも接種できない状況になっています。大阪府では接種希望者に接種できない場合住民から不作為の行為にあたると言われかねないとして厚生省に充分なワクチン供給を求める要望書を提出しました。
考えてみれば来年は北京オリンピックが開催され、数年後上海万博が開かれます。その時に本当に大丈夫なのでしょうか?温暖化によって徐々に日本脳炎罹患リスクが高まるなか、子ども達にとってワクチンを接種しないほうがよいのか接種したほうがよいのか。それは明らかだと思います。積極的勧奨をしない=接種中止ではない。もしワクチンがなくて接種ができない場合、ワクチン接種するような経過措置をとるべきだという意見が多くみられます。
それに対して厚生省は蚊に刺されない対策を採ってくださいとのこと。なんとなく竹やり訓練を思い出すのは私だけでしょうか?
- 麻疹の流行
- 麻疹ワクチンを接種していても大きな流行がなくなった現在中学生以上の麻疹罹患が多く報告されています。2006年度から麻疹。風疹混合ワクチン(MRワクチン)が1歳児と年長さんの2回接種になりました。必ずお子さんのワクチンは接種しましょう。沖縄では1998年以降本土から持ち込まれた麻疹に罹患して現在まで8名のお子さんが亡くなられました。その他脳炎・脳症・数年後のSSPEと呼ばれる脳障害で困られているご家族がおられます。是非麻疹ワクチンは接種しておきましょう。
- 手足口病になったら
- 手足口病はエンテロウイルスによって起こる病気です。数種類のウイルスが起こしますので小さい時に何度か罹患します。
ある保育所の保育師からキチンと「軟膏」をもらってきなさいといわれた母親がおられました。軟膏は何のために処方されたのでしょうか?リンデロンVG軟膏を発疹に塗布しても何ら治癒に関係しません。また口腔内のアフタに塗布する軟膏をどのようにして奥の水泡や痛いアフタに塗れるのでしょうか?逆に子どもは痛がったり口をあけなかったりして塗れないことのほうが多いのです。むしろ食事内容に注意することや疼痛対策を行なうのが常識的だと思います。
また登園停止期間は医師によってさまざまだといわれますが、基本的に発熱がなく痛みがなくて普通に生活できれば登園してよいことになっています。便中に約1ヶ月近く原因ウイルスが排泄されています。これらを知っておいてください。